現役引退後、独占インタビューで激白「ファンからの声援が嬉しくて、感謝で涙が出た」 今季限りで現役を引退したヤクルトの坂口…
現役引退後、独占インタビューで激白「ファンからの声援が嬉しくて、感謝で涙が出た」
今季限りで現役を引退したヤクルトの坂口智隆氏。度重なる怪我に悩まされながらも近鉄、オリックス、ヤクルトでプロ20年間を戦い抜いた。“最後の近鉄戦士”としてバファローズ魂を背負った男は、ユニホームを脱いでも野球への情熱は衰えることない。今回、Full-Countの単独インタビューに応じ、古巣への思い、後輩たちに伝えたいこと、そして、今後の人生について赤裸々に語った。
ヤクルトとオリックスが2年連続で死闘を演じた日本シリーズ。引退後の初仕事は解説者として古巣の頂上決戦を見届けた。ユニホームではなくスーツに身を包み、試合内容を振り返るため、スコアブックを片手に1球、1球を自ら記入。グラウンドの中ではなく、初めて見る外からの景色は新鮮だった。
「今まで気付かなかったことがたくさんあって、全てが勉強になった。現役の時にもっと視野を広く見ることができたら、もう少しできたんじゃないかなと(笑)。いい試合を見せてもらった。改めて、自分は野球が大好きなんだと実感しました」
今季限りで自ら現役引退を決断したが、シーズン前には「体的にはここ数年で一番、動いていた。今シーズンはある程度『できるな』と思って自信もあった」と明かす。
ただ、2軍暮らしが続き若手たちとプレーする中で「自分の立ち位置を考えた時にちょっと違和感があった。ずっとレギュラーを目指してここまでやってきたのに中途半端じゃいけない。若い選手を見て、決断をしないといけないと思った。この若手たちの中で終わりたいなと。僕の中では幸せな辞め方ができたと思う」と、気持ちに変化があった。
“最後の近鉄戦士”と呼ばれ「バファローズの思いを背負う責任が自分にはある」
2003年に近鉄に入団しNPBでは“最後の近鉄戦士”という看板を背負いながらプレーを続けてきた。当時から応援してくれたファンの声は痛いほど胸に響いたという。
「本当は引退を決断するのは勇気がいりました。ボロボロになるまで続けた方がいいかなと、思った時もあった。バファローズの思いを背負う責任が自分にはある。でも、気持ちと体がどうしても…。申し訳ない気持ちはあったが、引き際は区切りとして自分で決めようと思った」
神宮で行われた10月3日の引退試合では「2番・右翼」でスタメン出場。初回の第1打席で左前打を放ち、第2打席は体がねじれるほどのフルスイングで遊飛。背番号「42」が見せた、普段と変わらない全力プレーにファンからは万雷の拍手が注がれた。
「引退を発表してから数試合ファームで出場したのですが、本当に体が動かなくなった。やっぱり気持ちって大事なんだと実感した。打ちたい、打たないといけないプレッシャーから解放されて“魂”のない体じゃアカンなと(笑)。でも、引退試合でのヒットは本当に奇跡。どうやって打ったか覚えてないんですよ。あれは野球の神様から『お疲れさん』っていうご褒美だったと思ってます。ファンからの声援が嬉しくて、感謝で涙が出た。これで終わりなんだと」
近鉄、オリックス、ヤクルトの3球団が繋いだ不思議な縁「幸せな野球人生」
プロのスタートを切り、移籍によって生まれた歓喜の瞬間。近鉄、オリックス、ヤクルトの3球団が結んでくれた不思議な縁を感じている。
坂口氏のプロ初安打は近鉄時代の2003年10月7日・オリックス戦(当時、Yahoo!BBスタジアム)での二塁内野安打。そして、昨季は20年間のプロ野球人生で初めてリーグ優勝、日本一を経験し安打を放った。小学校時代に通い続けた、ほっと神戸(当時はグリーンスタジアム神戸)でも日本シリーズに出場。さらに今年は引退後の最初の仕事でヤクルトとオリックスの日本シリーズの解説者を務めた。
「節目の年に全ての球団に関わっていた。去年、ほっと神戸で日本一を決めた時はめちゃくちゃ寒かったけど、凄い経験をさせて頂いた。近鉄でプロ初ヒットを記録した相手がオリックス。人生で初めての優勝がヤクルトで、憧れ続けた球場(ほっと神戸)で試合もできた。ユニホームを脱いでの初めての仕事が今回の日本シリーズ。本当に有難かったし、嬉しかった。怪我も沢山して辛い思いもあったけど、最後は幸せな野球人生でした」
職業「プロ野球選手」から離れ、現在は時間があれば後輩たちにアドバイスを送りながら、ゆっくりと流れる時間を楽しんでいる。
「一番は野球に携わることができればいい。指導者にも勿論、興味はありますし、アマチュアを含めて全てのことに興味があります。野球がないと生活にも張りが無くなる。人生の一部で切ることができない。辞める間際のファーム生活は財産になった。野球を一から勉強して一回り、二回り賢くなっていければいいですね」
ファンやナインから“グッチ”の愛称で親しまれた男が、グラウンドに帰ってくる日はそう遠くないかもしれない。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)