400万円増の年俸2000万円に「イニング数が一番評価したところ」 ドラフト1位入団も1年目の今季1勝10敗に終わった西…

400万円増の年俸2000万円に「イニング数が一番評価したところ」

 ドラフト1位入団も1年目の今季1勝10敗に終わった西武・隅田知一郎投手が28日、所沢市の球団事務所で契約更改交渉に臨み、400万円増の年俸2000万円でサインした(金額は推定)。“借金9”でも昇給となった理由とは? そして、なぜここまで負けが込んでしまったのか。渡辺久信GMが分析した。

 隅田には昨秋ドラフトで4球団の1位指名が競合し、西武が当たりくじを引いた。西日本工大でアマチュア球界No.1左腕と呼ばれた評判通り、最速150キロの速球を軸にスライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットなど多彩な変化球も駆使。開幕第2戦の3月26日オリックス戦(ベルーナドーム)の先発に抜擢され、7回1安打無失点の快投でプロ初勝利を挙げた時には、まさかこれが今季最初で最後の白星になるとは、誰も予想しなかっただろう。

 そこから悪夢の10連敗を喫し、1軍では16試合登板(先発は14試合)1勝10敗、防御率3.75。それでも昇給となった理由を、渡辺GMは「イニング数を結構投げてくれたことが、一番評価したところ」と説明した。

 実際、隅田の今季投球回数はチーム5位の81回2/3。その他2軍降格中にも、イースタン・リーグで5試合に登板し21回を投げている(0勝0敗、防御率1.71)。隅田自身、「1軍とファームを合わせて100イニングくらい投げることができましたから、来年しっかり1軍で投げることができれば、規定投球回(143回)も見えてくる。こういう感じでやれるんだとわかったので、自信がつきました」と豊富な実戦経験が手応えにつながっている。

“大量失点はしないが先に取られる”弊害

 先発した試合では大きく乱れることがなく、2、3失点に抑えることが多かったが、味方打線の援護に恵まれない試合もあった。ただ、渡辺GMはこう指摘する。「確かに援護点は少なかったかもしれないが、援護してもらう前に、先に点を取られている試合がほとんどです。それって、勝てない投手の特色だよね、という話ですよ。先に点を取られるから、追いかける方は攻め手を欠き、なかなか追いつけない。試合を壊すようなことはなく2、3点には抑えるけれど、(勝てないのは)そういうところですよね」。将来のエースとなりうる素材と見込んでいるからこそ、苦言も呈するのだ。

 大量失点はしないが、相手に2、3点先行されると、味方打線は送りバントやエンドランといった小技を繰り出しにくくなり、攻撃が限定的になる。「味方が点を取ってくれるまで我慢して抑えていれば、今年の成績もガラっと変わっていたのではないか」と渡辺GMは見ている。

 隅田は「まず規定投球回数をしっかりクリアしたい。そのために、1年間投げ抜ける強い体をつくりたいです」と、オフの精進を誓った。2桁勝利で新人王──とはいかなかったが、昇給査定を糧に、来季は貯金と借金を逆転してみせる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)