天野麻菜 インタビュー中編「忘れられない試合4選」ボクシング世界戦でリングガールを務めて注目を浴びたタレント・グラビアアイドルの天野麻菜さんにインタビュー。中編のテーマは、忘れられない試合。リングガールとして間近で見た試合のなかから特に印象…

天野麻菜 インタビュー中編「忘れられない試合4選」

ボクシング世界戦でリングガールを務めて注目を浴びたタレント・グラビアアイドルの天野麻菜さんにインタビュー。中編のテーマは、忘れられない試合。リングガールとして間近で見た試合のなかから特に印象的な4戦を聞いた。

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リングガールやタレントとして活躍中の天野麻菜さん

【幻の世界戦デビュー】

 インターバルが始まるとともに登場し、ラウンドを告げ、さっとリングを降りる。それ以外の時間はリングサイドで闘いの行方を見守る。ボクシングのリングガールは、どんな気持ちで試合を観ているのだろうか。

 2018年にリングガールの仕事を始めてから数々の死闘を間近で見続けてきた天野麻菜さんが、印象深い試合として真っ先に思い浮かべたのは、リングガールデビューしたわずか3カ月後、2018年11月のワールドボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンダム級・準々決勝<井上尚弥vsフアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)>だ。リングガール2回目にして、大舞台での仕事となった。

「今でも鮮明に覚えています。当時、井上選手の戦績は16戦16勝のうち、14がKOかTKO勝ちという戦績。それも多くが早い回での決着。『きょうも井上選手がきっと勝つのかな』と、その瞬間がいつ来るかと緊張しっぱなし。

 横浜アリーナの広い会場で熱気の量も注目度も想像以上でした。ゴングが鳴り、試合開始。10秒前にスタンバイして、ラウンドが終わったらリングに上がって、心のなかで45秒経ったら降りようと、自分の出番に向けて頭を整理していたら...えっ? 目の前でパヤノ選手が頭から倒れ、大の字に。

 井上選手が勝ったってこと? ずっとリングを見つめていたはずなのに、パンチが早すぎて何が起こったのかもわからず、会場はワーッと熱狂の渦。70秒KO。井上選手の圧倒的な強さを見せつけられ、私はリングに上がることなく試合が終わってしまいました。ボクシングはただただすごいスポーツだということをたたき込まれ、リングガール世界戦デビューの洗礼を受けた試合です」(天野さん、以下同)

【涙を堪えられなかった闘い】

「リングガールを始める直前まで、ボクシングと総合格闘技の違いもわからないほどだった」と振り返る天野さん。しかし、リングに立つようになってからは、メインイベント出場選手の過去の試合はもちろん、アンダーカードの選手についても知る努力を怠らない。ボクシングを好きになればなるほど、特定の選手を応援してしまいそうだが......。

「試合観戦の仕方について、決まりごとはないんです。ただ、私自身のルールとしてはどちらにも肩入れしないようにしています。日本人選手と海外選手でも、日本人選手同士でも、フラットな目線で観戦することを心がけていますね。

 どちらが勝つのかはもちろん興味がありますけど、気持ちが入りすぎると、インターバルでリングへ上がる時、自然な表情、立ち振る舞いをするのが難しくなってしまうので。ひとりのボクシングファンに戻るのは試合後、家に帰ってから。配信映像をあらためて観る時に、心から楽しんでいます(笑)」



 フラットな目線を心がけるようになったのは、2019年7月、WBA世界ミドル級タイトルマッチ<村田諒太vsロブ・ブラント(アメリカ)>がきっかけだったという。

「前年に村田選手がブラント選手に負けてベルトを失っていたので、リベンジマッチで王座に返り咲けるかという注目の一戦でした。2回TKOで再度ミドル級王者になった村田選手がインタビューを受けていた時、涙をこらえきれなくなって。

 試合後に『リングガールのくせに何泣いてるんだ』『あの子が泣いていたせいで冷めた』など厳しい意見を受けました。好意的なコメントのほうが多かったんですが、そこに甘んじていてもいいものかと考えて。

 たしかに、リングガールはどちらの陣営にも公平であって、私的な感情を持ち込まないことで、両選手のファンに純粋に楽しんでいただけるものだなと考えをあらためました」

【ボクシングの「儚さ」に心打たれた一戦】

 平常心を保ち、ボクシングの魅力がより伝わるよう心がけてきたという天野さんだが、それでもこらえきれず涙することもある。なかでも忘れられない試合が、2022年4月開催の世界ミドル級王座統一戦<村田vsゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)>だという。

「村田選手が負けて悔しかったわけではないんです。それまで生で、映像で、何度も試合を観ていたし、この試合にたどり着くまでいかに努力し続けたかも自分なりに勉強しましたし、勝ってほしいと願っていました。

 一方で、ゴロフキン選手も同じくらい応援していました。最初にリングに立っている姿を見た時に、その存在感に圧倒されて。オーラが違うんです。それなのに、私を含めてスタッフにも丁寧で礼儀正しくて優しい。

 本当は2021年に行なわれる予定の試合でしたが、コロナ禍で延期になり、ようやく実現したスーパーマッチ。結果はゴロフキン選手が9回TKO勝利。どちらも尊敬するボクサーなのに、必ず勝敗がついてしまう。ボクシングという競技の厳しさ、儚さに心を打たれ、感情の収拾がつかなくなって泣いてしまいました。

 涙をこらえられたらよかったんですが、リングガールとしては、リングに上がったボクサーふたりに心から『ベストパフォーマンスを!』と思えて、精神的に成長できた試合でした」

【会場の熱気に圧倒された10年ぶりのタイトルマッチ】

 天野さんが最後に挙げたのは、2022年11月に行なわれたライトフライ級の2団体統一戦<寺地拳四朗VS京口紘人>。寺地が7回TKOを収めて、統一王者となった。

「日本人対決のタイトルマッチが10年ぶりとあって、めったにない機会に立ち会えた心に残る試合です。日本人と外国人の試合だと、声援に偏りがあるんですが、この時は本当に半々になって、どちらが優勢でも劣勢でも会場がどよめき、興奮する。この独特の雰囲気はボクシングを見続けていてもそうそう味わえません。

 コロナ禍も落ち着いてきていて、海外勢とのマッチメイクもしやすくなると思いますが、日本からチャンピオンが続々誕生し、そう遠くない未来にまた日本人対決が実現することで、ボクシング界がいっそう盛り上がってくれたらうれしいです」


インタビュー後編

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【プロフィール】
天野麻菜 あまの・まな 
グラビアアイドル、タレント、俳優。1991年、大阪府生まれ。2009年より芸能活動を開始。「ミスiD 2013」ファイナリスト。映画『サマーソング』(2016年)、TBSドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(2021年)などに出演。2018年にリングガールを始め、「村田諒太vsゲンナジー・ゴロフキン」、「井上尚弥vsノニト・ドネア」などのタイトルマッチを担当。2022年11月にファースト写真集『なまのまな』(ワニブックス)を発売。趣味は、サウナ、映画・落語鑑賞で、特技は効きビール、フットサル。Instagramでは、3000日以上毎日ビールを飲み続ける動画をアップしている。