4月16日に上茶谷大河(DeNA)がヤクルト戦で91球、4月19日に加藤貴之(日本ハム)が楽天戦で90球、そして5月1…
4月16日に上茶谷大河(DeNA)がヤクルト戦で91球、4月19日に加藤貴之(日本ハム)が楽天戦で90球、そして5月11日には東浜巨(ソフトバンク)が西武戦でノーヒット・ノーランを97球の「マダックス」で達成している。
「マダックス」とは、メジャーで活躍した往年の大投手、グレッグ・マダックスに由来している。マダックスは1986年から2008年までの23年間で通算355勝を挙げた技巧派右腕で、少ない球数でピッチングをすることから100球未満の完封劇を「マダックス」と呼ぶようになった(自身は13度達成)。

今年4月に
「マダックス」を達成した日本ハムの加藤貴之
技巧派投手が圧倒的⁉︎
ここで、昨年までの直近10年間で「マダックス」を達成した投手を見てみたい。
2011年
チェン・ウェイン(中日)/巨人戦/96球/被安打2/奪三振4/四死球0
2012年
木佐貫洋(オリックス)/楽天戦/95球/被安打4/奪三振4/四死球0
武田勝(日本ハム)/楽天戦/96球/被安打2/奪三振1/四死球3
国吉佑樹(DeNA)/広島戦/92球/被安打3/奪三振4/四死球3
吉川光夫(日本ハム)/西武戦/95球/被安打2/奪三振7/四死球1
2013年
木佐貫洋(日本ハム)/阪神戦/91球/被安打2/奪三振5/四死球1
2015年
山中浩史(ヤクルト)/広島戦/96球/被安打5/奪三振2/四死球1
西勇輝(オリックス)/ロッテ戦/95球/被安打3/奪三振8/四死球2
2016年
美馬学(楽天)/ロッテ戦/96球/被安打3/奪三振2/四死球0
小熊凌祐(中日)/DeNA戦/93球/被安打1/奪三振5/四死球1
2017年
金子千尋(オリックス)/ソフトバンク戦/92球/被安打2/奪三振5/四死球0
2021年
小川泰弘(ヤクルト)/中日戦/99球/被安打3/奪三振6/四死球0
早川隆久(楽天)/オリックス戦/98球/被安打3/奪三振8/四死球2
髙橋遥人(阪神)/中日戦/97球/被安打5/奪三振7/四死球0
これを見ると、やはり奪三振数、四死球数の少ない投手が圧倒的に多い。
単純計算で1イニング11球を要したとして、9回を投げきれば99球。これは1イニング12球になれば108球になってしまう。また、すべてのアウトを3球三振で打ちとったとしても81球。奪三振が多くても、球数は増えるのである。
1956年に大脇照夫(国鉄)が中日戦でノーヒット・ノーランを達成したが、この時の球数は80球。しかも奪三振0という珍記録での達成だった。また同年、大脇のチームメイトである宮地惟友(よしとも)が広島戦で79球での完全試合を達成。この時も奪三振3と、打たせてとるピッチングで快挙を達成した。
今年「マダックス」を達成した日本ハム・加藤は、9イニング平均与四球率2.00個なら抜群のコントロールと言われるなか、昨年1.26個と驚異的な数字を残している。ストレートの球速は130キロ台ながら、チェンジアップなどの変化球を駆使し、凡打の山を築いていく。
つまり「マダックス」は、コントロールがよくて、打たせてとる投球を展開する投手に達成の可能性が高いと言える。
佐々木朗希は達成なるか?
ただ2011年以前は、新垣渚(ソフトバンク)やダルビッシュ有(日本ハム)といった三振を奪える本格派も達成しており、必ずしも"技巧派"だけの記録ではない。
そこで気になるのが、今年4月10日のオリックス戦で史上16人目、28年ぶりの完全試合を達成した佐々木朗希(ロッテ)の「マダックス」の可能性である。この試合の佐々木は105球で完全試合を成し遂げたのだが、驚くべきは19個の三振を奪ったことだ。これだけの三振を奪いながら、9イニングを105球でまとめたところに佐々木の非凡さがうかがえる。
この結果を鑑みたうえで、解説者の岩瀬仁紀氏はこう見解を述べる。
「佐々木くんのように圧倒的な球速があれば、ストライクゾーンにさえ投げることができればそう簡単には打たれない。だからバッテリーも追い込んでから様子を見るのではなく、3球勝負が多い。それが球数の少なさにつながっていますし、今後もコントロールだけ気をつければ"マダックス"達成の可能性は高いと思います」
10年間(2012〜21年)の達成者は13人(木佐貫洋は2回達成)と、希少価値の高い記録であるのは間違いない。ただ、昨年は3人、今年もここまで(6月1日現在)すでに3人と、増加傾向にある。これについて、岩瀬氏は次のように語る。
「2012年は統一球の影響があったと思いますが、近年はトレーニングやテクノロジーの進歩が著しく、投手のパフォーマンスが飛躍的に上がっているのが大きな理由ではないでしょうか。そのことで投手が優位に立ち、勝負の早さにつながっている部分はあると思います」
はたして今シーズン、何人の「マダックス」達成者が出るのだろうか。