戦後初リーグ3連覇への道が途絶えた。4点差を追う4回裏に逢澤崚介外野手(文3=関西)がリーグ初の2点本塁打で2点差に詰め寄る。しかしその後は両軍の打線が沈黙し、2-4のまま迎えた8回。粘投していた投手陣がついに捕まり2点献上。9回も失策など…

戦後初リーグ3連覇への道が途絶えた。4点差を追う4回裏に逢澤崚介外野手(文3=関西)がリーグ初の2点本塁打で2点差に詰め寄る。しかしその後は両軍の打線が沈黙し、2-4のまま迎えた8回。粘投していた投手陣がついに捕まり2点献上。9回も失策などが絡み3点を追加され2-9で大敗した。優勝には今カードを2勝0敗で勝ち点奪取が条件となっていたが、今回の敗戦により優勝は消滅。今季最終カードの勝ち点を取るべく、残り試合に全てを懸ける。

ベンチにいる選手が、応援している観客が祈るようにして打者を見つめる。9回2死。その思いとは裏腹に、逢澤が打った打球は力なく弧を描き、遊撃手のグラブへと吸い込まれていった。下を向く紫紺ナイン、呆然と立ち尽くす満員の一塁側応援スタンド。わずかに残っていた優勝の夢が、はかなく散っていった。

打てない、ただその一言に尽きた。優勝が懸かった大一番で先発のマウンドを任されたのはルーキーの入江大生投手(政経1=作新学院)。2008年の春、1年生ながら先発し完全優勝した試合で勝ち投手となった野村祐輔選手(平23商卒・現広島東洋カープ)以来の1年春での先発登板だった。しかし「自分の気持ちが負けてしまった」(入江)と3回2死一、二塁から暴投で先制を許すと、5番山根(立大)の3点本塁打を浴び、4失点で無念の降板。それでもチームはルーキーの奮闘に「入江を負け投手にはしたくない」(逢澤)と立大に食らいつく。4回の守備を併殺、三振で反撃へのリズムをつくると、4点差を追う裏の攻撃。1死から代打の平塚大賀内野手(政経3=春日部共栄)が右翼線へ打球を運び二塁に出塁する。そして打席には3番の逢澤。カウント1ボール1ストライクから3球目。「狙っていた」チェンジアップを捉えると、打球は伸び右翼席前段へ。値千金のリーグ戦初本塁打で2点差とする。この1発を反撃の口火としたかったが、後続の打者をわずか3球で切って取られる。その後5回から7回までは立大先発・手塚(立大)の前に出塁できず。140㎞前後の直球と120㎞台のチェンジアップを軸にした組み立てに、8三振と手も足も出なかった。放った安打はわずか4本。「打撃陣が情けない」(竹村春樹内野手・政経4=浦和学院)。不甲斐なさに唇を噛まざるを得なかった。

あまりにもスキが多すぎた。今季は強打者がおらず、貧打に悩まされていた。それだけに守りから流れをつくりたかった。しかし、初回から一塁後方へ飛んだ邪飛を二塁の宮﨑新内野手(文4=履正社)と一塁の渡辺佳明内野手(政経3=横浜)が接触して、アウトにできず。バッテリー間では捕逸は記録されなかったが、捕手もボールを止め切れない。盗塁も熊谷(立大)の3盗塁を含む4盗塁を許す苦しい展開が続いた。さらに最終回。4点差のまま裏の攻撃に臨みたかったが、記録にならない失策などでダメ押しの追加点を与え7点差に。スキの無い野球をする明大とはほど遠いプレーの連続で、攻守共に我慢の限界だった。

今日の負けで「優勝にはふさわしくないチームだった」と厳しく自分たちの戦いを振り返った中野速人主将(法4=桐光学園)。戦後初となるリーグ3連覇が途絶えてしまった今、野球技術はもちろん「普段の生活とかも問題」(竹村)と優勝の難しさを痛感させられる試合となった。だが今季の戦いはまだ続く。秋季リーグ戦へいい流れを持っていくためにも、残りの立大戦は落とせない。「明日は何としてでも勝つ」(中野)。このまま終わる紫紺軍団じゃない。運命の3回戦、全力で勝ち点を奪いにいく。

[浜崎結衣=文]

試合後のコメント

主将としてチームをけん引し続けた中野

「正直に言うと、優勝にはふさわしくないチームだったということです。野球以外の私生活面でも詰めきれていないことがありましたし、練習態度や生活態度を見ていて、これが優勝するに値するチームなのかなと思うことはありました。野球の技術以前にやらないといけないことはたくさんあると思います。生活面なども一から見直していかないといけないなと。寮生活におけるルールなど細かいことなんですけど、そういうところをしっかり徹底していこうと普段から言っているチームなのに、それができずに〝優勝〟なんてふざけんなという話なので。それが今回でよく分かりました。当たり前のことができずに、何が〝継なぐ〟だよって、自分への反省もありました。もう一度私生活から変えていきます。(ルーキーの入江が先発登板)投球自体は悪くなかったのに、初回から後逸など守備面の乱れがあって、捕手や野手が入江のことをカバーし切れませんでした。それに尽きると思います。実力もつながりもないし、チーム自体まだまだだったと思います。負けるべくして負けました。(優勝は消えましたが)目の前の一戦を取りにいくことには変わりないので、明日は何としてでも勝ちたいと思います」

連投ながらも5回1/3を2失点と踏ん張った齊藤

「(優勝がなくなった)目標としてはリーグ優勝を目指してやってきているので、ここでいったん目標はなくなる。そういう形にはなりますけど、まだリーグ戦終わってないですし、1試合残っているのでそこはしっかり全力でやっていきます。明日から次のリーグに向けて意識持ってやっていかないと、無駄な1試合になってしまうので。(入江と交代する時)あんなところで落ち込んでいても時間がもったいないので『しっかり切り替えて声出せよ』って言葉を掛けました。(反省点)スタミナ的に毎回5イニング目で失点しているので、5イニング目を抑えることが課題かなと思いました。やることは見つかったので、ただ悪かっただけのシーズンではなかったかなと思います。(夏には大学日本代表)そこはまた別として考えていきたいです。とりあえずチームのために何ができるのかを最優先で考えてやっていかないといけないので、目の前の課題をしっかり一つ一つ無くしていければと思います」

スタメン出場も1安打に終わった竹村

「何もできませんでした。優勝は無くなってしまったんですけど、明日に備えるしかないです。野球以前に普段の生活とかそういうのが問題だと思います。(試合は)打撃陣が情けないので、練習するしかないです。明日、勝って終わりたいです」

2点本塁打を放った逢澤

「1年生の入江が初先発で何とかあいつを負け投手にはしたくないという気持ちは上級生みんなあったと思うので、みんなでつないでどうにか逆転してあげたかったですけど、こういう結果になってしまって。優勝が懸かった試合で応援もたくさんしてくれたので、ファンの皆さまにも申し訳ないなという気持ちが一番大きいです。(初ホームラン)ランナー二塁いたので、自分の1本でチームに勢いをつけたいなという気持ちで立ちました。チェンジアップです。(後半失点)後半の失点よりも打撃陣が追加点取れなかったというのが悪かったと思います。(手塚投手)緩急のあるピッチングで、チェンジアップがよかったので自分はその球は狙って打てたんですけど。真っすぐとチェンジアップのコンビネーションが良かったかなと思います。(負けられない一戦だった)来週の早慶次第でわからなかったですけど、今日勝って秋につながるという意味でも今日の2戦で決めようと4年生が中心となって試合に臨みました。(明日に向けて)この春のリーグ戦を勝って終わるのと負けて終わるのとでは全然違うと思うので、明日は勝って秋にしっかりとつなげられるような試合にしたいなと思います」

代打での起用に応えた平塚

「(今の気持ち)みんな優勝目指してやってきたので、悔しいという気持ちだけです。(ご自身の今季の振り返り)今まで全く打てていなかったんですけど、練習してたものが少しは出たかなと思いました。練習をこれだけやってきたという気持ちを強く持って打席に立ったので、それが結果につながったと思います。(守備の乱れが見られたがチームの雰囲気は)良くはなかったです。記録に残らない小さなミスも多かったので、そういうところを改善できれば良い試合ができたと思います。(今季のチームに足りなかったもの)粘り強さを出していかないとと思います。(自身の打席)負けている状況で、先発が初めて入江ということもあって。そこまで全然打てていなかったので、自分が一本出してチームに勢いをつけようと思って打席に立ちました。追い込まれていたので、必死に食らいついていく感じで行ったら良いところに落ちてくれたので、それはよかったです。(この夏の取り組み)自分自身としては全部守備も打撃もやっていかないといけないと思うので、もっとレベルアップを図っていきたいと思います。(明日に向けて)優勝はなくなってしまったのですけど、秋に向けてつなぐという気持ちで明日は良い試合ができたらと思います」

初先発4失点も多くのことを学べた入江

「(昨日、監督から明日いくぞと)はい。よしやってやろうという気持ちと、少し不安な気持ちがありました。(大一番だったが、調子は)相手が思ってたところに自分が投げてしまったという感じ。この球が来ると思ってるのに打てないような球を追求していきたいです。(本塁打になった球、狙いは)そんな甘くなかったと思うんですけど、インコース真っすぐを狙ってました。(2アウトからフォアボールでつながれた)うまく言えないですけど、球場、相手の雰囲気だったりに自分の気持ちが負けてしまったんだと思います。(監督からの期待もある)期待に応えたいという気持ちも大きかったですけど、自分の力不足でこういう結果になってしまった。(大きな経験に)自分が上級生になったり、学年が上がるにつれてこの経験が良かったなと思えるようにしたいと思います。(打席も立ちたかった)そんな余裕はなかったです。(1年春から先発できると思ってたか)思ってなかったですね。だからなおさら結果を残したいという気持ちが強かったです」