「だからやめられないんです」(茨城スーパーシニア) 11月26~28日に茨城県水戸市のアダストリアみとアリーナおよびリリ…
「だからやめられないんです」(茨城スーパーシニア)
11月26~28日に茨城県水戸市のアダストリアみとアリーナおよびリリーアリーナMITOで開催された、一般社団法人 日本社会人バスケットボール連盟主催による「第5回 全日本社会人O-40/O-50バスケットボール選手権大会」。惜しくも優勝には届かなかったが、地元となる茨城県勢の戦いぶりは印象に残るものだった。
O-50男子で3位となった茨城スーパーシニアは、準決勝でレベルズと対戦。♯7田中文晴の3Pシュートで幸先よく先制した茨城スーパーシニアは、ガードを務める♯7田中を中心に、196㎝の長身を誇るセンター#8鈴木達也、体の強さを生かして難しいシュートも決め切るパワーフォワードの#6小林良久など各メンバーが躍動し、試合序盤を優勢に進める。しかし、中盤から終盤にかけて、その後優勝を飾ることになるレベルズに形勢を逆転され、♯7田中の3Pをはじめチーム一丸となっての追い上げで最後まで粘りを見せたものの、あと一歩で決勝進出はならなかった。

果敢なドリブルを見せる♯12渡部俊夫

シュートに挑む♯4浅野宏
キャプテンの♯4浅野宏は、「結果(目標であった優勝)を残せなかったのは残念ですが、この年齢になって、本当にここまでバスケットを楽しくできるという感謝の思いで臨んだ大会でした」と試合後に語った。
メンバーは全員、茨城県の出身である茨城スーパーシニア。それぞれのクラブチームでプレーしていたメンバーが、40歳になるのを機に一つのチームを結成した。目標とする大会が近くになると、毎週土曜日に集まって練習を重ねるが、メンバーの住まいは茨城県内の全域に広がっており、それぞれの仕事の都合などもあって全員が集まる機会は限られた。「週1回の練習ではやはり体力も落ちる一方なので、仕事が終わってから個々で走ったりしてトレーニングを行い、それぞれの地元の仲間が練習をやるときにちょっと入れてもらったりということもあります」(♯4浅野)
そんな#4浅野が感じている茨城スーパーシニアの良さは? 「もう10年くらい一緒にやってきているので、お互い何でも言い合えるところ。仲間としてまとまりのあるチームで、全国優勝を目標に掲げて気持ちを一つにして取り組めるところ」と答えてくれた。そして、「この後、ミーティングをしようと思いますが、また来年(の優勝)を目指して、諦めずにやっていきたいと思います」と目を輝かせながら続けた。
中学や高校は3年間、大学は4年間という区切りがあるが、ある意味ベテランには年齢の上限がない。「だからやめられないんです」と#4浅野は笑い、「もうちょっとのところで目標が達成できないというのも、モチベーションになっているのかな…」と。ならば、優勝という目標を達成した時にはどんな心境になるのだろう? 「それでも、やっぱり仲間とやるバスケットは楽しいから、きっとやめられないんじゃないかなと思います」と、♯4浅野は朗らかに答えてくれた。

経験を重ねたからこそできること(LEGEND)
会場となるアダストリアみとアリーナで、ちびっ子たちの声援がひときわにぎやかだったのが、O-40男子のLEGENDが戦うコート。BREMENとの準々決勝は、中盤まで一進一退の互いに譲らぬ競り合いとなったが、後半にBREMENの連続得点を許し、ベスト8の結果となった。

厳しい相手ディフェンスに対し必死にボールを守る♯23廣瀬晃弘
(写真はWELCOMEと対戦した2回戦のもの)
LEGENDはメンバー全員が茨城県の高校出身者で、しかも39歳の同い年(O-40の出場資格は、2022年4月1日現在で満39歳以上であること)。キャプテンの♯23廣瀬晃弘は、「高校時代、茨城県内のそれぞれ別のチーム(高校)でお互いにしのぎを削っていたライバルどうしが、30歳を機に一つのチームとして戦おうと結成しました」と、発足の由来を教えてくれた。
前出の、にぎやかな声援を送っていたちびっ子たちは、メンバーの子どもや、普段ミニバスチームで教えている子どもたちだそうで、「今日も練習を終えて会場に駆けつけて応援してくれたんです」と目じりを下げ、「すごくありがたいですし、本当に励まされました」と#23廣瀬は思いを込めて語った。

会場に響き渡る声援でLEGENDを後押ししたちびっ子たち
この日、試合には負けてしまったが、最後まで諦めず頑張る姿勢を貫いたことは、声の限り応援してくれた子どもたちへの感謝の気持ちの表れであり、また、バスケットプレーヤーとして、子どもたちのよきお手本となったに違いない。
かつてのライバルが時を経て集い、心を一つにして戦うLEGENDには、バスケットボールというスポーツで結ばれた縁の尊さと、言葉だけではなく自らのプレーで子どもたちに大切なものを伝えるという、社会に出て経験を重ねた今だからこそできる、暖かく深いものを感じた。

取材・文・写真〇村山純一(月刊バスケットボール編集部)