リーグ戦初アーチに頬をゆるめた4年生は、異色の経歴の持ち主だ。東京六大学野球は30日、春季リーグ第4週の2試合を明治神…
リーグ戦初アーチに頬をゆるめた4年生は、異色の経歴の持ち主だ。東京六大学野球は30日、春季リーグ第4週の2試合を明治神宮野球場で行い、東大の阿久津怜生(あくつ・れお)外野手(4年)は早大戦の9回、1点を追う場面で右翼席へ値千金の同点ソロを放つなど2安打2得点の活躍。プロ併用日のため、試合は2-2で9回引き分けとなった。
東大はエース井澤駿介投手(4年)の力投もあり7回まで1-1の同点も、8回2死から早大に1点の勝ち越しを許した。このまま終わってしまうのか、と思われた9回。阿久津は1死無走者で打席に入ると2球目、高めのストレートをかちあげた。
打球は高く舞い上がってライトスタンドへ着弾。ダイヤモンドを1周し、まるでサヨナラ勝ちしたかのように盛り上がるベンチに迎えられた。「とにかく塁に出ることが最優先だったので。たまたまという感じです。狙ってはいなかったんですけど…」と、リーグ戦初本塁打を照れくさそうに振り返った。

宇都宮高(栃木)時代は硬式野球部に所属していたものの、東大入学後はまずアメフト部に入った。50メートル6秒1の俊足を生かしランニングバックとして活躍したが、神宮球場での観戦から野球への思いが再燃。2年夏に転部してきたという異色の経歴の持ち主だ。
3年生になった昨春にリーグ戦デビューを果たすと、走力を生かしてリーグトップタイの6盗塁をマーク。連敗を「64」でストップさせた法大2回戦では代走として出場し、二盗後に先制のホームを踏んだ。

昨年からスタメン出場の際は1、2番が多く、今季も慶大戦と明大戦の4試合に1番打者で出場したが、安打は1本のみ。この日は6番に打順を下げていた。井手峻監督からの「反対方向へライナーを打て」とのアドバイスを生かし、5回の第2打席でも得点につながるレフトへの二塁打。そして同点弾という活躍には指揮官も「びっくりしました」と驚きを隠さない。
アメフト部だったことは、野球にも生きている。当時は1日7食とハードな筋トレで、体重が入学時の60キロから15キロ増えた。「僕はもともと細くて、小さかったので、(アメフト部で)パワーが付いたのがすごく大きいことかなと思います。高校の時は打球が飛ぶ方ではなかったので」と口にする。
うれしいリーグ戦初本塁打を、より価値のあるものとするには、2回戦以降の結果が重要だ。「勝ちきれなかったのはすごく悔しいですけど、負けなかったのはいいかなと思います。しっかり明日、明後日で、勝ち点を取りたいです」。目標の「最下位脱出」へ、阿久津がグラウンドを駆け巡る。
(Full-Count 上野明洸)