2014年からほぼ毎年開催されてきた小橋建太さんプロデュース大会「Fortune Dream」が3年ぶりに開催される。小橋さんは出場選手を選ぶため、日頃から様々な団体を観戦し選手の特徴をインプット、カードを決定する。今回小橋さんに6.15後…

2014年からほぼ毎年開催されてきた小橋建太さんプロデュース大会「Fortune Dream」が3年ぶりに開催される。小橋さんは出場選手を選ぶため、日頃から様々な団体を観戦し選手の特徴をインプット、カードを決定する。今回小橋さんに6.15後楽園ホール「Fortune Dream7」の出場選手・カードを解説してもらった。

――3年ぶりとなる「Fortune Dream7」が開催されます。この大会は2014年6月に第1回大会が行われましたが、大会を開催するキッカケを教えていただけますか?

小橋:あの頃、僕は現役を引退し様々な団体を観て週刊プロレスでコラムを書いていました。日本には大小いろいろな団体が存在、小さな団体にも素晴らしい選手がたくさんいます。そこで「団体の垣根を越えた戦いをプロデュースしたら面白いのではないか」と考えたのがキッカケです。

ですから出来る限り試合を観戦し、出場してもらう選手を自ら選んでいます。

――出場選手を振り返ると今回を含め7大会中6回出場しているのが関本大介選手、火野裕士選手、佐藤耕平選手、石川修司選手。この4選手に共通しているのが小橋さんの現役時代を彷彿とさせる正面からぶつかり合う選手。やはり自分のファイトスタイルに似た選手を選んでいるのでしょうか?

小橋:似ているよりも「頑張っている選手」を選んでいます。リング上だけではなく練習も含めて頑張っている選手。そして期待を裏切らないファイトを見せてくれた選手には、次の大会もオファーしますね。

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――練習は大切ですよね。僕は小橋さんのエピソードでロード・ウォリアーズからウェートトレーニングを教わった話が好きです。当時、理論的なウェートトレーニングをする日本人レスラーがいない中、本格的なトレーニングを学ばれましたよね。

小橋:僕が練習をしていたらウォリアーズが「その方法ではなく、こっちの方法が効果的だ」といろいろ教えてくれました。ただウェートトレーニングをしていない時はマネージャーのポール・エラリングに捕まっていましたね(苦笑)。ポールは体育館の階段を使って、長時間踏み台昇降をしているんです。「俺の練習に付き合え」と言われ一緒に踏み台昇降をしました。

――それは足腰を鍛える意味でしょうか?

小橋:そうです。器具を使わずスタミナを付け心肺機能を鍛えるためです。当時僕は練習生、試合開始30分前にリングサイドに行ってお客さんがリング内に入らないよう見ていなければいけません。ただポール・エラリングは踏み台昇降を試合開始ギリギリまで止めないんですよ(苦笑)。練習生の僕はポールが止めるまで止まられません。自分から「仕事があるから抜けます」とも言えなかった。毎回終わるのが開場時間を過ぎ、試合開始15分前。慌ててリングサイドに行くと先輩たちに怒られました。遅れた理由を「ポール・エラリングの練習に付き合っていました」と説明しても「そんなのほっといて、時間通りリングサイドに来い!」と。当時トップ選手のロード・ウォリアーズのマネージャーと一緒に練習していたら周りも許してくれるだろうと思っていたのですが、そこは厳しかったですね(笑)。

シリーズが終わった時、ポールから「一緒に練習してくれてありがとう。君へのプレゼントだ」とロード・ウォリアーズのTシャツを貰いました。もう手元にないですけど(苦笑)

――小橋さんは練習のエピソードを沢山お持ちですが、「Fortune Dream」に出場する選手も練習をしっかりしているイメージがあります。そういう選手を小橋さんが選んでいると感じました。

小橋:それはありますね。あと40歳を過ぎても鍛えている選手に出場してもらいたいと思っています。

――レスラーを引退された後、プロレス業界から離れる方もいますが、小橋さんは解説やタイトル戦の特別立会人として積極的にプロレスに関わっているように思います。

小橋:プロレス界に育ててもらったので恩返しできたらと思っています。有難いことに解説や立会人のお話を頂ける。こういった話を頂けるのは本当に嬉しいことですね。今後も出来る限りプロレス界の発展に尽くしたいと考えています。

――タイトル戦の際に小橋さんがリングに上がると良い意味で「ピリッ」とします。「いよいよメインイベントのタイトル戦が始まる」と感じますね。

小橋:立会人として自分がリングに上がることで「タイトルマッチ始まる」と思ってもらえたら嬉しい。やはりタイトルマッチはチャンピオンや挑戦者、もちろんお客さんにとって特別なもの。「いよいよタイトルマッチが始まるよ」と会場の空気を変えたい思いはあります。

――ところで今回の出場選手の中に鈴木みのる選手の名前がありました。鈴木選手はどのような経緯で参加が決まったのでしょうか?

小橋:「Fortune Dream」に鈴木みのるが出場したら面白いだろうな…と思っていたらアメリカからビデオが送られて来て「出てやってもいいぞ」と。そこまで言うなら「出してやってもいいかな」と(笑)。

――鈴木選手を含め、今回初出場の選手が多いですよね。その中で驚いたのがDDTプロレスの遠藤哲哉選手です。「Fortune Dream」は「力vs力の戦い」というイメージを勝手に抱いていましたが、飛び技を主体とした遠藤選手がメインに登場しますね。

小橋:遠藤くんは新生バーニングを結成し「バーニング」を継承してくれました。彼の最近の戦いを見ると「気持ちが入っている」のを感じますね。気持ちが込められているから一つ一つの技の説得力が増している。飛び技だけでなくグラウンドにも対応できる。パワーも付いてきた。それで声を掛けさせて頂きました。

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――GLEATからユニット「#STRONGHEARTS(ストロングハーツ)」のCIMA選手とT-Hawk選手が出場します。

小橋:CIMA選手は#STRONGHEARTSをまとめる力、あの統率力がすごい。今年でデビュー25周年ですが、まだまだ若いしエネルギッシュな選手ですよね。

T-Hawk選手はドラゴンゲート時代から「いいチョップを使う選手がいる」と聞いて注目していました。2月にGLEATのG-REX初代チャンピオンを決めるトーナメントがありT-Hawk選手を見たら、中盤からチョップの精度が増した。あの日は第一試合でエル・リンダマンに敗れたけど、もっと見たくなりました。体格は大きくないけどスピーディーな動きをする魅力的な選手でオファーしました。

またトーナメントを見て伊藤貴則選手に声を掛けました。伊藤選手の蹴りは破壊力がすごい。「Fortune Dream」で他の団体のファンの前で蹴りを披露し、自分の団体のファンを増やして欲しいですね。

「あの選手もう一回見たいな」と思ってもらえるのが「Fortune Dream」の良さだと思います。まだコロナ禍ということもあり参加選手選びに苦慮しました。団体としては選手を貸し出すことでコロナのリスクが上がるわけです。そういった状況の中、協力して頂いた団体の方々には本当に感謝しています。

――コロナが完全に収まったわけではないですからね。ところで今回初出場に全日本プロレスの大森隆男選手の名前がありました。

小橋:大森に関しては最近元気がないから、「昔の元気な大森隆男を見せてくれ」というメッセージを込めてオファーしました。大森は今年でデビュー30周年。選手のレスラー年齢も上がっている中、まだ老ける年齢ではないだろうと。レスラーは活きのいい選手と戦うとそれに影響されて自分も上がっていく。そういう意味で対戦相手の鬼塚一聖選手はすごく活きがいい選手。体格的には大森の方が大きいですけど鬼塚選手の活きの良さは面白い。気を引き締めていかないと鬼塚選手に敗れる可能性もある。気合を込めて臨んで欲しいですね。

――そして大日本プロレスの橋本大地選手も初出場ですね。

小橋:僕は現役時代、橋本真也選手と戦うことはなかった。だからいつか「橋本真也二世」である橋本大地選手にオファーしたいと思っていました。でも最近の彼の活躍を見て、橋本真也二世ではなく「橋本大地」にオファーを出しました。正直少し前まで「橋本真也」の影が見えていました。でも今回、その影がなくなり1人のレスラー「橋本大地」に魅了を感じ、声を掛けましたね。

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――今年のチャンピオン・カーニバルで優勝した全日本プロレスの青柳優馬選手も初出場です。

小橋:全日本で注目した選手は青柳優馬選手、野村直矢選手、ジェイク・リー選手、宮原健斗選手の4人。チャンピオンになる前から興味を持っていましたね。ただ宮原選手と違い、青柳選手はタッグでベルト獲得してもシングルでは目立った結果を出せずにいた。今年のチャンピオン・カーニバルで優勝したことは本当に良かった。彼の努力が身を結びましたね。ただ「Fortune Dream7」に出場するのはチャンピオン・カーニバルの前に決まっていました。今回、準優勝のジェイク・リーも出場しますが、どちらが勝ってもチャンピオン・カーニバル前にオファー済です(笑)。

――全日本プロレスの大森北斗選手はジェイク・リー選手と同じユニット「TOTAL ECLIPSE」です。

小橋:彼はヒール的な動きの中にキラリと光る技を見せるんです。だから#STRONGHEARTSのCIMA、T-Hawkと戦ったら面白いんじゃないかと思いカードを決めましたね。

――小橋さんは各選手の特徴を掴んでカードを組んでいるのですね。

小橋:#STRONGHEARTSは色々な団体に出場し状態も良い。ジェイク選手も怪我から復帰しチャンピオン・カーニバル準優勝。最近はムーンサルトプレスも使うようになった。大森選手は何をするか分からない面白さを持ったレスラーで、1人だけ他の3人と色が違う。きっと4人の戦いの中で異彩を放つと思います。

――選ばれた選手に共通して言えるのは真っ向勝負をすることですね。現役時代の小橋さんのスタイルに近い選手が多いようにも思えます。

小橋:そんなことを思いながら試合を見ているのかも知れませんね。真正面からぶつかる試合も見たいし、グラウンドのテクニックや飛び技も見てみたい。自分の見たい試合を提供するのが「Fortune Dream」ですね。

――3年ぶりの開催、まだまだコロナが完全に収束していない中、開催は厳しいという声も上がったと思います。

小橋:そうですね。鈴木みのるもビデオ送って来た「出てやってもいいぞ」と言いながら、こういう時期で人が集まり難い中、真っ先に手をあげて立候補してくれました。新日全日と団体は違いましたけど、彼とは同期になります。だから今回大会をすることを心配してくれてるんじゃないかな(笑)。

――出場レスラーの中に鈴木みのる選手の名前が入ると「ピリッ」と引き締まりますね。

小橋:この中に鈴木みのるが入ることで大会が締まる。彼は他の選手の試合もチェックするので出場選手も緊張するでしょう。控え室で試合を観戦しながら「あいつ面白いじゃん」とか言ってそうですよね。

鈴木は「相手は誰でもいい」と言ったので、伊藤貴則選手と戦ったら面白いと思いました。伊藤選手のパートナーは鈴木軍だった2AWの真霜拳號選手。そして鈴木のパートナーはUWF好きで大日本プロレス所属の野村卓矢選手。横浜文体のラストマッチで鈴木と野村選手は対戦しました。他のリングで組むことがない2人、だったら「Fortune Dream」でタッグを組んでもらおうと。野村選手からしたら鈴木は尊敬すべきレスラー、でもリング上で自分を出せなかったら鈴木に何を言われるか分からない。対戦するより組んだ時の方が緊張するかも知れませんね。

――そして「Fortune Dream」恒例の女子プロレスは、スターダムのひめか選手とレディ・C選手ですね。

小橋:今年、全日本プロレスは50周年です。ジャンピングニーを武器にするひめか選手と僕の師匠のジャイアント馬場さんの技を繰り出すレディ・C選手。この試合は「女子プロレス版・ジャイアント馬場vsジャンボ鶴田」。このカードが「Fortune Dream」のリングで実現するんです。レフェリーは和田京平さん、リングアナが木原文人さん。見る人が見れば「全日本プロレス」だろうと(笑)。スターダムのファンだけではなく、いろいろな団体のファンの方に見てもらいたいですね。

――最後に大会を楽しみにしているファンに一言お願いします。

小橋:コロナが完全に収束したわけではありません。声を出して応援することはできませんが、リング上で戦う選手の姿を見て僕も楽しみます。ぜひ皆さんも楽しんで欲しいと思います。

<インフォメーション>
6.15東京・後楽園ホールにて3年ぶりに小橋建太さんプロデュース大会「Fortune Dream7」が行われます。新型コロナウイルス陽性判定のため、来日中止になったスタン・ハンセン氏に代わり川田利明さんと田上明さんが参戦。かつて全日本プロレスで四天王として激闘を繰り広げた2人。Fortune Dream初「小橋建太vs川田利明vs田上明」の3WAYトークバトルが決定した。

詳細は小橋建太さんのオフィシャルWEBサイト「Fortune KK」をご覧ください!

小橋建太 Twitter
FortuneKK・小橋建太事務所 Twitter

取材・文・編集/大楽聡詞