ウエイトリフティング部主将・宮下一心(社4=石川・金沢学院)とボクシング部主将・伊藤礼副将(スポ3=新潟南)。一見する…

 ウエイトリフティング部主将・宮下一心(社4=石川・金沢学院)とボクシング部主将・伊藤礼副将(スポ3=新潟南)。一見すると接点がないように思われる両競技。実際対談に参加した二人も互いに面識はなかった。しかし、いざ対談を始めると共通点も多く見つかり、和やかな雰囲気で行われた。二人が考える大学スポーツ、そして「早稲田スポーツ」の良さとは。
 ※この取材は5月19日に行われました。

――お互いの練習を見る機会はありますか

伊藤 地下2階で練習していますよね? 部室のすぐ近くなのでたまにちらっと見ます。

宮下 自分はボクシングそのものを見たことはありませんが、先ほどおっしゃった通り、近い場所で練習しているので親近感はありますね。

――実際、体育会の部を超えた交流はあるのでしょうか

伊藤 それはあまりないですね。でもレスリング部は同じフロアで練習しているので、たまに知り合いと話します。

宮下 自分は入ってはいないのですが、体育会全体の寮があって。特にスポーツ科学部の部員など、そこに入っている人同士は結構交流があるようです。

――相手に自分の競技を見に来てもらうとして、どんなところがその競技の面白さだと思いますか

伊藤 やはりパンチですかね。見ているとすごく楽しいと思います。

宮下 ウエイトリフティングはボクシングとは違って対人スポーツではないですし、競技時間も短いのですが、だからこそその持ち上げる瞬間、その一瞬の集中力や緊張感は他の競技にはないものだと思います。瞬間を、固唾(かたず)をのんで見守る、というようなところに面白さがあると思います。

――では、相手の部活にどのようなイメージを持っていますか

伊藤 ウエイトリフティング部さんは「筋肉ムキムキ」ですね(笑)。ウエイトリフティング部員さんが指導してくれる授業があったのですが、みんな下半身もムキムキしていてすごいな、と思いました。

――なんという授業でしょうか

伊藤 「レジスタンストレーニング」です。筋トレなどを扱うものなのですが、その授業に来てくれました。

――宮下選手はその授業に参加されていましたか

宮下 自分は参加してないですね。でも今の部員でも参加している人はいます。

――ボクシングでウエートトレーニングを意識することは

宮下 体重制限もありますし、素早い動きができなくなることもあるので、ボクシングではそこまでウエートトレーニングは意識しませんね。各自で軽く筋トレすることがあるくらいです。

――では宮下選手はボクシング部に対してどのようなイメージを持っていますか

宮下 しっかり練習風景を見たことはないのですが、近くを通った時に、打ち合っている音とか、熱気とかがすごく伝わってきます。練習に注ぎ込む熱量が大きいなというイメージです。


部について語る伊藤

――自分の部活の面白いところはどんなところだと思いますか

伊藤 やっぱりパンチですかね。ストレス発散にもなりますし、楽しいです。いかに相手のパンチに当たらないようにしながら自分のパンチを当てるかといった駆け引きは、実際にプレーしてみないと分からない楽しさだと思います。

宮下 ウエイトリフティングは基本的にずっと同じバーベルを扱う競技ですが、自分の成長を、目に見える「記録」の伸びを通して実感できるので面白いです。逆に言うと記録が伸びた時にしか実感するタイミングがないので、いかにしてモチベーションを保つかが大事なんです。練習メニューに幅を持たせて工夫をし、そこに楽しさを見出していかないと続けることはできない競技だと思いますね。

――ボクシングで成長を感じるのはどのような時ですか

伊藤 実践的なスパーリングをする時に、毎回そのビデオを撮るんです。自分なりにこれができているとか、まだできていないとか、その映像を振り返る時に成長を感じますね。あとは試合で勝てた時とか、良い動きができた時に、その瞬間も成長を感じますが、その後映像で見た時も同じように成長を感じます。

――早慶戦はどのような特色がありますか

宮下 うちの部は、早慶戦での連勝記録が他の部と比べて1番長いので、自分たちももちろんそうですが、OBさんたちも「この連勝記録を絶対に止めてはいけない」と意識しています。だからかなり大事な大会の一つという位置付けになっていますね。

――今何連勝されていますか

宮下 50中盤くらいです。

――どのように勝敗は決まるのですか

宮下 基本的には出場できる選手の数が決まっています。そして各階級の1位、2位にそれぞれ点数がついて、それの合計点数が高い方の勝ちという感じです。

――ボクシング部の早慶戦はどのような特色がありますか

伊藤 僕たちは逆で、連敗しています。それをなんとか断ち切る気持ちで臨んでいて、部としても一番気合いが入る大会です。モチベーションも高くなりますし、早慶戦前の練習は結構ピリピリしています。

――お互いの部に聞いてみたいことはありますか

伊藤 ウエイトリフティング部さんには、初心者、というか大学から競技を始める選手はいるのでしょうか。

宮下 いないことはありませんが、割と少数ですね。逆に言うと、ほとんどの人が高校生から競技を始めます。9割以上は高校生からですね。

伊藤 大学入学のための推薦はあるんですか。

宮下 普通の体育各部と一緒の扱いの、スポーツ推薦の枠はあります。

伊藤 僕たちは(スポーツ)推薦制度がないんです。自己推薦を使って入部してもらうしかなくて。大会でいい成績を取っている人を見つけて声を掛ける感じですね。それができるようになったのも最近なのですが…。もちろんそれで全員が合格できるわけでもないですし。だから、部内にボクシングの経験者は少ないですね。あとは一般入試で入学してきた人が入部する感じです。部員集めは非常に苦しいです(笑)。

宮下 状況的にはうちの部も同じですね。自己推薦入試に関しても、(合格者)枠自体がだいぶ少なくなってしまっていて。全国大会で結果を残しているレベルの子でも推薦で入学できない状況ではありますね。

伊藤 そもそもボクシング部がある高校が珍しくて。大学で早稲田を目指そうとする人自体が少ない状況ではありますね。ウエイトリフティング部さんはどうでしょうか。

宮下 自分の出身の高校も大学進学を目指す人は少なかったですね…。それに、私自身も自己推薦入試で早稲田に入学したのですが、その頃と比べて今は(合格)基準がぐんと上がってしまっていると感じています。

伊藤 ウエイトリフティング部さんには大学対抗のリーグ戦はありますか。

宮下 全国規模の大学対抗戦はありますね。

伊藤 大会実績はどのような感じなのですか。

宮下 去年は女子が優勝で、男子は3位でした。

伊藤 それは団体としてということですか。

宮下 そうですね。団体です。

伊藤 すごいですね(笑)。結構長い間強い感じでしょうか。

宮下 女子がずっと強いですね。男子はまだ優勝はできていません。そもそも私たちが「体育会」のウエイトリフティング「部」に昇格できたのは、OBの方が五輪に出場したからという理由であり、特例だったんです。元々は大学対抗戦で優勝するなどの実績があって初めて体育会に所属できるものですので。特例で昇格させてもらったからには、早く男子も優勝しなくては、という雰囲気が部内にはあります。ボクシング部さんにも大学同士のリーグ戦があるのでしょうか。

伊藤 そうですね。関東と関西にそれぞれのボクシングリーグがあります。関東だと30弱くらいの大学数ですね。それなりに競争率も高いのですが、頑張っています。

宮下 ウエイトリフティングは基本的には私立の大学が、1部と2部を合わせて全国で20あるかないかくらいの部数です。7月くらいに東日本と西日本別でインカレ(東日本大学対抗選手権、西日本学生選手権)があり、年末くらいに全国規模で試合があります。

伊藤 何人くらい試合に出場できるのでしょうか。

宮下 10人です。各階級に2人まで出場できて、大学全体では合計10人までです。ですので、他の大学の階級の偏りがどれくらいあるかを調べ、それを考慮して点数が取れそうなところに階級移動して団体で戦います。

伊藤 なるほど。難しいですね。

宮下 ボクシング部さんはどのような感じなのでしょうか。

伊藤 ボクシングも階級制で、3部リーグは全部で5階級あります。1部、2部リーグになると(階級が)もう少し増えます。現在私たちは3部リーグなので5階級で、5人が出場しています。

――ウエイトリフティングもボクシングも階級制ということですが、体重の減量や増量において大変なことはありますか

伊藤 減量が大変ですね。ボクシングは運動量が多いにもかかわらず、ご飯を食べることができないので。水を飲む量を制限しなくてはいけない時もあります。僕自身ついこの間まで減量をしていたのですが、とてもとてもきつかったです。

宮下 ボクシングの計量って試合当日ですか? 

伊藤 当日ですね。試合の3時間前です。

宮下 じゃああまりウエイトリフティング部と変わらないですね。僕たちの計量も2時間前なので、計量してから試合までの間に回復させることができないんです。だから、いかに上手に減量するかが大事で。「きつい」という程まで減量すると、記録に影響が出てしまいます。パフォーマンスに悪影響が出ないように、筋力を保ったまま、スケジュールを立てて計画的に減量していくことが大変です。

――ちなみに競技を社会人になってからも続けられる意思はありますか

伊藤 ジムで軽くするくらいを考えています。体を動かす一環としてやろうかなと。

宮下 自分はどういうかたちになるかは未定ですが、競技に関わる仕事はしていきたいです。どれくらい練習できるかも分かりませんが、社会人になっても試合に出場したいなとも思っています。


丁寧に話す宮下

――大学スポーツの価値は

宮下 最近だとほとんどの人が大学まで行くじゃないですか。だからプロスポーツと違って大学スポーツは実際に今の若い子が自分の将来像として、割と近いところにイメージできる存在だと思います。そこで学業と両立しながら、スポーツという華々しい姿や、輝いている姿を見せることは今の若い子や親御さんに、より身近にスポーツを感じてもらうということにつながるかな、というのは感じますね。

伊藤 プロスポーツだと、スポンサーがいたりとか、自分の生活が懸かってきたりとかで、競技だけじゃなくて、いろいろなことを考えないといけないじゃないですか。でも大学スポーツは、競技に専念できる、青春という感じ。それがやはり大学スポーツの良いところだと思います。そういうのって大学までで、社会人になったら、スポーツに真剣に向き合うということはなかなか経験できないと思うんです。「最後の」という面があるところも大学スポーツの良さだと思います。

――早稲田スポーツの良さとは

宮下 早稲田スポーツはもちろんですが、早稲田大学そのものの校風が自由で、学生もたくさんいて、多種多様な人たちが集まっていて、自分の部活も全国から部員が集まっているという環境でスポーツに取り組めるということが、高校までの部活動と違う、「早稲田」の良さだと思っています。そんな環境だと成長ができるかなと思って入りましたね。

伊藤 しっかりしていますね(笑)。早稲田は歴史が長いですし、学校自体も有名でブランドがあって、その中で自分の好きなことができるというのは自分にとって良い経験になると思っています。また、人がいっぱいいるので、そこでいろいろな出会いもあるし、たくさんの人と交流できるというのが良いところかなと思います。

――ありがとうございました! 

(取材・写真・編集 池上楓佳、永留琴子、加藤志保)


◆伊藤礼(いとう・らい)(※写真左)
 新潟南高出身。スポーツ科学部3年。ボクシング部副将。質問には冷静に答えていた伊藤選手だが、ボクシングを始めたきっかけを聞くと、「ドラゴンボールやワンピースの延長上で始めた」と笑顔で語った。部員数が少ないボクシング部を、副将としてチームを成績でも引っ張っている

◆宮下一心(みやした・いっしん)
 石川・金沢学院高出身。社会科学部4年。ウエイトリフティング部主将。かつては柔道をしていた宮下選手。対人スポーツから一転し、バーベルと向き合う競技に出会い、人に勝つだけでなく自分自身に勝つ点がウエイトリフティングの魅力だと語る。穏やかで優しい印象だが、競技と部員への愛はかなり深い