力強さを増した三原舞依 昨シーズンの日本の主力選手たちが、新シーズンへ向けたプログラムを披露した7月1〜3日の「ドリーム・オン・アイス」。そのなかでも特に印象的だったのは、三原舞依(22歳、シスメックス)の滑りだった。 披露した新ショートプ…

力強さを増した三原舞依

 昨シーズンの日本の主力選手たちが、新シーズンへ向けたプログラムを披露した7月1〜3日の「ドリーム・オン・アイス」。そのなかでも特に印象的だったのは、三原舞依(22歳、シスメックス)の滑りだった。

 披露した新ショートプログラム(SP)は、映画『戦場のメリークリスマス』のオリジナルサウンドトラック『メリークリスマス・ミスターローレンス』。彼女の魅力である、流れるような滑りとしなやかな表現はそのままに、明瞭に響くピアノの音のひとつひとつを大切にする演技。



「ドリーム・オン・アイス」に出演した三原舞依

 その動きは以前に比べるとメリハリがあり、力強さを感じさせる。さらに後半に入ってからのスピンもスピード感にあふれ、ステップシークエンスは流れるような美しさのなかにもピアノの音を意識して緩急をつけ、前半以上の力感で演技を盛り上げる。そして、最後はレイバックスピンで静かに物語を終えるような滑りだった。

 ジャンプは、アイスショー初日の演技ではダブルアクセルのあとに3回転フリップ+3回転トーループを跳び、後半は3回転ルッツという構成だったが、その直前の練習では最後のジャンプを3回転ルッツ+3回転トーループとしていた。そして2日目と3日目の演技では最後のジャンプを、3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転トーループの3連続ジャンプに。「ファンタジー・オン・アイス」で三原が見せ場にしていた3回転ルッツに4〜6本の2回転トーループをつけるジャンプを彷彿とさせた。

 昨季後半は「体力も戻ってきているので、もっともっと練習を頑張りたい」と話していたが、その手応えも感じてさらなる進化を意識している気配を見せる演技だった。

友野一希は昨季の成長を自信に

 その三原に続いて演技した友野一希(24歳、上野芝スケートクラブ)も、昨季とはひと味違う演技を見せてくれた。

 今年1月の四大陸選手権で2位になり、代役で急遽出場した3月の世界選手権は6位で、昨シーズンを「成長の年」と評価する彼の新SPは、昨季に続くミーシャ・ジー氏の振り付けで、サックス奏者サム・テイラーの『リアル・ゴーン』とC2Cの『ハッピー』を使い、『ハッピー・ジャズ』と名づけたプログラムだ。

 テナーサックスのゆったりした曲調のなかで大きな滑りをし、3回転ルッツと4回転サルコウを跳んだあと、曲調はガラッと変わってアップテンポに。チェンジフット・シットスピンを終えて立ち上がってからは、一気に踊り出す「友野ワールド」に突入し、トリプルアクセルのあとに2種類のスピンをこなすと、あとは全力疾走とも言えるようなステップシークエンス。そして、最後も突如止まる終わり方で、らしさ満開のプログラムになっている。

「自分のスケートをさらに磨き上げていきたい」と話す友野は昨季の成長を自信にし、吹っ切れたように自分らしさを追求し始めている。

ケガから復調する松生理乃、佐藤駿

 プログラムがまだ仕上がっていない選手が多くミスが目立つなかで、初日に三原とともにノーミスの滑りを見せたのは松生理乃(17歳、中京大中京高)だった。

 シニア1年目の昨季序盤はトリプルアクセル挑戦も試みたが、ケガをして難度を落としてグランプリ(GP)シリーズに臨む悔しい思いをした。それでも昨年12月の全日本選手権からは彼女の武器でもあるSP、フリーともに基礎点が1.1倍になる演技後半のジャンプをすべて連続ジャンプにする構成に戻し、今年1月の四大陸選手権では合計を自己ベストの202.21点にし、5位に入った。

「ドリーム・オン・アイス」では、冒頭のダブルアクセルと次の3回転フリップもきれいに決め、後半の3回転ルッツ+3回転トーループもしっかり降りた。それは、今季の練習が順調にいっている証拠だ。

 新プログラム『パパ、キャン・ユー・ヒア・ミー?』は、昨季より動きの大きさと、手の使い方のしなやかさを感じさせる柔らかな滑り出し。つなぎの表現も丁寧にこなし、終盤のステップシークエンスは曲の盛り上がりにきちんと合わせる動きで、感情を身体全体ににじみ出させるような滑りになっている。

 フリーは昨季の『月光』を継続し、ジャンプの入れ替えをしてレベルアップを図っているという松生だが、大人っぽいイメージも高まり、今季はワンステップ上がった演技を見せてくれそうだ。

 また昨季はケガにも苦しんでもうひとつ伸びきれなかった佐藤駿も、まだケガ明けでジャンプは本調子に戻っていないが、新SPは「これまで滑ったようなことがないような曲」と話す、ウクライナ民謡をもとに100年以上前に編曲され、クリスマスソングとして親しまれている『キャロル・オブ・ザ・ベル』の、バイオリニストのリンジー・スターリングのカバー版。

 弦を弾く音から始まり、冬の寒冷な空気感を表現するような曲。終盤のステップシークエンスでは音に合わせた流れとキレを同居させた滑りを見せた。シニア移行からは表現の向上も意識している佐藤だが、「これを完成させれば新たな世界に踏み出せるのでは」と思わせるようなプログラムだ。

 昨季から着実に成長を感じさせる演技を披露した各選手。今季の試合での活躍が今から楽しみだ。