「自分の手の届く範囲の人に競技を続けてもらう」。男子ハンドボール部の永橋優太朗主将(スポ4=千葉・市川)と男子ソフトボ…

 「自分の手の届く範囲の人に競技を続けてもらう」。男子ハンドボール部の永橋優太朗主将(スポ4=千葉・市川)と男子ソフトボール部の尾松大輝主将(政経4=大阪・清風南海)はそのように口をそろえた。知名度はありながらも、競技人口はそれほど多くない両競技。主将の2人が、それぞれの競技の面白さや大学スポーツの魅力などを語った。
 ※この取材は6月8日に行われました。

――自己紹介をお願いします

尾松 ソフトボール部主将の尾松と申します。自分は小学校1年生からソフトボールを始めて、その後、中高大とずっとソフトボールをやっているので、大体15年くらいですかね。なかなかない経歴だとは思います。

永橋 男子ハンドボール部の主将を務めています、永橋優太朗と申します。スポーツ歴のお話があったのでそこについて話すと、小学校の間はいろいろなスポーツに手あたり次第手を出していました。中学校に入学したときにサッカーをやろうと思ったのですが、何があったかハンドボールに(笑)。

尾松 何があったか(笑)。

永橋 ハンドの部活体験に1回行ったら、逃げられなかったんですよね(笑)。やっぱりマイナー競技なので、仮入部したら絶対入部みたいな。ホームルームが終わったらもう(教室の前で)先輩が待っているんですよ。「今日も行くぞ」みたいに言われて、「はい」って(笑)。サッカー部の体験には行けず、そのままハンドボール部に入部しました。

一同 (笑)。

――相手の競技を見たりプレーしたりしたことはありますか

尾松 ハンドボールは見たことないですね。身体測定のハンドボール投げで投げたことがあるくらい(笑)。

永橋 僕は、オリンピックの女子ソフトをテレビで見ていました。上野由岐子選手がとにかくすごいんだなと思いながら見ていて。あと、健志(田井健志、スポ3=香川中央)がソフトボール上がりで、(ハンドボールの)2号球ならソフトボールみたいに投げられるので、ぱーんとかやって遊んでいるのを見るくらいです(笑)。

――相手に自分の競技を見てもらうとして、魅力はなんですか

尾松 男子ソフトボールは、塁間が短くて女子と同じ距離を男子が走るので、スピード感があるかなと思います。内野ゴロを打ったら普通はアウトじゃないですか。でも、セーフになる確率が野球より高いんです。狙って内野安打を打つとか。そのワンプレーが終わるまでが2・何秒とかで。そういうスピード感は面白いかなと思います。

永橋 面白いですね。ハンドボールは、いろいろなスポーツの要素が入っているんですよ。3歩しか歩いちゃ駄目ってルールはバスケっぽいし、走って跳んで投げて、ぶつかるのもOKなんです。結構荒々しいプレーも多くて、初めて見ると「それいいの?」みたいな結構びっくりするようなプレーが多いと思います。ぶつかり合う音とか、球速とか。松ヤニを付けるので、結構とんでもない速さでボールが飛んできます。新鮮な競技で面白いので、見に来てもらいたいなと思います。


ソフトボール部の特徴について語る尾松

――自分の部の特有だなと思うところはありますか

尾松 授業優先を掲げているところです。吉村先生(吉村正総監督、昭45年教卒=京都・平安)からの教えなのですが、1人の部員である以前に1人の学生ということを1年生の頃からずっと言われていました。やっぱり何をしに大学に来ているのか、この先ソフトボールでご飯を食べていけないでしょというところで。ソフトボールをするために大学に来ているわけじゃないんだから、人間力を鍛えろというところはよく言われています。ハンド部は授業優先とかはありますか。

永橋 基本はそうなのですが、1、2年生の時は部活を優先していましたね。

尾松 授業と大会がかぶったときとかは?

永橋 僕らは絶対大会でしたね。

尾松 他にソフト部特有のところで言うと、底辺拡大のためにティーボールという競技を支援しています。というのも、吉村先生が、野球・ソフトボールの人口が減っているということで、簡単な野球・ソフトボールを作ろうと。もっと柔らかいボールで、もっと楽しんでもらえるような競技を始めようということです。ティー台にボールを置いた状態からプレーするんです。

永橋 僕それやったことあります。

尾松 それをひたすら手伝っているという感じです。所沢のグラウンドで大会を開いたり、西武ドーム(ベルーナドーム)でやる全国大会の手伝いをしたり、そういう経験っていうのは他の部にはないんじゃないんかなって。

永橋 そういう良いこと言われてしまうとなあ、困ってしまいますね(笑)。

一同 (笑)。

永橋 中高と全然違うなと思うことは、中高の時は先生が毎日いて先生に指導されて怒られながらやるのが普通だったのですが、大学に入って、そもそも監督が口を出さない、大会のときにしか来ないとか。タイムアウトを出しに試合に来るみたいな(笑)。そこまでは言い過ぎかもしれないですが、極端に言うとそんな感じで。だから、どういうチームにしていくか、どうやって勝っていくかを自分たち中心に考えていくんです。そういった全てのスケジュールを自分たちで組んで、全国優勝を目指すチームなのに、指導者に頼らずに自分たちでやっていくというのは面白いところかなと思います。

尾松 自分たちもどちらかというとそういう傾向はあると思います。監督が社会人の方で土日しか来ないので、それ以外は学生中心というところは似ているかなと思います。基本的には僕らの意見尊重というか、どう考えているかをしっかり伝えれば、それでいいんじゃないかという方針です。

――冒頭でも少しお話がありましたが、それぞれなぜハンドボール、ソフトボールを始めましたか

永橋 さっきお話した通り、先輩が怖くてというのもあったんですよ(笑)。でも、実際ハンドボールを体験しに行ったらめちゃくちゃ楽しかったんです。入ったあとはもう、「ミスったな」って思うこともありました(笑)。でもその体験入部の時はすごく楽しかったんです。松ヤニを初めて触って、楽しいなと思いながらボールを投げて。あともう一つの要因としては、学校で一番強かったんです。「県大会に出られるよ」って言われて、県大会の常連ってすごいなと思ったのと、どうせやるなら強いところで頑張りたいなと思って。

尾松 自分は基本的には父親の影響が大きいです。父親が野球をやっていたので、地元の元々あった子供会に入って、そこがソフトボールチームだったんです。そこで6年間楽しんでやってから中学に入りました。中学では、「男ならソフトじゃなくて野球だろ」みたいな感じで、「よし野球をやろう」と思って入学したのですが、探してみたら野球部が無かったんです。

永橋 そんな学校あるんですね。

尾松 まじか、と思って、見ていったらソフトボール部はあったので入りました。そんなに強くはなかったのですが、結構楽しかったので、大学でもソフトをやろうということで早稲田でもソフト部に入ったという感じです。

――どちらも比較的競技人口が少ない競技ですが、良かったことはありますか

永橋 簡単に県大会に出られることです(笑)。

一同 (笑)。

永橋 まあ簡単に出られるっていうのは変な話ですけど、出ようと思えば出られると思います。野球なんかで甲子園に出ようと思ったら、何回勝たなきゃいけないんだっていう(笑)。

尾松 自分も一緒ですね。市大会すらなくて、いきなり県大会みたいな。県によっては1個しかチームが無くて、自動全国大会みたいな(笑)。

――部として、個人として、競技人口を増やすためにできることはあると思いますか

永橋 競技人口という意味では、高校から大学に上がると、大学でやろうと思う人は減るんです。高校まではやっていたけど、大学ではやらないという人が結構いて。僕は母校とかに行ったら自分の受験形式とかを教えたり、この大学に行ったらいいんじゃない、って言ってみたり。自分にできることは、自分の手の届く範囲の人に続けてもらうっていうことかなと思います。

尾松 自分も同じ考えです。地元の小学校に指導しに行くとか、話しに行くとかで、続けてくれる人が少しでも増えると思うので。あとは自分がソフトボールを必死に楽しくやっているところを見てもらったり伝えたりすることで、自分が届く範囲ではありますが、ソフトボールの人気拡大みたいなところにはつながるかなと思います。あとは、ティーボールとかで底辺を拡大していくのがいいのかなと思います。ソフトボールの知名度はあると思うので、あとはプレーする人がどれだけいるかというところです。小学校低学年もしくはご高齢の方もできるので、そういう意味でティーボールを広めていきたいなというところが個人的な意見ではあります。

――ハンド部ではSNSで試合情報等をこまめに発信していますが、どういった意図がありますか

永橋 単純に見てもらいたいというのがあります。見てもらって面白いなと思ってもらえたら、初心者の人でもマネジャーやトレーナーとして入ってくれる人もいるので、僕らのことを知ってもらう、知ってもらって入ってもらう。それが多分僕らの強化につながるので、力を入れているかなと思います。

尾松  自分たちは、最近ちょっとSNSに力を入れているかなという感じです。基本的には試合が終わったときにこんな試合でしたというのを発表するくらいですかね。新歓的な意味合いももちろんあるのですが、もう一つはOBの方たちに報告するという意味があります。OB会から支援をしていただいたり、応援してくださったりしているので、そういった意味での報告も兼ねてということです。

――新歓活動においてはどのようなことをアピールして行っていますか

尾松 まずは授業優先というところは絶対に伝えるようにしています。大学に入ったんだから、勉強をちゃんとやろうというところは部の方針としてあります。あとは、全国を狙うチームではあるのですが、オンオフの切り替えはしっかりしようというところです。グラウンドに入れば全員ライバルでもあるのですが、グラウンドを離れてしまえば仲間なので。一定のラインはありますが、上下関係はそこまで厳しくないよということは言うようにしています。先輩後輩以上に仲間ということを大切にしてるよということを伝えています。

――競技自体というよりは、どちらかと言えば部の雰囲気を伝えているということでしょうか

尾松 そうですね、競技的なところをいくら言っても言葉では伝わらなくて、体験してもらうのが1番簡単なので。伝えられるところは雰囲気とか方針とかかなと思っています。

――改めてお互いに聞きたいことはありますか

永橋 実際にソフトボールを見る機会ってどこにあるのかなと思いました。女子ソフトボールも、オリンピックみたいな世界大会になると突然テレビで大々的にやると思うのですが、それ以外で見たことがなくて。一番有名な上野選手がどういうチームにいるのかも知らないですし。男子ソフトともなると余計に。

尾松 女子ソフトは、ネット中継とかをやっています。男子は、日本リーグがあって、ネット中継はしていないと思うのですが、YouTubeチャンネルをやっているチームもあります。平林金属というチームなのですが、試合の解説動画などを上げています。YouTubeチャンネルを持つチームは増えてきているので、そこでハイライト動画は解説付きで見られると思います。そのあたりは面白いと思います。


早慶戦について語る永橋

――両部活とも早慶戦があると思うのですが、部の中での早慶戦の位置付けを教えてください

永橋 僕らは早慶戦が引退試合なんですよ。インカレ(全日本学生選手権)で2位以上になると日本選手権に出るのでそうなると少し変わってくるのですが、インカレが終わって11月末に早慶戦があってそこが僕らの引退試合という感じです。だから早慶戦は、4年生を送り出す試合です。もちろん全力で勝負をするのですが、お祭り的な、4年生に楽しく終わってもらうために頑張るという感じです。

尾松 自分たちはインカレが9月にあってそれで引退なので、新チームになって秋リーグの中でやるものです。11月、12月なので、特に意味合いみたいなものはないのですが、これまで1回しか負けていないので、基本的には勝ちにいくというところですね。どちらかというと、伝統という部分を大切にしている感じはあります。早稲田と慶応という特別な関係性がありますし。あとは早慶戦以外にも早学戦という学習院との試合があって、吉村先生が大学ソフトを作ってこられた中で、一緒にやってきた大学というところで縁があるので、そこはきっちりやりましょうという感じです。

永橋 慶応以外の大学だと、早関戦という関西学院大学との試合があります。早慶戦ではなく、早慶明戦という明治も合わせて3校で戦うものもあります。早慶戦だけではなくて、そういったところの伝統やつながりは大切にしたいなと思います。

――プロスポーツでもなく、中学高校でもなく、大学スポーツにはどのような価値があると思いますか

尾松 学生主体の部活が多いところが1番大きいかなと思います。中高だと監督から言われてそれをやるみたいな。やりきる力はつくと思うのですが、自分たちで考えて計画を立ててやっていくというところは難しいと思うので。それを1から考えて自分たちなりのこだわりを持ってやっていくというところは、すごく大事だなと思います。その辺の組織づくりとか計画性みたいなところは、大学スポーツ特有だなと思います。

永橋 同じような意見です。中高は、自分で選んで入ったとはいえ、やらされている感覚があったり、辞めたいなと思ってしまうことがあったり。もちろんうまくもなるし、人より心も体も強くなって、礼儀作法とかも中高では身に付くと思います。その経験をした上で、中高よりも部活をする人が少ない中、自ら大学で部活をすることを選ぶと、監督やコーチからやらされるのではなく能動的に動く力が身に付くので、そういったところに大学スポーツの価値はあるのかなと思います。

――早稲田スポーツの良さはどこにあると思いますか

永橋 早稲田はすごく伝統を重んじていると感じていて、それはどの部活動にも言えることだと思います。ただ、そういった昔からの慣習を大切にしている中で、進歩していて強いというところが早稲田スポーツの良さだと思っています。

尾松 同じような感覚です。規律、規範といったところを重要視しているところが強さの秘訣なのかなと思います。ソフトボールみたいなマイナースポーツだと、他の大学を見ていると、言い方が悪いのですが、ノリでやっているみたいなところもあります。その中でも早稲田は、王道をいくという、そして自分たちがそれを正しいと思って進んでいけるところにカッコよさがあると思います。クールさは無いのですが、昔の男前みたいなカッコよさがあって、それが早稲田スポーツの良さかなと思います。

――最後に、ここまで話をしてみて、相手の部に対してどのような印象を持っていますか

尾松 正直初めてハンドボール部という部について考えたのですが、日本一を目指しているだけあって、活動をする上でのこだわりみたいなものは言葉の節々から感じました。

永橋 僕は所々に出てくる人間力という言葉を聞いていて、少し上から目線にはなってしまうのですが、部活動の本来の目的を忘れていないんだなという印象を受けました。部活動って人として成長するためにやっていることで、競技だけにこだわるのではなくてそれ以外のところもしっかりやらなければならないと思うので、そういったところを大事にされている良い部活だなと感じています。

尾松 ありがとうございます(笑)。

――ありがとうございました! 


ボールを交換して笑顔を見せる尾松(左)と永橋

(取材・写真 澤崎円佳、星野有哉)

◆尾松大輝(おまつ・ひろき)(写真左)
 2000(平12)年12月5日生まれ。172センチ。大阪・清風南海高出身。政治経済学部4年。男子ソフトボール部主将。高校時代、ソフトボール一筋だった尾松選手。大学でも、部員からの「練習の鬼」という声は多い

◆永橋優太朗(ながはし・ゆうたろう)
 2000(平12)年8月5日生まれ。183センチ。千葉・市川高出身。スポーツ科学部4年。男子ハンドボール部主将。名前の通り、朗らかな笑顔が印象的な永橋選手。ハンドボール以外にもさまざまなスポーツになじみがあり、サッカー、水泳、体操、空手、相撲などの経験がある