世界卓球団体戦 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)が6日、中国・成都で行われ、女子準々決勝に臨んだ世界ランク2位の日本は、同30位スロバキアに3-0で勝利。4大会連続のメダルを確定させた。日本人トップの世界ランク5位・早田…

世界卓球団体戦

 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)が6日、中国・成都で行われ、女子準々決勝に臨んだ世界ランク2位の日本は、同30位スロバキアに3-0で勝利。4大会連続のメダルを確定させた。日本人トップの世界ランク5位・早田ひな(日本生命)は、第2試合で3-1。前回2018年の団体戦は出場1試合に留まったが、リザーブで学んだ「芯の強さ」を発揮した。51年ぶりの金メダルへ、7日の準決勝はドイツと対戦する。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 芯をぶらさず、ラケットを振り抜いた。伊藤美誠がわずか18分で先勝して迎えた第2試合。早田は世界ランク48位バラージョバーを迎え撃った。第1ゲーム(G)はパワードライブに手こずるなど6-9と追い込まれたが、そこから5連続得点で逆転。11-9で先取すると、第2Gは場外までボールを弾き飛ばす強烈なフォアハンドなどで得点を重ね、連取した。

 しかし、第3Gは相手のナチュラルに変化するボールに苦戦。狙った通りに返球できず、7-11で奪われた。第4Gは変化を出させないためにフォア攻勢を仕掛ける。「難しく考えず、簡単に返して普通のラリーに」「あえて相手が待っていない普通のボールで」。試合中に脳みそをフル回転。「普通のラリーをしたら負けない。その強さが自分の中にある」。磨いた技を信じ、11-6で勝ち切った。

 初対戦となった癖のある欧州選手。事前のデータは少なかったが、コート上で情報収集した。格上の自分に思い切って向かってくる相手に巧みに対応。「試合の中でうまく調整できたことはすごく自信を持っていい」と胸を張った。グループリーグ(GL)初戦で3-0の快勝を収めた相手との再戦。第3試合は長崎美柚が勝利を飾り、日本はGLから6戦連続でストレート勝ちだ。

 4年前、ベンチから見た光景が糧になった。中国との決勝。17歳の伊藤が世界ランク1位にも立ったことのある劉詩雯を撃破した。銀メダルに終わったが、早田は同い年の金星を間近で目撃。「強い選手は自分の芯を持ってるんだな」。コリア(韓国と北朝鮮の合同チーム)との準決勝では、石川佳純がキム・ソンイとフルゲームの大激闘を制した。自身の出場はGL1試合のみでも、学ぶことを忘れなかった。

「その2試合が自分の中で凄く印象に残っています。互いにほとんど手を出し尽くした状態。最後に自分で何を選択して点を取るのか。2人はしっかり自分で決めて最後に取り切った。チームみんなのアドバイスを聞いた上で最後に自分が何を選択するのか、自分自身で決めないといけない。そういった芯の強さが凄く大事だなと思いました。

 過去に個人戦でやった相手でも、団体戦に強い選手、弱い選手がいる。過去の成績はある程度反映されるけど、『他の大会で勝ったから』と思うのではなく、あまり気にしない方がいい。その日、その日の調子で戦うので、その時に何がいいのか常に選択をしていくことが大事」

日々の努力で磨かれた能力とは「細かくないと最後に中国には勝てない」

 的確な状況判断力、初見の相手に対する情報収集力、そして土壇場の決断力。今大会、この力は他の選手にも生かされた。ベンチを温めることの多かった早田は、ゲーム間に積極的にアドバイス。世界卓球デビューした20歳の長崎は、早田について「卓球の戦術が凄く細かい。的確なアドバイスをくれますし、一番声を出して応援してくれる。何かあっても大丈夫だなって安心感があります」と感謝する。

 日々の努力の賜物だった。早田は手足が長く、166センチの長身だけに扱い方に苦労する体。練習では岡雄介トレーナーにフォームについて逐一質問する。「今のはどうだった?」「あの選手の体の使い方は?」。一本ごとに確認し、体のメカニズムを論理的に把握。そうやって深めた思考、理論が大舞台の本番中にも冴えわたるのだ。

「団体戦でも試合中に分析ができる。試合中にできれば、1ゲームの中で対応を変えることができます。1ゲームの中で変えられる人と、ゲーム間やタイムアウトでアドバイスをもらって変えられる人で差が出てきますよね。中国選手と対戦した時、やっぱり最後は自分で対応しなきゃいけない。

 どこを分析するのか、人それぞれやり方は違うけど、自分が対応すべきことを試合中に感じられるように練習から意識して取り組んでいます。いつも自分の感覚は細かいです。でも、細かくないと最後に中国には勝てない。そこは自分に凄く厳しくやっていると思います」

 7日の準決勝は世界ランク5位のドイツが相手だ。もう一つの準決勝は、5連覇を狙う女王・中国と同7位の台湾が激突。3大会連続銀メダルを獲得している日本が目指すのは、51年ぶりの金メダルしかない。

「私のポジション的に相手チームのエースと戦うことが多くなってくる。1-0、2-0で3番手に渡すのが最大の役割になる」

 土壇場で自分を信じる。そのために毎日歯を食いしばって汗を流してきた。4年間で日本を引っ張る立場に成長した22歳。早田の胸には太く、強い芯がある。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)