ワールドカップが11月に開催されるため、通常とは異なる日程となった2022年のJ1リーグが幕を閉じた。最終節までタイト…
ワールドカップが11月に開催されるため、通常とは異なる日程となった2022年のJ1リーグが幕を閉じた。最終節までタイトルレースが展開されたが、そこに至るまでの道のりにも見るべきものはあった。サッカージャーナリスト・後藤健生が、今シーズンのJ1を振り返る。
■横浜FMが3季ぶりに優勝
Jリーグは2022年シーズンのほぼすべての日程を終了した。
J1リーグでは優勝争いが最終節までもつれたものの、横浜F・マリノスが3シーズンぶりの優勝。最後まで粘り強く横浜を追った川崎フロンターレだったが、「3連覇」はまたも達成できなかった。
一方、下位ではジュビロ磐田に続いて清水エスパルスも自動降格が決定。静岡勢がそろってJ2に陥落することとなった。
J2リーグではアルビレックス新潟と横浜FCの2強が圧倒的な力を発揮して昇格を決定。3位以下は大混戦となったが、J1参入プレーオフでは、リーグ戦5位のロアッソ熊本が勝ち抜いて11月13日の参入決定戦でJ1で16位となった京都サンガF.C.と対戦することが決定。
さらに、J3リーグでも11月6日にいわきFCが残り2節を残して優勝を決定。残る1つの昇格枠を巡って、藤枝MYFC、松本山雅、鹿児島ユナイテッドFCの3チームが鎬を削っている。
また、日本フットボールリーグ(JFL)は残り2節の段階でHonda FC、奈良クラブ、FC大阪の3チームが勝点55で並び、このうちJリーグ加盟を目指す準会員の奈良クラブとFC大阪の4位以内が確定し、その他の条件も満たしているため、事実上J3加盟を決めている(正式にはJリーグ理事会で決定)。
昇降格についてはこれからヤマ場を迎えるところもあるが、Jリーグのほとんどの日程が終了したところで、今シーズンを総括してみよう。
■スタイルを確立している横浜FM
まず、J1リーグの優勝争い。結果としてはきわめて順当なものとなった。
ここ数年、日本のサッカー界では横浜F・マリノスと川崎フロンターレの“2強体制”が続いている。なにしろ、2017年シーズンに川崎が初優勝を決めて以来、川崎が4度、横浜FMが2度マイスターシャーレを掲げており、神奈川県のこの2つのクラブがリーグ戦のタイトルを独占しているのだ。今シーズンも準優勝の川崎と3位のサンフレッチェ広島の勝点差は11ポイントもあり、両チームの力は他の追随を許さないものだった。
残り4試合となった段階で横浜FMがガンバ大阪、ジュビロ磐田というともに残留争いの渦中にある下位チームにホームで連敗し、川崎に勝点2差まで追い上げられたが、それでも今シーズンの最強チームが横浜FMだったことは間違いないだろう。
右サイドでは33歳のベテラン、水沼宏太が完全復活。いや、“復活”というよりは水沼にとって今シーズンはキャリアの中でも最高のパフォーマンスだった。
そして、この水沼や左サイドのエウベルなどがサイドを崩して、早めにクロスを入れてレオ・セアラやアンデルソン・ロペスなどが決めるという横浜FMの攻撃の型が機能し続けた。
横浜FMは、試合前のウォーミングアップを見ていても、それぞれの選手が本来のポジションに近い位置に付いてクロスに合わせる練習をたっぷり行う。まさに、アンジェ・ポステコグルー監督時代から築き上げてきた横浜FMのスタイルがしっかりと根付いているのだ。
■特筆すべき得点力の内訳
34試合で横浜FMが決めたゴールは70。昨シーズンの82得点には及ばないものの、2019年に優勝した時の68ゴールを上回っている。
また、このチームで興味深いのは得点者が特定の選手に偏らないことだ。
J1リーグの得点ランキングではレオ・セアラとアンデルソン・ロペスが11ゴールで6位タイ、西村拓真が10ゴールで8位タイに入っているが、これだけの攻撃力を誇り、実際リーグ最多の70ゴールを決めたチームに得点王を争う選手がいなかったというのは特筆すべきことだろう。
2019年に横浜FMが優勝したシーズンも、マルコス・ジュニオールと仲川輝人の2人が15ゴールずつを決めて得点王を分け合ったことを考えても分かるように、多くの選手が点を取るのはこのチームの場合、けっして偶然のことではない。
つまり、サイドからのクロスに対して合わせるのは中央に構えているCFだけでなく、逆サイドから詰めてくるサイドアタッカーもクロスに合わせて点を取るというメカニズムが機能している。だから、このような現象を引き起こすのだろう。2021年シーズンに川崎のレアンドロ・ダミアンと得点王の座を分け合った前田大然(現セルティック)も、CFではなく左サイドを任されることが多い選手だった。
■落ちなかったチーム力
横浜FMが優勝に相応しい理由の最大のものは選手層の厚さである。
DF陣でも永戸勝也や20歳の角田涼太郎。あるいは、センターバックとボランチを兼任する岩田智輝といった選手が台頭し、松原健や畠中槙之輔といった前回優勝時の立役者を追いやるほどの活躍を見せる。
中盤でも20歳の藤田譲瑠チマが急成長。24歳になった渡辺皓太もチームに完全に馴染んできた。もちろん、喜田拓也はキャプテンとして献身的にプレーしている。こうして、各ポジションに同じレベルでプレーできる選手が2人以上という層の厚さが完成したのだ。
7月には左サイドで存在感を高めつつあった宮市亮が日本代表の活動で右ひざ前十字靱帯断裂という重傷を負って戦列を離れ、9月には西村拓真も靱帯損傷でチームを離れた。しかし、主力選手の負傷・離脱という状況に追い込まれても、それでもチーム力を落とすことなく戦えた結果、シーズンを乗り越えることができた。
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)などのカップ戦も戦いながらリーグ戦の34試合を戦い抜き、リーグ戦最終盤での連敗を除いて連敗がなかったのはこうした選手層の厚さがあったからこそだ。
前任者のポステコグルー監督が築き上げた横浜FMのサッカーを引き継ぎ、結果を出し続けながら若手選手、新加入選手の融合を進め、一体感を高めていったあたりがケヴィン・マスカット監督の手腕だったのだろう。