海外のテニスアカデミー、いろいろあるけれど、どのように選ぶ!?ジュニアがプロテニスプレーヤーを目指す場合、国内だけでなく海外に目を向けることはあるだろう。著名なテニスアカデミーは日本から遠いアメリカ…

海外のテニスアカデミー、
いろいろあるけれど、どのように選ぶ!?

ジュニアがプロテニスプレーヤーを目指す場合、国内だけでなく海外に目を向けることはあるだろう。著名なテニスアカデミーは日本から遠いアメリカやヨーロッパにあることがほとんどで、どのような基準で選べばいいか、迷うケースも少なくない。そこで今回は、海外のテニスアカデミーを選ぶ際に気をつけたいポイントを紹介する。

【画像】JCフェレーロ・アカデミーって、こんなところ! 施設内の様子を紹介

参考にした海外のテニスアカデミーは全部で15

テニスアカデミーを選ぶポイントについては、筆者が実際に訪れたアカデミー、オンラインでのトライアウトのプロセスを体験したアカデミー、またトレーニングや費用などについて問い合わせをしたアカデミーを参考にした。

<見学した、あるいは実際に練習に参加したアカデミー>
・JCフェレーロEqualiteスポーツ・アカデミー(スペイン)
・バルセロナ・テニス・アカデミー(スペイン)
・ウマグ・テニス・アカデミー(クロアチア)
・40(15スポーツ・クラブ(スペイン)
・4スラム・テニス・アカデミー(スペイン)
・ドブロブニク・テニス・アカデミー(クロアチア)

<オンラインでのトライアウトを経験したアカデミー>
ラファ・ナダル・アカデミー(スペイン)

<詳細な問い合わせをしたアカデミー>
・リュビチッチ・テニス・アカデミー(クロアチア)
・ムラトグルー・テニス・アカデミー(フランス)
・BTTテニス・アカデミー(スペイン)
・キム・クリスターズ・アカデミー(ベルギー)
・ジュスティーヌ・エナン・アカデミー(ベルギー)
・ノバク・テニス・センター(セルビア)
・ティプサレビッチ・テニス・アカデミー(セルビア)
・グッド・トゥ・グレート・テニス・アカデミー(スウェーデン)

<海外テニスに関する情報を提供しているエージェント>
ミッション・エリート・パフォーマンス(カナダ)

海外のアカデミーで練習・トレーニングを
受ける際にチェックするべきこと

●連絡のやりとりがスムーズかどうか
日本ほどきめ細かい対応を期待してはいけないのだが、最初のメールに対する返事がこない場合は要注意だ。そもそも新しい選手をとろうとしていないか、あるいは担当者がいい加減な可能性が考えられ、後からトラブルになりかねない。

一方、夏休み前はアカデミー側も問い合わせが多く忙しいため、一度メールがこなかったとしても2回くらいは問い合わせてみてもいいだろう。メールより電話のほうが話は早いが、電話で話したのにその後、音沙汰なしという場合もあった(セルビアのティプサレビッチテニスアカデミーがそうだった)。

●費用は適正か
テニスアカデミーでは優秀な選手にはスカラーシップ(奨学金)を出し、無料で練習を受けさせることは少なくない。その分、低年齢の選手やまだ結果が出ていない選手から多くの費用をとる仕組みだ。優秀な選手を育てて価値を高めていきたいアカデミー側にとっては、このシステムはある程度、仕方のないことだと言える。

とはいえ、他と比較してあまりに高額な費用を要求される場合は考え直したほうがいいかもしれない。お金を出せばその分よい練習・トレーニングを受けられるとは限らない。アカデミー側が力を入れる選手は、無料でトレーニングをしている選手なのだということを覚えておきたい。

●アカデミーの哲学をつくった創設者が実際に教えているか
実際にプロとして活躍した選手によって創設されているアカデミーは多い。創設した元プロ選手たちはしっかりとした哲学を持ち、それを次世代に伝えるという使命を持ってアカデミーの運営を開始したはずだ。とはいえ、それが永遠に続くかどうかはアカデミーによって異なる。特に創設者が実際にはアカデミーにおらず、選手を教えていないとなると要注意だ。

創設者がアカデミーで教えていなかったとしても、コーチ陣の態度を見ればその哲学が受け継がれているかが分かる。決められたカリキュラムだけを行い、個々の個性や強みをまったく考えていないようなコーチのもとでは、選手の芽が摘まれてしまうだろう。

●コーチと親が対等な関係を築けそうか
親がコーチに意見ができないような環境は健康的だと言えない。「××とは打たせるな」「もっと高いレベルのグループに入れろ」などと言う親は当然、問題外だが、すべての試合を見て子どものプレーを一番よく知っているのは親だ。特に低年齢ではそうだろう。そんな親が感じていることを真剣に受けとらないコートは、いいコーチとは言えない。

親とコーチがある程度対等な関係を築けるかどうかは、テニスアカデミーで子どもが本当に上達し、成長できるかどうかに直結すると考えている。その分、親もコーチに対するリスペクトが不可欠だ。自然な形で互いの意見を尊重できる関係が望ましい。

●他の選手の様子は? イジメはないかチェック
ヨーロッパ人の中には、アジア人に馴染みのない選手もいる。実際、筆者の子どもは名前を馬鹿にされ、コーチから名前を呼ばれるたびに周囲から笑われるということがあった。しかしその時、年齢の高い選手が「いい名前だと思うよ」と言ってくれたことで、本人は救われたようだ。

このようなケースはいくらでもある。ただ、あまりに陰湿なイジメなどが存在するアカデミーは、そもそもいいアカデミーではない、またはコート外で選手を野放しにしている可能性が高い。特に14歳以下の選手をアカデミーに行かせる場合は、このような点について親も十分チェックしておきたいポイントだ。

またアカデミーによっては、はじめから選手間の問題には一切、関与しない、と親に伝えるところもあるようだ。

●ビジネスとしてではなく情熱があるか
いいアカデミーは当然ビジネスとして成功していく。そこで、ビジネス路線にいくか、あるいは小規模にとどまり一人ひとりをしっかり育てていくかは、アカデミーの方針によって異なる。

例えば、「ムラトグルー・テニス・アカデミー」はビジネスとしても成功しているが、その中で特に目をかけて育てている選手においては、小規模のアカデミーと同様に個別にカスタマイズした練習・トレーニングを素晴らしい環境において提供している。これは、ビジネスと切り離された小さなアカデミーが内部に存在しているようなものだ。

どのアカデミーにおいても、練習・トレーニングを受ける選手がしっかり目をかけてもらえるかどうかが大切だ。アカデミーのビジネスを繁栄させるために行くのでは意味がなくなってしまう。

●大会に参加しやすい立地か
ヨーロッパの中でも、立地は非常に重要だ。簡単に車で移動できる立地は選手たちにとって大切な要素だ。「ラファ・ナダル・アカデミー」は素晴らしい施設を提供しているが、スペイン本土から少し離れたマヨルカ島にあるため、他の地域で行われる試合に出場するにはたとえ国内であっても飛行機に乗る必要が出てくる。

このあたりは、アカデミー側のサポート体制をよく確認し、自身の予算を元にした計画をしっかり立てておくことが大切だ。筆者の知人は、息子が「ムラトグルー・テニス・アカデミー」に所属しており、国外遠征に連れていくために夏場はフランスに滞在する、と言っていた。「ムラトグルー・テニス・アカデミー」では、各学年におけるトップ選手しかコーチによる国外への帯同を行っていない。

●気候
どんな地域も夏は問題ないが、冬になると極寒になる地域がある。セルビアなどはその一例だ。テニスはどうしてもコートで練習することが必要になるので、冬の期間にどのような練習ができるのかという点についても、十分に調べておきたい。雪が降る地域においては、屋内コートがあるかどうかが重要になるだろう。

●近隣にしっかりした医療を受けられる施設があるか
何かあった時、しっかりと医療を受けられるかどうかは調べておきたいポイントだ。大規模なアカデミーにおいては、アカデミー内にクリニックが併設されているので安心だ。さらに高いレベルの医療が必要となった場合は、移送を含め適切な措置をアカデミー側が用意している。

一方、小規模なアカデミーにおいては、何かあった場合の医療を前もって調べておいたほうが安心だ。アカデミーに滞在している選手は当然アカデミー側が世話をしてくれるが、どんなレベルで何をしてくれるかはアカデミーによるところが大きい。健康面は大切なことなので、アカデミー側ともしっかり確認しておきたい。

アカデミーの名前で選ばないことが大切。
アカデミーでの経験が日本ではできないことかどうかを確認しよう

有名アカデミーには有名になった理由がある。トップ選手を数多く輩出していたり、大学への進学が有利だったり、また施設が充実していることも多い。とはいえ有名アカデミーであっても、力を入れて育てられる選手は一握りだ。大勢の中の一人として扱われるのであれば、日本にいて、よいコーチにしっかり教わるほうが選手として成長することも当然ありうる。

海外のアカデミーに行くのであれば、選手が本当に成長できるのかどうかをしっかり見極めたい。そして、日本で活動するメリットと客観的に比較したうえで、選手に合った形に練習・トレーニングをカスタマイズしていくのが理想と言えるだろう。