12月17日、リーグワンの2シーズン目が開幕した。来年がワールドカップイヤーとなるだけに、今シーズン注目したいのはやはり日本代表選手たちのプレーだろう。 日本代表候補の面々はディビジョン1のクラブを中心に在籍している。選手たちはリーグワン…

 12月17日、リーグワンの2シーズン目が開幕した。来年がワールドカップイヤーとなるだけに、今シーズン注目したいのはやはり日本代表選手たちのプレーだろう。

 日本代表候補の面々はディビジョン1のクラブを中心に在籍している。選手たちはリーグワンのなかでそれぞれ強化を図り、2023年9月に開催されるW杯フランス大会を目指す。



松島幸太朗のプレーが日本で再び見られる!

 リーグワンで今季最大の注目と言えば、日本代表FB(フルバック)松島幸太朗(29歳)に違いない。過去2シーズン、日本代表唯一の"海外組"としてフランスのクレルモンでプレーしていたが、「家族のことも考えて」古巣である東京サントリーサンゴリアスに帰ってくることを決断した。

 松島は2017年度のトップリーグでサンゴリアスの優勝に貢献し、年間MVPも受賞。過去3シーズン(コロナ禍でリーグ不成立だった2020年は除く)準優勝に終わっているサンゴリアスにとって、松島はリーグワン初優勝&王座奪還に欠かせない存在だ。

 サンゴリアスはリーグワン開幕戦となった12月18日、昨季3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイをホストの東京・味の素スタジアムに迎えた。松島は代表活動に4カ月間参加して疲れもあっただろうが、いきなり「15番」を背負って先発した。

 松島が見せ場を作ったのは、11点差を追う後半9分。ディフェンスのギャップを突いて日本代表No.8(ナンバーエイト)テビタ・タタフ(26歳)のトライにつなげ、「個人的に一番よかったところかな」と振り返るほどの鋭いプレーだった。

 試合はスピアーズのフィジカルラグビーに後手を踏み、3トライを許してしまい18-31で敗れた。それでも松島の表情は暗くなかった。

「負けましたけど、楽しめるところは楽しめました。(サンゴリアスは)アタッキングラグビーなので、ボールキープしての攻撃はきついですが楽しいです。ミスを少なくすればもっと楽しくなる。(最後)継続できればもっとスコアできると思うので、ハンドリングのスキルのレベルをもうちょっと上げていきたい」

【松田がわずか7カ月で復帰】

 自身3度目のワールドカップ出場に向けて、松島は「(リーグワンを通じて)プレーの安定性を高めたい。アタッキングラグビーにどんどんボールに絡んで、自分で行くのかパスをするのか、オプションをどんどん増やして相手の脅威になっていきたい」と意気込む。

 そして復帰と言えば、もうひとり注目すべき選手がいる。埼玉パナソニックワイルドナイツのSO(スタンドオフ)松田力也(28歳)だ。

 今年5月、松田は昨季リーグ最終戦で左ひざ前十字じん帯を断裂。そのためリーグワンのプレーオフ準決勝、決勝はもちろん、今年の日本代表活動にも一切参加することができなかった。

 しかし「(ケガする)前より強くなって戻ってくる」という強い信念のもと、松田は"ゴッドハンド"の異名で呼ばれる佐藤義人トレーナーとリハビリを開始。すると、復帰まで10カ月~1年ほどかかると思われていたにもかかわらず、松田は7カ月で公式戦の舞台に戻ってきた。

「開幕戦に絶対に間に合わせたい」。松田がそう願った東芝ブレイブルーパス東京(昨季4位)とのリーグ開幕戦。序盤はブレイブルーパスの気迫の前に先制される苦しい展開となるも、10番を背負った松田は巧みにゲームをコントロールし、徐々にワイルドナイツのペースとなっていく。

 そして12-16で迎えた後半15分、松田は「サインプレーのなかで自分の前が空いているのが見えた。ここは勝負だな」と冷静に判断し、40メートルをひとりで走りきって逆転トライ。22分に日本代表SO山沢拓也(28歳)にポジションを譲ったものの、勝利に貢献してリーグワン連覇に欠かせないピースであることを証明した。

「(リハビリ期間は)自分を見つめ直すいい時間だった。強くなって帰ってこられた。先のことを考えず、一戦一戦やることが2023年W杯への近道。結果はついてくるものだと信じて、今できることをやり続けたい。今季は最後までグラウンドに立って全員で連覇を達成したいし、その先を見据えながら毎試合、努力を続けたい」(松田)

【ベテラン堀江は衰え知らず】

 そしてワイルドナイツの開幕戦には、HO(フッカー)堀江翔太(36歳)の元気な姿もあった。前半はベンチから味方に指示を送り、後半12分からピッチに立てば、セットプレーだけでなく相手への上半身タックルでブレイブルーパスの攻撃を遮断した。

 昨季の堀江は控えからの出場が多かったものの、チームの逆転勝利に貢献し続けてリーグワン初代MVPに輝いた。そして「そろそろ(代表に)いかなあかんかな」と夏の日本代表活動には参加し、健在ぶりをアピールした。

 しかし、体のメンテナンスと個人のパフォーマンス向上のため、秋の代表活動は辞退。2015年から信頼を置く佐藤トレーナーの下でトレーニングに励んだ。10月には松田とともに、岡山から倉敷までの「24時間ウォーク」にも挑戦した。

「24時間歩いたあと、感触はいい。自分のケガしやすい部分や痛くなるところがあったりして、歩き方を変えたり、どういうストレッチをしたらいいか、リカバリーでどういう痛みがとりやすいかがわかった。足の裏も強化されましたし、知識も去年より増えた」(堀江)

 来月37歳を迎える堀江だが、衰えは感じさせない。「動きやすさは毎年感じています。コンタクトの強さも僕なりには感じています」と進化し続けている。日本代表に欠かせないベテランHOは、おそらく最後の世界大会となる4度目のワールドカップに向けて研鑽に余念がない。

 今季のリーグワンの優勝争いは、ワイルドナイツとサンゴリアスの「2強」が軸となるだろう。さらに、WTB(ウィング)根塚洸雅(24歳)ら強力BK陣を擁するスピアーズ、FL(フランカー)リーチ マイケル(34歳)が引っ張るブレイブルーパスも2強に絡んでくるはずだ。

 開幕戦では、No.8姫野和樹(28歳)が共同キャプテンを務めるトヨタヴェルブリッツ(昨季5位)は静岡ブルーレヴズ(昨季8位)に31-26で勝利。CTB(センター)梶村祐介(27歳)が新キャプテンとなった横浜キヤノンイーグルス(昨季6位)は日本代表のSO李承信(21歳/リ・スンシン)がいるコベルコ神戸スティーラーズ(昨季7位)を39-30で下した。

 昨季のトップ4が今季もプレーオフに進出するのか、それとも新たなチームが台頭してくるのか。今季のリーグワンもレベルの高い試合が数多く見られそうだ。

 ディビジョン1の決勝は2023年5月20日。日本代表選手が所属チームで切磋琢磨していくことが、来年のワールドカップにつながっていく。