最近、競馬において「トラックバイアス」という言葉をよく聞く。 簡単に言えば、競馬場のコースにおける有利不利のこと。たと…

 最近、競馬において「トラックバイアス」という言葉をよく聞く。

 簡単に言えば、競馬場のコースにおける有利不利のこと。たとえば、開催当初によくあるインコース有利の馬場であれば、「内有利のトラックバイアス」といった形で使われる。

 そして実際、この"トラックバイアス"によって、勝負の行方が大きく左右されることがある。

 今年の3歳牝馬クラシック第1弾、GI桜花賞(4月10日/阪神・芝1600m)がそうだった。

 この日の阪神コースは、極端なトラックバイアスがかかっていて、圧倒的なインコース有利。内枠であるかどうかが、実力以上に勝敗のカギを握っていた。

 現に、桜花賞も馬券に絡んだのはすべて4枠から内の馬。反対に、7枠、8枠といった外枠勢は1頭も馬券に絡めず、6頭中5頭がふた桁着順に沈んだ。

 そんななか、不利な8枠16番からのスタートでありながら、最後の直線でメンバー最速の33秒3という上がりを繰り出して大外から強襲。馬券圏内(3着以内)にあと一歩の4着に食い込んだ馬がいた。

 2歳女王のサークルオブライフ(牝3歳)である。



桜花賞では大外から強襲するも4着に終わったサークルオブライフ

 2番人気に支持されながら、その期待に応えることはできなかったが、主戦のミルコ・デムーロ騎手がレース後、「外枠がきつかった」と語ったとおり、最大の敗因は枠的な不利。内有利のトラックバイアスに泣かされたことは明らかだった。

 となれば、この週末に行なわれる牝馬クラシック第2弾のGIオークス(5月22日/東京・芝2400m)。サークルオブライフは、巻き返しが最も期待できる1頭と言えるのではないだろうか。関西の競馬専門紙のトラックマンが語る。

「(桜花賞では)最後の直線で、先行する馬たちをねじ伏せるように外から伸びてきましたからね。結果はコンマ1秒差の4着と惜敗でしたが、今年の桜花賞で一番強い競馬をしたのは、この馬です。桜花賞が終わってすぐ、オークスはこの馬に◎を打つと決めました」

 デビュー2戦目で未勝利を勝ち上がって、そこから3連勝でGI阪神ジュベナイルフィーリズ(12月12日/阪神・芝1600m)を制覇。もともとこの世代では、最上位の実力馬であることは誰もが認めるところだ。

 ただ、3歳になってからGIIチューリップ賞(3月5日/阪神・芝1600m)は3着。先述の桜花賞を含めて2戦とも結果を出せていない。

 そのため、一方では「単なる"ツキのなさ"だけでは片づけられない」とする声もある。今年の3歳世代において「この馬がそこまで抜けた存在ではない」と評する意見も少なくないが、前出のトラックマンはこう反論する。

「チューリップ賞で3着に負けたのは、あくまでも本番を見据えて、試すレースをしたから。それは、後方からの末脚勝負で結果を出してきたこの馬が、あのレースでは好位置をとりにいったことでも明らか。前につけて、どれだけの脚が使えるのか、試したかったのでしょう。

 その結果、先行する形ではそれほどいい脚が使えないことがわかった。ゆえに、桜花賞では後方からの、いつもの競馬をした。

 要するに、チューリップ賞は実力で負けたわけではない、ということ。桜花賞も枠順がすべて。3歳になってからの2度の敗戦は、いずれも説明のつく敗戦で、決して『その程度の実力』などということはありません」

 サークルオブライフのいいところは、折り合い面での不安がほとんどないこと。それはつまり、オークスでは桜花賞から距離が一気に800mも延びることについても、心配はいらないということだ。

 事実、同馬を管理する国枝栄調教師は、桜花賞のレース後にこんなコメントを残している。

「終(しま)いは伸びていたからね。オークスにつながる競馬だった」

 さらに、前出のトラックマンが言う。

「関東馬のこの馬にとって、過去3戦はいずれも"アウェー"の競馬。今度は待望の"ホーム"です。このアドバンテージは大きい」

 そして何より大きいのは、この馬を支える人間たちの"力"だ。

 主戦のデムーロ騎手は、過去3年で2度オークスを制している、いわば「新・オークス男」。国枝調教師にしても、アパパネ、アーモンドアイと2頭の三冠牝馬を育てあげ、他にも重賞級の牝馬を数多く送り出して「牝馬の国枝」と称されるほどの手腕の持ち主だ。この熟練の人間たちが、大舞台での"最後のひと押し"を可能にする。

 再び激戦が予想されるオークスだが、広々とした東京の最後の直線で、大外から豪快に伸びてくるサークルオブライフの姿が目に浮かぶ。