八村塁にとって、NBAでの3年目はどんなシーズンだったのか。"個人的な理由"でシーズン前半戦のほとんどを欠場し、周囲を…

 八村塁にとって、NBAでの3年目はどんなシーズンだったのか。

"個人的な理由"でシーズン前半戦のほとんどを欠場し、周囲を心配させた八村だったが、1月上旬に復帰して以降は驚くほどに元気な姿を見せた。徐々にプレーイングタイムを増やしていき、カイル・クーズマや、途中加入のクリスタプス・ポルジンギスといった他の主力メンバーにもすぐに適応。3月19日以降の13戦はすべてスタメン出場し、そのままシーズン終了を迎えた。



番記者が指摘したディフェンス面の課題とは?

 今季の最終成績は平均11.3得点、3.8リバウンド、1.1アシスト、0.5スティール、0.2ブロック。フィールドゴール(FG)成功率49.1%、3ポイントショット(3P)成功率44.7%はいずれも自己ベストで、特にスタメンで出た13戦の平均14.2得点(FG成功率49.0%)は過去2年を上回っている。ただ、ディフェンス、リバウンドなどに課題を残したのも事実だ。

 そんな八村のシーズンを、ウィザーズの番記者たちはどう見ているのか。ウィザーズの戦いを現地で追いかけた4人に3つの質問をぶつけ、今季の八村を総括するとともに、今後を占ってみた。

【パネリスト】

●エバ・ウォーレス(2019-20シーズン途中からワシントンポスト紙のウィザーズ番記者を務める女性ライター)

●チェイス・ヒューズ(NBC Sports Washingtonでウィザーズのレポーターを務める)

●ニール・ダラル(Hoop Districtの記者としてウィザーズを取材)

●ザック生馬(ウィザーズ日本語サイトの公式特派員として八村のNBA1年目からウィザーズに帯同)

Q1.今季の八村のプレーでもっとも評価している部分は?

ウォーレス シーズン前半戦のほとんどを欠場しながら、復帰後は自信を持って3Pを打っていた。自己最高の3P試投数、成功率をマークし、チームに必要だった得点源のひとつになった。

ヒューズ 3Pシューターとして向上したことに尽きる。その点が、カレッジ卒業後にNBA入りして以降の2年間、常に疑問視されてきた部分だった。だが今季、八村は突如として、チーム内でもっとも正確な3Pを打つようになった。シーズン前半戦をほぼ欠場したため、サンプルとなる期間は短かったのかもしれないが、シュートフォームの改造によって向上したことを考えれば、今後も高確率を維持できるのではないかと思う。八村のシュートはより大きな弧を描くようになった。これまでの努力が報われたのだろう。

ダラル 当たり前すぎる答えかもしれないが、やはり3Pを44.7%という高確率で決めたことだろう。合計試投数は123本とサンプルとしては多くはないかもしれない。それでも、過去2シーズンの成功率が28.7%、32.8%と高くはなかったことを考えると、3Pを大きな武器にできたことは大きい。

生馬 3Pが向上したことに加え、シーズン途中からの出場だったにもかかわらず、新しいコーチ陣の信頼を得てプレーイングタイムを増やしていったことも素晴らしい。3Pは入団当初から課題とされていて、ウィザーズの前アシスタントコーチ(現日本代表アソシエイトヘッドコーチ)のコーリー・ゲインズ氏のもとで改善に取り組んできた。もともとミッドレンジからのシュートは精度が高く、「もう少し下がり、3Pラインからも自信を持って打て」とコーチ陣にずっと言われてきたが、毎年その通りに数字を伸ばしてきた。

 今季は成功率44.7%、3月以降は1試合平均の3P試投数3.6と見事な成績。今後、3Pの試投数を増やしていくと、多少は成功率が下がったとしても、相手に警戒されることで八村や周囲の選手にスペースが生まれる。八村本人は「僕は3Pの選手ではない」と何度もコメントするなど、まだ自覚はないようだが、今後のキャリアにプラスの効果をもたらす武器が確立されたと思う。

Q2.現在の八村の課題は?

ウォーレス 攻守両面でもっと積極的にプレーできるようになること。確かに3Pの試投数は多く、FG成功率も高かったが、もっとドライブする場面があってもよかった。守備では、ディフェンス時のフィジカル面が物足りない。これからさらに場数を踏み、さまざまな経験を重ねることで改善されていくように思う。

ヒューズ まずオフェンス面では、ボールハンドリングは向上の余地がある。その部分を磨けば、ドリブルからショットをクリエイトする能力、ドライブ時に相手ディフェンダーの間をすり抜けるうまさもアップするだろう。今季は3Pが上達したため、今後は相手チームもロングジャンパーを警戒せざるを得ず、そうなれば自らドリブルでアタックする機会が増えるに違いない。ディフェンス面では、さらに経験を積めばより信頼度の高いヘルプディフェンダーになれるはずだ。

ダラル ディフェンス面では一歩、後退したように思う。ドラフトされた直後、チャンシー・ビラップス(現ブレイザーズのヘッドコーチ)が「相似点がある選手」として名を挙げたカワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)とはかけ離れてしまった感もある。フィジカルが武器のフォワードとマッチアップする分にはよかったが、スピード、クイックネスに秀でた選手相手には苦しむ傾向が見られた。

生馬 持ち前の身体能力を生かしたオンボール・ディフェンスは高く評価されていた。しかしシーズン中、オフボール・ディフェンスの時のコミュニケーションや、ヘルプのさじ加減がコーチ陣から課題に挙がっていた。ウェス・アンセルドJr.ヘッドコーチをはじめとする新しいコーチ陣の「できるだけスイッチをせずに守るシステム」に完全に慣れていなかったのだろう。用語やコンセプトはキャンプ中からじっくりと身につけていくもので、シーズン中に加入しての"ぶっつけ本番"でよくあれだけできたと思うし、場数を重ねればマスターできる部分なのではないかと思う。

 また、八村本人は今季終了後、「リバウンドが課題のひとつ」と話していた。今オフに体をさらに磨き上げ、よりバランスのいい体を作れれば、五分五分で競り合った際のリバウンドを相手からもぎ取れることが増えるのではないか。スイッチしてペリメーター(制限区域の外側で、かつ3Pラインの内側のエリア)で守る機会も多く、リバウンドを簡単には取れないポジションにいる時もあるが、それでも36分平均で8リバウンドくらいは取ってほしい(今季は36分平均で6.1。キャリア通算は6.6)。

Q3.八村は今後どんな選手になっていくと思うか。あるいはどんな選手を目指すべきか。

ウォーレス 八村は"ディフェンスの牽引者"を目指すべきだ。その点に磨きをかければ、オフェンス力は及第点のものがあるだけに、チームにとってより価値が高い選手になっていくだろう。

ヒューズ 来季は、八村がどんな選手になっていくかを決定づけるシーズンになるだろう。シーズン途中から合流した今季と違い、フルシーズンにわたってプレーできるはずで、ルーキー契約の最終年でもある。今夏中に新契約を締結しない限り、次の契約は来季の働き次第ということだ。

 現在の彼は最高で平均15~19得点が期待できるスコアラーであり、守備面の貢献も望める選手になっていく途上にいるように思える。そうなったら、ドラフト全体9位指名で入団した選手としては"御の字"。ただ、オールスターに選ばれるようなもっと上のレベルまで到達したいのであれば、ドリブルから自らクリエイトする能力を向上させ、3Pの試投数をさらに増やす必要があるだろう。

ダラル インサイド、ミッドレンジ、ロングレンジのどこからでも得点できる能力があるのだから、特に相手の控え選手たちと対峙した際は、もっと強引に攻める必要がある。守備面では相手を完封できるディフェンダーにはならないかもしれないが、他の欠点を補うためにも、ディフェンスでもポジティブな結果を出していかなければいけない。

生馬 本人が手本のひとりとして挙げている、(カワイ・)レナードのような選手になっていけるのではないか。八村の魅力のひとつはレナード同様に手が大きいこと。たまに見せる、ボールを鷲掴みしてリングに向かうプレー(リムアタック)ができるのは、リーグ全体でも数少ない選手のみ。さらに、八村はほぼ両利きなため、手の大きさを生かしてのリムアタックでより脅威になれる。ディフェンス面でも相手の戦力がもっとわかってくれば、ウィングスパンをより生かせるようになり、スター級の2ウェイ選手(攻守両面で優れた選手)になっていけると思う。