スタメン9人中7人が左打者、宮崎、オースティン、ソトらベンチ■DeNA 3ー2 阪神(9日・横浜) セ・リーグ3位のDeNAは9日、本拠地・横浜スタジアムで行われた阪神に3-2でサヨナラ勝ち。同点で迎えた9回に、大田泰示外野手が左前適時打を…

スタメン9人中7人が左打者、宮崎、オースティン、ソトらベンチ

■DeNA 3ー2 阪神(9日・横浜)

 セ・リーグ3位のDeNAは9日、本拠地・横浜スタジアムで行われた阪神に3-2でサヨナラ勝ち。同点で迎えた9回に、大田泰示外野手が左前適時打を放ち、試合を決めた。2位の阪神に0.5ゲーム差と肉薄し、首位・ヤクルトとは9ゲーム差。首位とのゲーム差が1桁に縮まったのは、6月7日以来約2か月ぶりだ。その結果以上に、この試合で三浦大輔監督がとった戦術は、今後のDeNAの大いなる可能性を予感させた。

 テーマは“打倒・青柳”だった。DeNA打線は阪神先発の青柳晃洋投手に対し、試合前の時点で今季3戦3敗、対戦防御率3.00に抑え込まれていた。さらに言えば昨季も5戦で0勝4敗、対戦防御率1.91。足掛け2年、青柳に土をつけたことがなかった。

 そこで三浦監督は、右横手投げの青柳に対してスタメン9人中7人、左打者を並べた。右打者は守備の要でもある「2番・中堅」の桑原と、4番の牧だけ。1番に森、3番に佐野、5番に楠本、6番に戸柱、7番に宮本、8番に柴田を配し、「9番・投手」の今永まで左打者だった。

 この青柳対策は、副産物も生んだ。豪華な右の代打陣がベンチにズラリと控えることになったのである。リーグ4位の打率.312を誇る宮崎敏郎内野手は、本来怪我以外の理由でスタメンを外れる選手ではないが、三浦監督は「(青柳は)なかなかとらえるのが難しい投手ですから。何か今までとは違うことをしないといけない。思い切って途中からいってもらう決断をして、(宮崎)敏郎にも『しっかり準備をしておいてくれ』と話しました」と説明した。

 他にも、開幕直後にクリーニング手術を受けた右肘が万全でない主砲タイラー・オースティン外野手、本塁打王2度のネフタリ・ソト内野手、成長著しく今季40試合にスタメン出場している蝦名達夫外野手、そして大田らが三浦監督の手駒として残っていた。

9回に宮崎は申告敬遠も三浦監督「もちろん想定していました」

 まずは1点ビハインドで迎えた6回、1死三塁のチャンスをつかむと、オースティンが戸柱の代打として登場。打球は投手・青柳のグラブをはじき、二ゴロとなる間に同点に追いついた。

 2-2の9回には、阪神4番手の加治屋を攻めて1死二塁。三浦監督はここで満を持して宮崎を柴田の代打として起用したが、即申告敬遠で歩かされた。宮崎の使い方としてはもったいないようにも見えたが、続く今永の代打に大田。初球のフォークがワンバウンドの暴投となり、二塁走者の嶺井がヘッドスライディングで三塁を陥れる。そして2球目、大田は外角のカットボールをとらえて三遊間を破り、ナインの手洗い祝福を受けたのだった。

「(宮崎が歩かされることは)もちろん想定していました。まだ(大田)泰示もいたし、ソトもいましたから」と三浦監督。「普段(スタメンで)出ている選手たちがベンチにいて、いろいろなバリエーションで構えることができました」と会心の笑みを浮かべた。

 天敵の青柳は6回5安打2失点で降板していた。116球を投げさせて早期降板に追い込んだが、攻略したとまでは言えない。それでも、強打者を自由に使える状況で最終盤を迎えることができたことは、DeNAにとって大きなアドバンテージになった。

 これも、昨季最下位のDeNAの戦力が確実に底上げされているからこそ、可能になった策と言えるだろう。この日、7月に新型コロナウイルス陽性判定を受けた森、ソトがそろって1軍に復帰した一方で、ベテランの大和が新たに陽性判定を受け登録抹消された。とはいえ、徐々に主力の顔ぶれは揃いつつある。離脱者が多い時期に出場機会を増やし、成長を遂げた蝦名のような存在もある。実りの秋へ向け、DeNAにはミラクルを起こす要素を蓄えられている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)