車中泊のプロがおすすめ!#3「クルマ選び編」#1「アイテム編」を読む  #2「スポット編」を読むキャンプとも宿に泊まるのとも違う旅スタイルの選択肢のひとつとして、今人気を高めているのが車中泊だ。移動手段であり、宿泊手段にもなるクルマを充実さ…

車中泊のプロがおすすめ!
#3「クルマ選び編」

#1「アイテム編」を読む  #2「スポット編」を読む

キャンプとも宿に泊まるのとも違う旅スタイルの選択肢のひとつとして、今人気を高めているのが車中泊だ。移動手段であり、宿泊手段にもなるクルマを充実させることで、旅の可能性がぐんと広がっていく。そこで、車中泊歴約20年、クルマ旅専門家の稲垣朝則さんに、車中泊にぴったりなクルマ選びの極意とおすすめ車種5選を聞いた。



遊びの幅が広がる車中泊。プロおすすめの車種は?

──そもそも車中泊のよさはどういうところにあるのですか?

稲垣朝則(以下、稲垣) 旅やアウトドアを効率よく楽しめるのが、車中泊です。なにかと忙しい現役世代が、週末や連休といった休みの日をフルに楽しめるスタイルだと思います。

 必要な道具をクルマに詰め込んで、休日前夜に自宅を出発して、夜のうちに日中の渋滞エリアを抜けて、車中泊をし、翌朝早くから行動する。そうすることで、遠出や長旅がしやすくなるわけです。

──時間の有効活用ですね。

稲垣 フィールドの近くに泊まれることで、釣りやスキー、登山などを楽しむ時間をたっぷり取れます。遊びたい場所の近くに宿がなくても泊まれるのがいいところですね。

──翌日を元気に過ごすためにも車内の快適さが重要ですね。車中泊のクルマに求められる条件を教えてください。

稲垣 「走る」「寝る」の両方できるのが大前提。さらに、外に出して食事を楽しむためのテーブルやイス、遊ぶための道具を積載するための「収納力」も必要です。

「走る」「寝る」の両方を共存させるのは実はとても難しいこと。走っている間の乗り心地がいいシートは、体をホールドしてくれる凹凸があります。逆に、寝る時は、真っ平になるものがいい。ここに矛盾があるんですよ。乗り心地のいいクルマは、寝心地が悪いっていう......。

──寝心地がイマイチにならないためには、どうしたらいいのでしょう?

稲垣 座席部分が、フルフラットになるクルマを選ぶことです。そういう視点で、おすすめの5車種をセレクトしました。

 共通しているのは、その車種に対応した車中泊向けの補助パーツがいろいろ販売されている点です。自分で試行錯誤しなくてもOKで、簡単に取り付けできて、しかも安全基準もクリアしているのがポイントですね。

──今の愛車を、車中泊仕様に改造することはできる?

稲垣 僕は、おすすめしません。そもそもクルマの改造には厳しい規制があって、たとえば、3列シートの3列目を外してフラットにするといった変更は、法律的に至難の業です。車中泊をしたいなら、最初から条件にマッチするクルマを選ぶのがいいと思います。

──「収納力」は、どのように確保すればいいですか?

稲垣 キャンプのように荷物を外に出してから寝るわけではないので、荷物を積みながら寝られるスペースの確保が必要です。以下の3つを意識してクルマを選ぶと、収納力がアップします。

(1)ルーフや後部にキャリアを取り付けられる仕様 

(2)デッドスペースの少ない、四角いフォルム 

(3)上部・下部の空間を使って収納できる、車高が高いタイプ

 車内の空間をうまく使うアイデアとして、服をハンギングで吊るしたり、ハンモックで上部に収納したりするのもおすすめです。

●プロが選ぶ、就寝人員別・車中泊におすすめのクルマ5選

【就寝人員1名】車中泊仕様の軽バンの王道!
「スズキ・エブリイワゴン」



スズキ・エブリイワゴン photo by Suzuki

稲垣 ソロ車中泊を楽しむ人たちから、圧倒的な支持を集めているのがエブリイワゴンです。運転席・助手席部分も倒してフルフラットにできるシートアレンジが秀逸。軽キャブワゴンながら、室内長・室内幅・室内高のすべてが広い設計で、収納力にも優れています。2人でも寝られますが、キャンプなどの荷物も積載するなら1人仕様がベターでしょう。



エブリイワゴンをキャンピングカー仕様に改造した8ナンバー車

【就寝人員1名】街乗りでカッコいい&車中泊も快適
「ホンダ・シャトル」



ホンダ・シャトル photo by Honda

稲垣 車中泊仕様のクルマのイメージを覆す、スタイリッシュな印象のステーションワゴンです。ホンダ独特のシートアレンジで、フルフラットにもなる設計。シャトルも2人でも寝られますが、ギア搭載を充実させるならソロ向き。走行性能が高いので、街乗りを楽しみながら車中泊もしたい人におすすめです。



車内後部座席がフルフラットになる

【就寝人員2名】ホンダが本気で車中泊に向き合った
「ホンダ・フリードプラス」



ホンダ・フリードプラス photo by Honda

稲垣 きょうだい車であるホンダ・フリードの3列目シートを取り払った、車中泊を意識して作られているミニバンです。車中泊仕様の純正アクセサリーの充実ぶりも見逃せません。車中泊×グルメのドラマ『絶メシロード』(テレビ東京)で主人公の愛車としてもおなじみです。見た目はコンパクトながら、収納力が高く、2人でも寝られるサイズ感です。



車中泊を意識して作られている

【就寝人員2名】広々空間の代表格!ハイエースの定番モデル
「トヨタ・ハイエース スーパーGL」



トヨタ・ハイエース スーパーGL photo by Toyota

稲垣 キャンピングカー以外で車中泊にもっとも適しているのは、ハイエースなどのワンボックスカーです。このハイエース スーパーGLは貨物車だから、後部スペースがガラ空き。別売りのベッドキットを取り付ければ、大人2人が余裕で寝られる広々としたベッドと、下部の積載スペースが確保できます。同様の使い方なら、日産・キャラバンのNV350もおすすめです。



ハイエースGL内は広々としたスペースを確保できる

【就寝人員4名】家族4人でラクラク泊まれる
「トヨタ・ハイエース ワゴンGL 2段ベッド仕様」



トヨタ・ハイエース ワゴンGL 2段ベッド仕様の車内

稲垣 夫婦+子どもの家族旅行での車中泊は、人数が多くなるため、ハードルがぐっと上がります。そんなニーズに応えるのが、縦横に大きい車内を活用して、別売りの2段ベッドを組むことができるこちら。人数が多い場合は、屋根部分が拡張できるポップアップルーフを搭載するのも、ひとつの選択肢になります。

 車中泊は、何人で寝るか、キャンプギアなどをどれくらいで持って行くかで、選ぶべき車種が異なる。まずは、自分が目指すべきスタイルを見つけて、クルマの狙いを定めよう。

(終わり) #1「アイテム編」を読む  #2「スポット編」を読む

〈Profile〉
稲垣朝則 いながき・とものり 
車中泊で計1000泊を超える、クルマ旅専門家。20年以上の経験を生かし、書籍や各メディアで多数執筆。車中泊&クルマ旅による全国旅行ガイド『車中泊でクルマ旅』をウェブで展開しているほか、「Auto-Packer(オート・パッカー」と呼ばれる自身の車中泊スタイルに関するノウハウやアイデアも発信中。