「世界卓球・日本代表連載」、きょう開幕―最終回は張本智和 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)が30日に中国・成都で開幕する。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、4年ぶりの開催となる世界最強国決定戦。男女別に行われ、日本…

「世界卓球・日本代表連載」、きょう開幕―最終回は張本智和

 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)が30日に中国・成都で開幕する。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、4年ぶりの開催となる世界最強国決定戦。男女別に行われ、日本は男子4人、女子5人が代表に名を連ねた。「THE ANSWER」では開幕4日前から当日まで連載を実施。日本代表全選手の想いを伝え、大会を盛り上げる。

 最終回となる30日の第9回は張本智和(IMG)が登場。前回2018年大会は自身の敗戦もあり、12年ぶりのメダルなしに終わった。当時の悔しさを胸に秘めながら臨む大舞台。19歳のエースは今年4月に環境を変え、原点を思い出した。“脱・水谷隼”となる日本代表の中心選手としてメダルを狙う。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平、協力=テレビ東京)

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 4年前、責任を背負いこんだ光景は忘れられない。

 6大会連続メダルの懸かった2018年。準々決勝の相手は韓国だった。15歳になる直前だった張本は、第1試合で2-3の逆転負け。水谷隼が第2試合で取り返したものの、松平健太、水谷が連敗し、5位に終わった。

「今でもその時の悔しさは残っています。自分が負けたリーグ戦と準々決勝でチームも負けてしまった。日本のメダルの連続記録も途切れさせてしまって、本当に責任を感じています。今回は何としてでも、最低限メダルは持ち帰らないといけない」

 世界卓球の団体戦は各対戦3人を選び、シングルス5試合(3勝先取)で争う。第1、2試合に出場した2選手はたすき掛けで第4、5試合にも出場。東京五輪団体戦で全勝した張本は、自身の役割について「もちろん全勝が最低限」と覚悟を示した。

「自分が2点(2勝)を取ることが日本の勝利に繋がるのは間違いない。けど、やっぱり団体戦は一人でやる競技じゃないですし、チーム、監督、周りのスタッフの皆さんと力を合わせて何とか3点を取ることを話し合って頑張りたいと思っています」

 これまで長年代表を引っ張ってきた水谷が引退。同じ東京五輪男子団体銅メダルメンバーの丹羽孝希は、大会直前にインフルエンザで出場を辞退した。「心は5人で戦いたい」。思わぬ逆境の中、19歳の張本は未だチーム最年少ながら、最も経験豊富なエースとして真価が問われる。

「2、3番手の選手へのアドバイスは必要だと思いますし、僕が先頭に立ってチームを引っ張る必要があるのかなと思います。自分が最低限全勝して、他の選手にも上手くアドバイスできれば自分の仕事ができたと思える。プレーとプレー以外の面でしっかり充実させた団体戦になれば」

 東京五輪以降は、「自分にとって苦しい半年だった」と振り返る。昨年11月の世界卓球個人戦は早田ひなとの混合ダブルスで銀メダルだったものの、シングルスは2回戦、男子ダブルスは3回戦敗退。今年1月の全日本選手権もシングルス16強で姿を消した。

「世界卓球で負けて、全日本でも負けて納得のいかない日々が続いていた」

環境を変えて気づいた原点「大事なのは練習場、食事、トレーニングだけではない」

 4月、世界の強豪が集まるヨーロッパチャンピオンズリーグ(ECL)への参戦を発表した。決断の裏には“原点”があった。

「良い環境というのは良い練習場、良い食事、良いトレーニングのことだと思っていたんですけど、それだけでは良い環境ではないということに気づきました。今は練習相手を探すのが難しいですけど、それでも楽しく卓球ができていることこそが、やっぱり良い環境だと思う。全て揃っているから良い環境ではなく、自分が楽しく卓球に打ち込めることが大事」

 この気づきが復調のきっかけになった。春から早大人間科学部の通信教育課程に進学。海外遠征中も課題に追われることがあるが、7月末に今季国際大会初Vを果たした。

「環境を変えて今までと全く違う生活をしたのは、大きくプラスに働いていると思います。メンタルが整ったからこそ、良い練習ができたり、新しい技術を習得できたりする。一番は自分の気持ちが整ったことが大きいと思います。

 リードしていても、されていても同じ気持ちで戦えているのが一番大きい。バックハンド、フォアハンドともにミスが減ってきた。全体的に安定感が増している。昔の一番強かった頃に近づいてきているんじゃないかなと思います」

 数々の最年少記録を塗り替えてきた日本の至宝。早くから国際大会に出場し、勝ち、負け両方のパターンを多く経験した。逆転した、された時にどういうメンタルだったのか。都度、状況を思い出し、「ある程度セオリーがわかる。それが小さい頃から活躍してきたメリット」と一つずつ糧にした。

 その経験が生かされるのが今大会。9連覇中の中国に次ぐ国は拮抗している。どの国が王者への挑戦権を得るのか。張本は自身の「完全復活」を見据えながら言った。

「全ての国が五分五分だと思うので、まず準々決勝までいかないといけない。(自分が)完全復活と言えるのは、やっぱり世界チャンピオンになった時か、大きな大会で優勝した時。今までの結果と同じくらいでは満足できないので、この世界卓球だったり、ワールドカップだったり、そういうところで優勝するのが今の目標です」

 期待を背負うニッポン卓球界の若きエースは、2番手に甘んじるつもりはない。

 ◆世界卓球 9月30日からグループリーグが行われ、上位16の国と地域が10月5日からの決勝トーナメントに進出。テレビ東京系&BSテレ東で連日放送。中継キャッチフレーズは「新時代の、目撃者になる。」(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)