日本人欧州組の今季を総括(後編)前編を読む>>最もインパクトを残したのは鎌田大地中山淳 今季の欧州では50名を超える日本…

日本人欧州組の今季を総括(後編)
前編を読む>>

最もインパクトを残したのは鎌田大地
中山淳

 今季の欧州では50名を超える日本人選手がプレー。しかし、欧州最高峰のチャンピオンズリーグ(CL)に出場したのはリバプールの南野拓実のみで、その南野もラウンド16以降は出番がない。そう考えると、欧州日本人の現状は、以前と比べて"質より量"の傾向にある。そのなかで、最も大きなインパクトを残したのは、フランクフルトのヨーロッパリーグ(EL)優勝に主軸として貢献した鎌田大地だった。来季は、欧州カップ戦や5大リーグの上位クラブで活躍する選手が増えてほしい。

鎌田大地(フランクフルト)

 シーズン序盤は苦しんだが、ELでの活躍を契機に、秋口からチーム内において確固たる地位を確保。以降は好調を維持し、終わってみれば国内リーグで4得点、ELで5得点を記録するなど、大車輪の活躍ぶりだった。長谷部誠とともに手にしたEL優勝は、日本人ではフェイエノールト時代の小野伸二以来の快挙だ。これにより、来季のCL初出場は確定。ただし、今季の活躍によってステップアップ移籍の可能性も十分にあるだろう。

伊東純也(ゲンク)

 欧州リーグランキング13位のベルギーで、しかもチーム成績は中位に終わったものの、今季の伊東の活躍は目を見張るものがあった。シーズンを通してコンスタントにハイパフォーマンスを披露し、32試合に出場して8得点。アシストはリーグ戦で13アシスト(2位)、プレーオフで3アシスト、ELで2アシストと、計18のアシストを量産した。特に今季はゴール前での多彩な仕事ぶりが際立っていた。29歳の現在、最も脂が乗った状態にある。



名門アーセナルでレギュラーの座を獲得した冨安健洋

冨安健洋(アーセナル)

 負傷で長期の戦線離脱を強いられたが、加入初年度で、しかも欧州リーグランキング1位のプレミアの名門アーセナルで即レギュラーを奪取したことは、日本人DFとして快挙と言える。主戦場の右SB以外に、左SBでもプレーし、そのパフォーマンスもインパクトは十分だった。ミケル・アルテタ監督からの信頼を勝ち獲っていることもあり、負傷さえなければ来季も主軸を張るはずだ。年齢もまだ23歳。現状、最も有望な日本人選手だ。

ひと皮むけた感の堂安律

遠藤航(シュトゥットガルト)

 シーズンを通してフル稼働し、主将としてチームをけん引。最終節では自らの決勝ゴールでチームの1部残留に貢献するなど、遠藤にとっては実り多きシーズンになった。今季もデュエル勝利数ではリーグ1位を維持したほか、4得点2アシストを記録。残念ながらチーム成績により全体の4番手としたが、中位以上であれば冨安と順位を入れ替えたかもしれない。遠藤も伊東と同じ29歳。来季は、もうワンランク上のクラブでプレーしてほしい。

堂安律(PSV)

 伊藤洋輝(シュツットガルト)、奥川雅也(ビーレフェルト)も候補だったが、5番手にはオランダ3大名門クラブのひとつ、PSVでリーグ2位を確保して、来季のEL出場権獲得に貢献した堂安を選出した。リーグ戦出場24試合で8得点、1アシスト。多くが途中出場だったが、そのなかでゴールを重ねて終盤にはレギュラーを奪取。尻上がりに成長し、ひと皮むけた印象がある。今夏の移籍市場でステップアップできるか。その動向は要注目だ。

南野拓実のような環境でプレーしている日本人はいない
小宮良之

 これだけ多くの日本人サッカー選手が、欧州で活躍できるようになるとは――。10年、20年前と比べると、隔世の感がある。日本代表は9割がた欧州組で構成される状況であり、時代は大きく変わった。

 今シーズンの欧州の日本人サッカー選手の動向は、内田篤人、長友佑都、本田圭佑がCLベスト16以上で競い合ったシーズンの華やかさはなかったものの、鎌田大地が主力としてチームをEL決勝進出に導き、古橋亨梧、旗手怜央、前田大然はセルティックのリーグ制覇に貢献、伊藤洋輝はブンデスリーガの最優秀新人賞にノミネートされている。「世界の扉を開いた」と言えるほど多士済々だ。

鎌田大地(フランクフルト)

 文句なしに、欧州でプレーする日本人MVPと言えるだろう。シャドーの一角として中心選手になった。得点だけではなく、プレーメイカー、ラストパサーとしても際立ち、守備の面でも要求を満たした。左サイドのセルビア代表フィリップ・コスティッチとの連係は強力な武器だ。ELでは5得点で決勝進出に大車輪。準々決勝のバルサ戦はゴールこそなかったが、鮮やかなパスで勝利を手繰り寄せた。今回まで久しく日本代表に選出されていなかったのは、ひとつのミステリーだ。

日本人選手の門を広げた古橋亨梧

冨安健洋(アーセナル)

 プレミアリーグの強豪クラブでレギュラーになった時点で、頭ひとつ抜けている。右サイドバックでの起用が多くなったが、絶大な存在感を発揮。プレー判断、ボール技術、そしてインテンシティも高く、右サイドを支配した。復帰戦でクリスティアーノ・ロナウドを完ぺきな間合いで抜き去り、苦し紛れのファウルを受けたシーンなど、「モンスター」ぶりを象徴していた。左サイドバック、センターバックでもいかんなく力を発揮しており、来季以降はさらなる活躍が見込める。

古橋亨梧(セルティック)

 入団直後から、EL予選連続得点やリーグ戦ハットトリックなどで、ひとつのセンセーションになった。爆発的なスピードと足を振る技量は、欧州でもトップレベル。ハムストリングのケガでシーズンの半分近くを棒に振ったにもかかわらず、復帰後は上位グループのプレーオフで貴重なゴールを連発している。カップ戦などを含めると、シーズン計20得点で大台に乗せた。彼の活躍が、「他の日本人選手の門戸を開いた」と言っても過言ではなく、その点では中村俊輔以来のインパクトと言えるかもしれない。

久保建英(マジョルカ)

 王者アトレティコ・マドリード戦でのプレーは華々しかったが、全体的には「伸び悩んだ」のも事実だろう。チームの順位や本人の得点数など、データ上では久保よりいい成績をあげた日本人選手はいる。しかし、リーガ・エスパニョーラでレギュラーを取るということ自体、高く評価すべきだろう。たとえば、ベルギーでは目立つ活躍を見せた日本人選手は多いが、8得点の原大智(シント・トロイデン)はすばらしい活躍だったとはいえ、リーガ開幕前にトライアルを受けたアラベスでは「練習生止まり」だったというのが現実。リーグに2ランクほどのレベル差がある。

南野拓実(リバプール)

 プレミアリーグは先発出場1、チャンピオンズリーグは4試合出場で先発は2試合。シーズンを通じ、控え選手の域を出なかったのは確かだ。しかし、所属するリバプールはプレミアで優勝争いをし、CL決勝に進出するなど世界トップのクラブである。モハメド・サラー、サディオ・マネ、ディオゴ・ジョッタ、ロベルト・フィルミーノ、ルイス・ディアスなどワールドクラスの選手がライバル。このような環境でプレーしている日本人選手はひとりもいない。リーグカップでは3試合連続得点で、決勝は控えだったが、戴冠を祝している。FAカップでも3得点を記録し、同じく決勝はメンバー外も、優勝に貢献した。合計24試合出場10得点は、けっして悪い結果ではない。