CATレディース最終日 女子ゴルフの国内ツアー、CATレディース最終日は21日、神奈川・大箱根CC(6638ヤード、パー72)で行われた。単独首位で出た20歳ルーキー岩井千怜(Honda)は、2バーディー、ボギーなしの70で回り、通算13ア…

CATレディース最終日

 女子ゴルフの国内ツアー、CATレディース最終日は21日、神奈川・大箱根CC(6638ヤード、パー72)で行われた。単独首位で出た20歳ルーキー岩井千怜(Honda)は、2バーディー、ボギーなしの70で回り、通算13アンダーで逃げ切り優勝。史上3人目となるツアー初優勝からの2戦連続Vを20歳47日の最年少で達成した。初優勝からという条件を除いても、2017年の畑岡奈紗の18歳261日、04年に2度達成した宮里藍の19歳1日と、19歳337日に次ぐ4番目の年少記録となった。緊張する場面でも笑顔を見せる姿は、前週同様にファンを魅了。その姿を見て、母の恵美子さんは中学時代のエピソード明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 18番パー5。1.5メートルのウィニングパットを決めると、岩井は高く上げた拳を5度動かした。グリーン周りでは、前週と同様に目を潤ませた双子の姉・明愛が待っていた。抱擁はなく、ハイタッチ。明愛から「ナイス、ナイス」と声をかけられ、笑顔で「ありがとう」と短く返した。

 離れた場所では、父の雄士さんがいた。今大会、明愛のキャディーを務め、16番グリーンから明愛と次女の姿を見守った。17番パー3で山下美夢有(加賀電子)を1打リードするバーディーを奪うと、右手で小さくガッツポーズ。岩井は緊張の場面でも2人に気づいていたといい、優勝インタビューで「父はキャディーで18ホール回った後に応援に来ていたので、明愛も含めて岩井家の体力はすごいなと思いました」と言い、微笑んだ。

 そして、18ホールを振り返ると「ずっと緊張していました。16番からはドキドキが大きくなりました」。前週と同じくピンを狙おうとしたが、「安全にもいきたい」という意識がショットの勢いを止め、ピンから大きくショートするホールが続いた。しかし、17番パー3ではそれを払拭。16番パー4でつかんだ「良い感覚」を自信にクラブを振り切り、「左からの風に乗せる理想の高いボールが打てました」と説明した。

 18番パー5で勝負を決めたパーパットに入る前は「ドッキドキでした」と表現した。それほどの重圧と闘いながらのプレーだったが、岩井は終始、笑顔を見せ続けた。明愛、雄士さんとは違う場所で見守っていた母・恵美子さんは、そんな娘の姿を見て5年前を思い出していた。

父・雄士さんの教え「ミスをしても笑ってプレーしなさい」

「中学3年の合唱コンクールで千怜が笑って歌っていたんです。みんなが緊張して真剣な顔をしているのに、千怜だけがずっとニコニコしていて(笑)。あれは印象的でした。今はあの時と一緒ですよね」

 緊張する場面でも笑顔を続ける理由は、雄士さんから「ミスをしても笑ってプレーしなさい」と言われてきたこともある。ただ、この日は「私はファンの皆さんがいるだけでゴルフの内容が変わるタイプですし、見られている方が好きです。好きなことを一生懸命やって、皆さんに見てもらえるのは楽しいです」とも言った。人前に立ち表現することが好き。緊張はするけど、「楽しい」から笑顔になれるというマインドだ。

 岩井はスピーチで、大会関係者に感謝の意を示した後、「なかなか会えない(母方の)祖母と伯父の前で優勝できてうれしいです」と、79歳の祖母・愛子さん、52歳の伯父・秀司さんが応援に駆け付けていたことも明かした。高齢で足腰が弱っている愛子さんだが、優勝が決まった瞬間は立ち上がったという。そして、恵美子さんは「スピーチで私の母と兄のことに触れてくれた時は、ちょっとウルッときました」と、孝行娘に感謝した。

 シーズン前は明愛とともにツアー最終予選会(QT)を失敗し、前半戦の序盤は主催者推薦で出場しても予選を通過するのが精いっぱいだった。だが、6月のリシャール・ミル ヨネックスレディスで2位を契機に急成長。そして、日に日に人としても大きくなっている。2連勝で、メルセデス・ランキングは一気に浮上。この勢いで「年間トップを目指すか」の問いには、「まだ、そんな実力はないので考えていません」と返した。

 謙虚さも忘れない20歳。注目度はさらに高まるが、今後もそれを楽しみつつ、笑顔でプレーすることは間違いない。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)