J1リーグ第12節。3位の横浜F・マリノスが、14位に低迷する名古屋グランパスをホームに迎えた一戦は、後半40分を過ぎ…
J1リーグ第12節。3位の横浜F・マリノスが、14位に低迷する名古屋グランパスをホームに迎えた一戦は、後半40分を過ぎても1-1と競った展開になった。マテウス・カストロ(名古屋)のCKから生まれたゴールが、VARの5分以上の長考の末にオフサイドで覆る幸運や、同じくマテウスに30メートル近いバー直撃のFK弾を見舞われるシーンがあるなど、苦戦を強いられていたのは横浜FMのほうだった。
首位の鹿島アントラーズがサンフレッチェ広島に0-3と敗れる一方で、2位の川崎フロンターレが、清水エスパルスに2-0で勝利するという、同日の早い時間に行なわれた上位2強の結果はすでに出ていた。横浜FMは、勝ち点を落としたくない試合ながら、現状は苦戦に苛まれながら残り5分+アディショナルタイムという段を迎えていた。
すでに4人の選手交代を行なっていたケヴィン・マスカット監督が、5枚目のカードをどう切るかに注目は集まっていた。ベンチにいるフィールドプレーヤーは松原健と角田涼太朗。右利きの右SBと左利きの新人CBである。一方、ピッチに目を凝らせば、最も弱っている選手は、名古屋の看板選手、マテウスの対応に追われることが多かった左SBの永戸勝也だった。
ACL(アジアチャンピオンズリーグ)以前なら、松原健を右SBに投入し、それまで右SBを務めていた小池龍太を左SBに回すというパターンが多かった。ところが後半40分、厳密に言うと39分30秒、永戸に代わってピッチに投入されたのは角田で、そのまま左SBに入ったのだ。

出場時間を増やしている横浜F・マリノスのディフェンダー、角田涼太朗
角田はACLで、フィールドプレーヤーのなかでは岩田智輝、喜田拓也、小池龍太、西村拓真に次ぐ5番目の出場機会を得ていた。それまでのJリーグの戦いと比較すると、チーム内でのポジションを大きく上昇させていることが一目瞭然だ。ケヴィン・マスカット監督の評価を大きく上げていた選手になる。ACLでは6戦中3試合に先発。1試合がCBで2試合が左SBだった。CB兼左SB。角田はすっかり多機能型選手に変容していた。
推進力やパスセンスも兼ね備えるディフェンダー
CBがSBとして出場すると、SBの役割は重ためになるのが通例だ。守備を重視した采配に映るが、名古屋戦の終盤は、是が非でも1点がほしい状況だった。そこで「CBとして出場していた選手が左SBとして出場した」と記せば、大きな期待は寄せにくいものだろう。
ところが、角田が投入されたちょうど1分後、横浜FMに勝ち越しゴールが生まれた。西村のシュートを名古屋GKミチェル・ランゲラックがセーブするも、そのこぼれ球をアンデルソン・ロペスが突いて生まれた得点だった。西村と絡んだのは藤田譲瑠チマだったが、そのひとつ前、藤田にボールを繋いだのは仲川輝人で、その仲川に当てたパスを送ったのが角田だった。
流れのなかから初めてボールを受けた角田は、左の深い位置から利き足の左足で、素早いタイミングで寸分狂いのない縦パスを仲川に送った。
CBとしてプレーしている時も、光っていたのは攻撃的なセンスと、それに伴うフィード力だった。左足のキックが冴えるシャープなCBだ。しかしながら、横浜FMにはすでに一定の水準に達したCBが揃っている。岩田智輝、畠中槙之輔、エドゥアルド、實藤友紀。左SBも小池、永戸、小池裕太と粒ぞろいだ。だが、CB兼左SBの多機能型選手となると、チーム内のプライオリティは上昇する。先述した中2日で6試合を戦うACLでの出場時間にそれは表れている。
184センチ77キロは、CBとしては標準体型だが、左SBとしては大型だ。CB的な迫力を備えた左SBながら、動きは鋭く、ケレンミがない。さらに言えば、ボールを運ぶ推進力、攻撃力、パスセンスも兼ね備える。
1999年生まれの22歳。前橋育英で高校選手権優勝を飾り、筑波大へ進学したが、昨年、一昨年と、各一度ずつ、横浜FMの特別指定選手としてJリーグの土を踏んでいる(横浜FMへの正式加入は大学4年の夏)。また、昨秋行なわれたU-23アジア選手権では、カンボジア戦にスタメン出場している。
ただ、大学を経由したせいか、たとえば同じ浦和レッズの下部組織出身で、東京五輪にも出場した同学年の橋岡大樹(シント・トロイデン)と比較すると、出世が遅れている印象は否めない。しかし、日本代表を狙おうとしたとき、橋岡がプレーする右SBより左SBのほうが、ハードルが低いことも事実だ。
こう言っては何だが、先述の名古屋戦で仲川に送ったフィードは、長友佑都(FC東京)にはまず出すことができない種類の縦パスである。橋岡より日本代表の座は近いと見ることもできる。今季は遅れを挽回するチャンス。横浜FMのCB兼左SBがどこまで成長するか。目を凝らしたい。