4月に完全試合を達成したロッテ佐々木朗希投手(20)は、独特な調整法も注目されている。練習メニューで多くの投手が取り入れている「遠投」をしないのも、特徴のひとつだ。

【関連記事】佐々木朗希が平均球速100マイル超えの161.1キロ!異次元のステージへ



 佐々木朗のキャッチボールの距離は、長くても30~40メートル。地面と平行するように低く強いボールを投げることを心がける。163キロをマークして話題になった大船渡高(岩手)時代から「遠くに投げるメリットがわからない」と話していただけに、プロでも同じ練習スタイルを貫いている。

 ロッテ入団時から、佐々木朗の育成に携わった吉井理人投手コーチは、遠投しない理由について「いろんな文献を見ていると、40メートル以上になると、投げ出しの角度が変わる。40メートルまでは球速が上がったり、投球の質が上がったりする。それを超えると、良くなることもあるけれど、悪くなってバラバラになることもある」と説明する。

 遠投はその名の通り、遠くに投げる。野球の定番メニューで、プロだと70~80メートル、そこからさらに距離を伸ばす選手も。体全体を使うフォームを身につけたり、地肩を強化するトレーニングとしてとくに投手には有効といわれ、ルーティンとしている現役選手は多い。日米で活躍した松坂大輔、上原浩治らビッグネームも現役時代、練習の一環として取り入れていた。


 肩の強さの指標として「遠投●●メートル」と紹介されるように、遠投のメリットは昔から球界の定説とされてきた。だが科学的な研究が進み、投手にとって遠くに投げようとすれば投げ出しの角度が上向きになり、実際のピッチングに多くは生かされない、といった立証もされはじめている。

 そんな「球界の当たり前」に早くから疑問を抱き、様々な批判を受けながらも、オレ流を貫いてきた男が、野茂英雄だった。打者に背を向ける独特の「トルネード投法」に代表されるように、決して型にはまらず、日本人メジャーの先駆者として道を切り開いた。かつての野茂もデメリットを考えて遠投はせず、30メートルほどで強く投げるキャッチボールを繰り返していた。

 どんな練習が合うかは、人それぞれ違う。「遠投しない」選択をした野茂と佐々木朗に共通しているのは、固定観念や先入観だけで物事を判断しないということ。野球選手として突出した技術や能力を発揮している2人だが、常識を疑い、自分で考え、信じる道を貫く意識の高さこそスペシャルな「才能」といえるかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

【関連記事】原巨人 首位打者吉川にも代打でささやかれる「鉄の掟」とは
【関連記事】矢野阪神 「ちぐはぐ采配」「拙守」で一気に広がる「不協和音」
【関連記事】「あれはストライク」佐々木朗希の“球審問題”に佐藤義則氏が見解!「僕が投手コーチだったら・・・」