できれば甲子園で見たかった──。今年もそう思わせる逸材たちが、志半ばにして地方大会で敗れ去った。 8月6日から「夏の甲…

 できれば甲子園で見たかった──。今年もそう思わせる逸材たちが、志半ばにして地方大会で敗れ去った。

 8月6日から「夏の甲子園」こと全国高校野球選手権大会が始まる。開幕を前に、惜しくも甲子園に届かなかった好選手たちを振り返っていこう。



岩手大会決勝で敗れた盛岡中央のエース・齋藤響介

花巻東を破った齋藤響介は決勝で涙

 今夏の南北海道大会はベスト4進出校すべてにプロ注目エースがいるという、大豊作の年だった。優勝したのは最速148キロ左腕の森谷大誠を擁する札幌大谷だが、他の3校にも斉藤優汰(苫小牧中央)、門別啓人(東海大札幌)、坂本拓己(知内)と押しも押されもせぬ大黒柱がいた。

 とくに斉藤は今夏にかけて注目度が急上昇していた大型右腕だ。身長188センチ、体重88キロの体躯に、ワインドアップの正統的な投球フォーム。課題だった制球難を克服し、今春の北海道大会で株を挙げた。今夏は室蘭地区予選から苦戦続きも、勝負強い投球でベスト4へ。だが、準決勝では札幌大谷に立ち上がりからつかまり、2対10で敗れ初の聖地にはたどり着けなかった。

 門別は高校生左腕らしからぬ実戦での強さ、奥尻島で生まれた坂本は馬力を生かした速球を武器にする。門別の東海大札幌は準決勝で知内に1対2で敗れ、坂本の知内は初の決勝に進出したものの2対7で敗れた。

 今夏は岩手で鮮烈なアピールを見せた速球派右腕がいる。大物2年生スラッガー・佐々木麟太郎を擁する花巻東を2失点に抑え、準決勝で勝利を収めた齋藤響介(盛岡中央)である。

 最速152キロに達した快速球とカットボール、フォークで勝負する齋藤は、佐々木に2安打を浴びたものの要所を締める投球を披露。勢いそのままに甲子園行きを決めるかに思われたが、決勝戦では試合巧者の一関学院に2対3で惜敗して甲子園には届かなかった。

甲子園に戻れなかった逸材たち

 甲子園出場経験者のなかにも、今夏に見られないのが惜しい人材がいる。

 2年時から2年連続春のセンバツを経験した速球派右腕の米田天翼(市和歌山)。今春のセンバツで花巻東・佐々木のインコースを剛速球で突き、高校野球の洗礼を浴びせた姿はインパクト抜群だった。だが、今夏は和歌山大会準々決勝で同じくセンバツ出場組のくせ者軍団・和歌山東に0対3で敗れた。とはいえ、米田は自己最速の150キロを計測し、今秋のドラフトに向けてプロ志望届を提出する予定だ。

 昨年春のセンバツで、故障したエースの穴を埋めて話題になった鈴木泰成(東海大菅生)は、西東京大会決勝で宿敵・日大三に2対6で敗れた。2年春以降は右ヒジ痛に悩まされ手術も経験したが、高校最後の夏は140キロ台後半の速球で復活をアピールしている。高校卒業後は強豪大学に進み、「4年後のドラフト1位」を目指す。

 昨夏はタフさと馬力を武器に徳島大会をひとりで投げ抜き、甲子園でも存在感を放った森山暁生(阿南光)。昨夏の甲子園敗退後、記者から「森山くんは来年もありますが」と問われると、「2年夏の甲子園も一度しかありません」と返す芯の強さが印象的だった。今夏は鳴門渦潮と初戦で対決し、投手戦の末に0対1で敗退。高校最後の夏に甲子園に戻ってくることはかなわなかった。

 昨秋の九州大会で準優勝と躍進し、「離島の奇跡」で今春センバツに出場した大島。細身ながら最速146キロをマークする左腕エース・大野稼頭央は、鹿児島大会でチームを決勝へと導いた。鹿児島実との決勝も緩急をうまく使って熱投を見せたものの、2対3と夏の甲子園まであと一歩及ばなかった。

 今春以降に急激に評価を高めていた右腕の茨木秀俊(帝京長岡)、安西叶翔(常葉大菊川)も地方大会で敗れた。茨木はバランスのよいしなやかな投球フォームで、高い将来性を感じさせる。惨敗に終わった春季大会から状態を高め、今夏の新潟大会では決勝進出の原動力に。決勝では同じくドラフト候補の田中晴也(日本文理)と互角の投げ合いを演じ、延長11回の投手戦の末に1対2で力尽きた。

 安西は横手に近いスリークオーターから、イキのいい最速148キロの快速球を投げ込む。今夏は2回戦まで10イニング無失点と好調を見せていたが、部内で新型コロナのクラスターが発生したため以降は出場できず。思わぬハプニングに泣かされた。

高校通算50本超えの長距離砲

 捕手では、今春センバツでバックスクリーン弾と鋭いスローイングで一躍ドラフト候補に仲間入りした高山維月(浦和学院)の名前を挙げたい。大会後もスカウト陣の評価はうなぎのぼりで、森大監督は「上位指名もあるかもしれない」と高い期待を口にしていた。だが、今夏の埼玉大会決勝でノーシードの伏兵・聖望学園に0対1で惜敗している。

 内野手では内藤鵬(日本航空石川)、イヒネ・イツア(誉)はドラフト指名が有力視される好素材だ。内藤は高校通算53本塁打をマークした右の大砲ながら、確実性も高い。その知名度とは裏腹に甲子園と無縁の高校生活だったが、最後の夏も石川大会準決勝で敗退した。

 イヒネはナイジェリア人の両親を持ち、スラリと伸びた長い足が印象的なアスリート型遊撃手。身体能力はずば抜けており、走攻守のスケール感は今年の高校生でトップクラスだろう。今夏の愛知大会は初戦から難敵続きの「死のゾーン」に入り、3回戦で西尾東に8対10で敗戦した。なお、内藤もイヒネも中学時代は愛知・東山クラブのチームメイトでもある。

 右の長距離砲が内藤なら、左の長距離砲は西村瑠伊斗(京都外大西)だ。今夏は高校通算54本目となる大会4本塁打に、打率.611と大暴れ。準決勝の龍谷大平安戦では3四球と勝負を避けられ、チームも5対12で涙を呑んだ。とはいえ、力感なく自分の間合いで捉えられる打撃は、今後高いレベルでどこまで伸びるのか楽しみだ。

 外野手では、「柳田悠岐(ソフトバンク)を彷彿とさせる身体能力」と評された古川雄大(佐伯鶴城)の存在が際立った。今夏の大分大会では準決勝進出を果たし、連日スカウトを球場に集めた。確実性はまだ乏しいものの、そのスケールは底知れない。すでに高卒でのプロ志望を明言している。

 スカウト陣が集結する夏の甲子園で活躍すれば、評価は高まりやすい。だが、当然ながら甲子園でのアピールがすべてではなく、甲子園不出場ながらプロでスターの座に上り詰めた選手もたくさんいる。

 甲子園に届かなかった逸材たちは、今後どんな道を歩むのか。その野球人生は、むしろこれから本格化していくはずだ。