東京六大学野球で、実に151季ぶり最下位の危機にひんしている法大は22日、神宮球場で行われた東大1回戦で、引き分け寸前…

 東京六大学野球で、実に151季ぶり最下位の危機にひんしている法大は22日、神宮球場で行われた東大1回戦で、引き分け寸前の9回に、内海貴斗内野手(3年)のサヨナラソロが飛び出し2-1で先勝。勝ち点0同士による“最下位決定カード”の初戦に勝ち、重圧突破まであと1勝に迫った。

 救世主は、2日前のプロ野球ドラフト会議でオリックスから育成5位指名された村上喬一朗捕手(4年)だった。西武から育成4位指名された是澤涼輔捕手(4年)とのポジション争いが激しい中、この試合は7番打者としてスタメン出場。加藤重雄監督は「東大さんが走ってくることはわかっていた。スローイングが一番いいので」と村上の盗塁阻止力を買っての起用だと明かす。

 相手の東大は、今季11試合でリーグ2位の18盗塁(22日現在)を記録し、“足攻”に活路を見出すチーム。村上は期待通り、1-1の同点で迎えた4回、1死一塁で一塁走者の二盗を阻止した。7回2死一塁では、一塁走者・中井徹哉内野手(4年)に二盗を許すも、土壇場で再び見せ場がやって来る。

 同点のまま突入した9回、1死一塁で東大は“代走の切り札”伊藤翔吾外野手(4年)を起用した。3番の別府洸太朗外野手(3年)の初球にいきなりスタート。マウンド上の武冨陸投手(3年)は完全にモーションを盗まれ、村上の送球もワンバウンドになったが、伊藤翔が滑り込んでくる所へ絶妙にコントロールされ、タッチアウト。

 ピンチの芽を摘んだ村上は「何球目に走ってくるかというデータは、頭に入っていた。後手に回らずに対処できました」としてやったり。「モーションを盗まれていましたが、ワンバウンドでも人工芝で送球のスピードは落ちないので、とにかく早くボールを出そうと思いました」と戦略勝ちに会心の笑みを浮かべた。敵将の東大・井手峻監督も「相手のキャッチャーにしのがれました」と脱帽するしかなかった。

20日のドラフト会議ではオリックスから育成5位指名を受けた【写真:小林靖】

 早大と並んで過去最多の46回の優勝を誇る法大が、もし最下位に終われば、実に1947年春以来151季ぶり。加藤監督は「ここ1番でタイムリーが出ない。また今日も胃が痛い試合でした。この1か月半、午前2時頃に目が覚めて眠れない」と苦しさを吐露する。加藤監督は法大OBの元投手で、巨人で活躍した名投手・江川卓氏の1年後輩。2、3年時にチームは無敵の4季連続優勝を成し遂げているだけに、現状には忸怩たる思いがある。重圧は、並大抵でない。

 そんな中、村上は打っても2打数2安打1四球で、全打席出塁。内海貴のサヨナラ弾をネクストバッターズサークルで見届け、「本当は僕が打って決めるつもりだったのに」と笑った。「僕の強みは、ムードメーカーとしてチームの雰囲気を明るくする人間性」と言う通り、重圧の下でも笑顔を絶やさず、チームを励ましている。進路についても「行きます!」と早くもオリックス入りを宣言。1軍出場資格のない育成選手の立場から這い上がる決意を固めている。

 今季最終カードの初戦に勝ち、加藤監督は「あす(連勝で勝ち点を)決められるように、あさってがないように頑張りたい」と話した。1日でも早く最下位回避を決めたいのは、チームにとって紛れもない本音。崖っぷちでも明るさを失わない捕手が、ナインの背中を押し続ける。

 

(Full-Count 宮脇広久)