左打者偏重の楽天野手、万能の阿部加入はチーム事情に合致 楽天のウイークポイントを埋めるピースとなりそうだ。涌井秀章投手と…
左打者偏重の楽天野手、万能の阿部加入はチーム事情に合致
楽天のウイークポイントを埋めるピースとなりそうだ。涌井秀章投手とのトレードで中日から楽天に移籍した阿部寿樹内野手が22日、楽天生命パーク宮城で入団会見。「いろいろなポジションを守れることが僕の長所。試合に出るためにも、いろいろなポジションをやらないといけない」と“ユーティリティ性”をアピールした。
実際、レギュラーとなった2019年から昨年までは、ほぼ二塁手に専念していたが、今季は二塁手として72試合、三塁手として54試合、左翼手として7試合にスタメン出場し、試合途中から一塁を守ったこともあった。この特長が楽天のチーム事情に合致する。
阿部の本職の二塁には、新たに4年契約を結んだ主砲の浅村栄斗内野手が君臨しているが、守備の負担を軽減するために今季もDHで32試合にスタメン出場(二塁手として111試合)しているように、バックアップの二塁手の存在も重要だ。二塁を中心に三塁、一塁、外野まで守れ、打力がある阿部の加入は願ったり叶ったりなのだ。
楽天は今季、4月中旬から5月末まで首位を走るも、夏場以降失速し、結局Bクラスの4位に終わった。シーズン序盤に首位に立ちながら失速するパターンは2年連続で、選手層の薄さが一因とみられている。
特に右打者不足は、ここ数年の課題。今季も浅村以外は、100試合以上に出場した島内宏明外野手、辰己涼介外野手、西川遥輝外野手、鈴木大地内野手、小深田大翔内野手が全員左打者だった。
岩手・一関一高出身「久しぶりなので、寒さとともに慣れていきたい」
それどころか、茂木栄五郎内野手、銀次内野手、岡島豪郎外野手、山崎剛内野手、渡邊佳明内野手、武藤敦貴外野手ら、準レギュラー格から代打の切り札、将来を嘱望される若手に至るまで、左打者ばかりがズラリと並ぶ。右打者で今季打率.270、9本塁打57打点、2019年にはセ・リーグ10位の打率.291をマークした実績のある阿部は、重宝されるに違いない。
さらに岩手県出身で、楽天の東北密着戦略におあつらえ向き。来年5月16日には、4月に盛岡市に開場する新球場「きたぎんボールパーク」でソフトバンク戦が予定されている。楽天球団が誕生したのは、阿部が地元の岩手・一関一高1年の時。そこから明大、Hondaを経て中日入りしており、16年ぶりに東北に生活拠点を置くことになる。
「久しぶりなので、寒さとともに慣れていきたい」と苦笑しつつ、「地元に球団ができた時には驚きましたが、そのチームの一員になることができてよかった。実家の母親から『近くなったね』と言われました」と感慨深げだ。
2019年に味わいのある髭面から「マスター」の愛称が付き親しまれたが、今季は就任1年目の立浪和義監督の方針で髭を剃っていた。「来季はどうしますかね……まだ決めてないです」と言うが、地元で人気爆発の可能性を秘めているだけに、あいさつ代わりにトレードマークを復活させてほしい気がする。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)