前橋育英高サッカー部・山田監督「『馬鹿じゃないか』と言われた」 周囲から呆れられても必要性を訴え続けた結果、今では常識に…

前橋育英高サッカー部・山田監督「『馬鹿じゃないか』と言われた」

 周囲から呆れられても必要性を訴え続けた結果、今では常識になっている。サッカーの名門・前橋育英高を率いる山田耕介監督は、高校サッカー界にリーグ戦を導入した中心人物だ。First-Pitch編集部がサッカーの有識者への取材から野球界の課題解決のヒントを探す連載。今回は「リーグ戦」の意義を考える。

 高校サッカーではインターハイや高校サッカー選手権のようなトーナメントの大会と並行して、プレミアリーグ、プリンスリーグ、県リーグといったリーグ戦が実施されている。

 高校サッカーのリーグ戦が始まったのは1997年。山田監督が指揮する群馬・前橋育英高の他、千葉・市立船橋高や神奈川・桐光学園高などが加盟する「関東スーパーリーグ」が発足した。今でこそリーグ戦は定着しているが、当時は賛同を得るのが難しかったと山田監督は振り返る。

「日本のサッカー界のためになると訴えましたが、周りからは『馬鹿じゃないか』と言われました。色んなところを回って頭を下げました。世界で活躍する選手を育てるために一緒に頑張っていこうという話だったのですが、なかなか伝わりませんでした」

「選手たちは駆け引きを覚えて、考える力が養われる」

 山田監督は7月に全国高校総体(インターハイ)で3度目の優勝を果たし、高校サッカー選手権でもチームを頂点に導いている。トーナメントを否定しているわけでも、各団体と“喧嘩”するつもりもなかった。ただ、日本サッカーの将来を考えれば、強豪国では一般的なリーグ戦が不可欠だと考えていた。構想から数年かけ、理解を得られた高校と協力してスタート。その動きはすぐに全国へ広がった。

「ワールドカップでも予選はリーグ戦です。リーグを突破するためには引き分けでもいい試合、絶対に負けられない試合、点差をつけて勝たなければいけない試合と様々なケースがあります。状況に応じた戦い方はリーグ戦でしか学べません。日本代表がワールドカップで上に進めない理由も、そこにあると感じていました」

 リーグ戦は全試合のトータルを考えて、それぞれの試合を戦う。山田監督は「高校のリーグ戦はホームとアウェー、同じ相手と2度戦います。一度負けても、やり返すチャンスがあります。選手たちは駆け引きを覚えて、考える力が養われます。スポーツは考える力がなければ成長できません」とメリットを説明する。

多くの選手が出場機会を得てチーム内競争が活発化する好循環

 選手の出場機会が多いのもリーグ戦の特徴だ。前橋育英高サッカー部は各学年に約50人の部員がいる。負けたら終わりのトーナメントであれば絶対的な試合数が少ないことに加えて、試合に出場するメンバーは固定されやすい。3年間、一度もピッチに立たず引退する可能性もある。

 だが、プレミアリーグに所属する前橋育英高は4月から8か月間、ほぼ毎週試合が組まれている。大半の選手が公式戦に出場する機会を得られる。山田監督は「試合数が多いので、次の試合に向けて平日は高いモチベーションを持って練習できます」と話す。

 チームはトップを頂点に6つのカテゴリーに分けられており、各カテゴリーに指導者がいる。選手たちは試合でアピールする機会が多いため、それぞれのカテゴリーのメンバーは活発に入れ替わる。結果的にチーム内競争が激しくなり、個々のパフォーマンスもチーム力も上がっていく。

 高校野球でも、リーグ戦の動きは広がり始めている。2015年に大阪で「Liga Agresiva」が設立され、今では新潟・日本文理高のように、トーナメントとリーグ戦を並行する甲子園常連校もある。「誰かがきっかけを作って、認める人が出てくると、協力者が増えて動きが加速します」と山田監督。世界で活躍する日本選手が増え、日本がワールドカップなどの国際大会で結果を残せるようになってきたのは、25年前に決断したリーグ戦導入と無関係ではないだろう。(間淳 / Jun Aida)