今年の箱根駅伝の復路は、悲願の3冠を目指した駒澤大がトップを独走。2位の中央大も単独走になり、最終的に3~8位でゴールすることになる6校がひとつのパッケージになった。そして、東京国際大、城西大、東洋大、明治大の4校が10位前後でレースを繰…
今年の箱根駅伝の復路は、悲願の3冠を目指した駒澤大がトップを独走。2位の中央大も単独走になり、最終的に3~8位でゴールすることになる6校がひとつのパッケージになった。そして、東京国際大、城西大、東洋大、明治大の4校が10位前後でレースを繰り広げた。
白熱のシード権争いは、最終10区で並走した城西大と東洋大が9位と10位でフィニッシュ。一方、前回5位の東京国際大は11位で4年連続のシード権に届かず、区間賞を2つ獲得した明大も12位に終わった。
最終10区、ゴール直前でデッドヒートになった東洋大の清野太雅(左)と城西大の山中秀真
4校によるシード権争いはどこで明暗が分かれたのだろうか。
まずは「明」から。2年ぶりの出場で5年ぶりにシード権を獲得した城西大は、往路を9位で折り返したのが大きかった。櫛部静二駅伝監督は、「4区が終わった時点で悪くて12位。5区で逆転して8位。復路は粘って順位をキープしたい」と話していたが、ほぼイメージどおりのレースになったのだ。
昨年11月の激坂最速王決定戦(登りの部)を制して注目を浴びた斎藤将也(1年)が2区を担って区間15位、初駅伝となるヴィクター・キムタイ(1年)は3区で区間11位とつまずいたが、4区終了時で13位につけた。そして5区・山本唯翔(3年)が期待どおりの快走で区間新記録を樹立。往路9位でゴールに飛び込み、最後まで順位を争うことになる11位の東洋大に1分34秒の差をつけた。
城西大は復路も10位と確実な継走を披露。8区・桜井優我(1年)が格上の明大・加藤大誠(4年)に並ばれたあと、終盤まで食らいつき、10位でタスキをつなげたのもポイントだった。山で勢いをつけてから一度もシード圏外に弾き出されることなく、最後は10区・山中秀真(3年)が東洋大とのスパート合戦を制し、大手町のゴールまで走りきった。
【選手層の厚さで苦境を乗り越えた東洋大】
10位でシード権を確保した東洋大は、レース前から厳しい戦いが予想されていた。エース松山和希(3年)に続いて、出場予定だった九嶋恵舜(3年)と熊崎貴哉(3年)が戦線離脱したからだ。
2区終了時で19位と大きく出遅れたが、主将・前田義弘(4年)が5区で奮起する。目標タイムを9秒上回る1時間11分21秒(区間5位)と激走して、チームを14位から11位に押し上げた。
さらに8区・木本大地(4年)も区間賞の快走。7区終了時点でシード圏内まで1分45秒あった差を33秒まで詰めると、9区・梅崎蓮(2年)が東京国際大と城西大をかわして9位に浮上。最後は3年連続のアンカーとなった清野太雅(4年)が18年連続シードを死守した。
酒井俊幸監督は「苦しい2日間でした。12月に入り、コロナとインフルエンザ。さらに疲労骨折者も出たんです。練習が抜けている選手を起用せざるを得ず、チグハグしたオーダーになってしまいました」と振り返った。チームは危うい状態だったが、昨年5月の関東インカレで10000mとハーフマラソンでトリプル入賞を果たした選手たちが、層の厚さを見せてカバーした形になった。
次は「暗」。東京国際大は今季、故障者が多発して苦しい戦いが続いていた。出雲駅伝は前年Vメンバー4人を欠いて8位。全日本大学駅伝も、イェゴン・ヴィンセントと山谷昌也(ともに4年)の欠場が響いて11位に終わった。
箱根では主力が復帰し、山谷が2年連続の1区(区間10位)を務めると、ヴィンセントは4区で区間新記録を樹立。しかし、うまく流れをつかむことができなかった。往路優勝を目論んでいたチームは往路を7位で折り返す。復路は6区・吉住颯(2年)で9位、7区・山岸柊斗(2年)で11位に転落。前回9区で区間9位だった主将・宗像聖(4年)も8区で区間19位に沈み、シード権に1分32秒届かなった。
【明治大は前年に続いて「デコボコ」のレースに】
「故障者を出すのが怖かったのと、疲労感があるということで詰めきれなかったのは反省としてありますね」と大志田秀次監督。出雲と全日本でメンバーが揃わなかったため、選手たちのギアを上げきれなかったようだ。
日本人エースの丹所健(4年)は2区で区間11位、ヴィンセントも、絶好時と比べると爆発力が足りなかった。また、前回の6区と7区を好走した林優策(3年)と冨永昌輝(2年)を欠いたのも痛かった。
予選会を2位で通過した明大は、前回大会に続いて"デコボコ"のレースになった。1区富田峻平(4年)が区間賞と絶好のスタートを切るも、2区・小澤大輝(4年)は区間14位で13位に転落。「確実に区間10位以内でつないでいきたい」と考えていた山本佑樹監督の思惑は序盤で崩れた。
往路を12位で終え、復路は7区・杉彩文海(3年)の区間賞もあり、8区終了時で9位につけた。しかし、9区・下條乃將(4年)が区間17位、10区・漆畑瑠人(4年)が区間18位。区間の半数がふた桁順位となっては、シード権獲得は難しくなる。
明大の敗因は2区候補の児玉真輝(3年)と、10000mでチーム最速の28分19秒77を持つ櫛田佳希(4年)を故障で欠いたことにあるだろう。特に児玉は、地元を走る2区で「1時間7分切り」という目標を立てていた。4区を希望していた小澤(前回4区7位)が2区に入るなど、当初想定していた区間配置が大きくズレ込んだことになる。
山本監督は「最後の調整のところで2人欠場となってしまった。トータル的なマネジメントがちょっと足りなかった」と語った。上位を狙える戦力がありながら、チームのポテンシャルを引き出すことができなかった。
シード権争いも優勝争いと同じで、快走よりもミスを最小限に抑えたほうが有利になる。チームトップ10の実力よりも、選手層の厚さと、指揮官の"調整力"が大きいと言えるかもしれない。