WBO王者、井岡一翔(志成)とWBA王者、ジョシュア・フランコ(アメリカ)による世界スーパーフライ級王座統一戦が12月31日、大田区総合体育館で行われた。試合は接戦の末に引き分けとなり、それぞれがタイトルを防衛した。◆井岡一翔、辛くも判定ド…

WBO王者、井岡一翔(志成)とWBA王者、ジョシュア・フランコ(アメリカ)による世界スーパーフライ級王座統一戦が12月31日、大田区総合体育館で行われた。試合は接戦の末に引き分けとなり、それぞれがタイトルを防衛した。

◆井岡一翔、辛くも判定ドローで王者防衛 「悔しさを生かしまい進する」

井岡にとっては待望し続けた統一戦だった。昨年の2021年の大晦日には、IBF王者のジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との試合が決まりながら、コロナの影響でキャンセル。モチベーションが上がらない試合が続いてきた。今回、フランコに勝てば、2012年に八重樫東(大橋)に判定勝ちしてWBA、WBC世界ミニマム級統一に続く、複数階級での王座統一という日本人初の偉業達成という記録もかかっていた。髪を角刈りにしてリングに上がった表情には、静かな決意が滲んでいた。

■井岡のカウンターをものともせず、フランコが前進

フランコは、ジェイソン・マロニー(オーストラリア)とのタフな3連戦を2勝1無効試合で乗り切って日本にやってきた。強烈なKOパンチはないが、手数の多いスタミナ型の選手だ。

試合開始のゴングが鳴ると、両者、ジャブの突き合いで間合いを計る。フランコが前に出ながらパンチを出すと、井岡がカウンターで迎え打つ。手数でフランコ、的確さで井岡。結局、この構図が試合終了まで続いていくことになる。

第2ラウンド、井岡が左フック、右ストレートをボディに当てる。フランコのスタミナを削いで、プレッシャーを止める作戦だ。しかし、下がりながら打つためか威力がもうひとつ。フランコは井岡のパンチをものともせず、6発、7発とコンビネーションをまとめる。ロープに押し込んで連打するシーンもあり、前半はややフランコ優勢でラウンドが進む。

■一進一退の攻防 採点が微妙なまま最終ラウンドへ

身長はほぼ同じだが、リーチは井岡の166センチに対して、フランコ170センチとWBA王者が勝る。そのため、長い距離からのジャブの突き合いは、ややフランコが優勢。中盤以降、井岡は距離を詰めて右ストレートを打ち込んでペースをつかもうとする。それでもフランコは前に出続け、ガードの上からパンチを当て続ける。井岡のガードはやや緩く、次第に顔の腫れが目立つ。

一進一退の試合展開が続き、ついに12ラウンドへ。採点が難しいラウンドが多く、どちらも取りたい最終回となった。井岡は気合いを入れるようにコーナーで雄叫びを上げてリング中央に進み出た。

しかし、最後の3分間でも両者は決定打を放つことができない。このラウンドも採点が分かれる攻防となり、勝負はスコアカードに持ち込まれた。判定の結果は、一人が115対113でフランコ、残りの二人が114対114の引き分け。規定により、マジョリティ・ドローとなった。

■6月までに中谷潤人と激突か…

リング上で、井岡は「期待に応えられなくて、申し訳ありません」と反省の弁を述べた後、「勝てなかったけど、いいパフォーマンスができた」と、安堵の表情を浮かべた。チャンピオンは失うものが多い立場。自分のベルトを死守しただけでも立派。6回目の防衛成功を讃えたい。一方のフランコは、「採点は尊重する」としたうえで、再戦を希望するコメントを繰り返した。

すでにWBOは、世界フライ級王座を返上した中谷潤人(MT)を指名挑戦者に認定し、6月までに指名試合を行うことを井岡に義務づけている。王座奪取、2度の防衛戦を衝撃的なKOでクリアしてきた中谷は、ニューモンスターの呼び声が高い。井岡にとって強敵となることは間違いない。ファンにとっては、どうしても見たい一戦だ。

また、大晦日のリング下には、ローマン・ゴンザレスを下したばかりのWBCスーパー王者、フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)の姿があった。圧倒的な手数を誇るエストラーダの実力は、フランコよりも上。こちらが相手となっても、井岡にとっては厳しい試合となるだろう。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。