鎌田大地は今シーズン、ヨーロッパで戦うチームの主力の日本人選手として一番の高みに立ったと言える。 所属するドイツ・フラ…
鎌田大地は今シーズン、ヨーロッパで戦うチームの主力の日本人選手として一番の高みに立ったと言える。
所属するドイツ・フランクフルトのヨーロッパリーグ(EL)のベスト4進出に大きく貢献している。グループリーグでオリンピアコス、ロイヤル・アントワープ戦で計3得点し、ラウンド16ではベティスを下すゴールを決めた。そして準々決勝のバルセロナ戦では、世界最高MFの呼び声も高いペドリを封じる一方、鮮やかにチャンスを作り出している。
ELでファイナル進出をかけて戦う鎌田は、日本人が世界で戦うための範を示したと言える。
カタールW杯で、日本は同組のスペイン、ドイツという超強豪とどう戦うべきか。フランクフルトの戦いに、またもヒントがあった。

バルセロナ戦にフル出場、大金星に貢献した鎌田大地(フランクフルト)
激闘となったカンプ・ノウでのバルサ戦、フランクフルトは小さな運に恵まれている。
満員のスタジアムは完全に敵地になるはずだったが、バルサはチケット収入を重視して、ドイツ人に3万枚ものチケットを売ってしまった。これに抗議を示すために応援を拒否したバルササポーターもいて、会場はほとんど中立地になっていた。
その勢いを駆るように、フランクフルトは開始から圧力をかけている。バルサが戸惑っている間に、クロスからゴール前での競り合いでエリック・ガルシアのPKを誘発。3分、呆気なく先制した。
日本がスペイン、ドイツに勝利するには、小さな運も必要かもしれない。しかし、きっかけは何でもいいのだ。勢いを味方につけられるか。
スペイン代表エリック・ガルシアのファウルは、不測の事態ではなかった。彼はビルドアップ技術こそワールドクラスだが、単純なマーキングには問題を抱える。PKを与えたシーンも、相手FWに手をかけながら、ボールに触ることができなかった。
そんな守備に対して、たとえば上田綺世(鹿島アントラーズ)のように体が強く、ボールを受けるうまさもあるFWは悪夢を与えられるだろう。古橋亨梧(セルティック)の単純なスピードも悩みの種になるだろう。ペナルティエリア内で守らせたら、あるいは後ろ向きに守らせたら、日本は優勢を作れるはずだ。
まずはブスケッツを不自由に
先制後、フランクフルトは受け身に回らざるを得なかった。フランス代表ウスマン・デンベレの攻撃力はすさまじく、序盤は手を焼いた。しかしラインをコントロールし、下げすぎてはいない。3-4-2-1というよりも5-4-1のような布陣で、各自の持ち場を点として線で結び、防御線を作っていた。破られそうになると、カバーに入る形で、デンベレにはセルビア代表フィリップ・コスティッチがしつこくつき、被害を最小限にとどめた。
鎌田は第1戦でのシャドーよりも、いくらか守備的な立ち位置になった。周りの選手と辛抱強く防御線を作って、名手ペドリにボールを入れさせていない。ファウルになることも多かったが、高いプレー強度でチャレンジしているのが伝わった。
「いい守りがいい攻撃を作る」
その模範だった。
フランクフルトは選手の距離感が良好だった。たとえば、敵の司令塔でスペイン代表でも中核を担うセルヒオ・ブスケッツを、1トップとボランチで三角形の波間に沈め、容易にボールを入れさせていない。相手の攻撃にストレスを与える一方、ポジションのよさから随所でカウンターを発動。前半36分のコロンビア代表FWサントス・ボレの2点目は、その産物だ。
「バルサが我々のスピード、パワーに苦しむことは分かっていた。チャンスを作らせないようにゾーンで守った。まずはブスケッツを不自由にすることが目的で、その点、プランどおりに戦えた」
フランクフルトを率いるオーストリア人、オリバー・グラスナー監督の言葉だ。
日本代表の機動力も、十分に武器になるだろう。たとえば、この日、スピードで押し込まれていたスペイン代表ジョルディ・アルバを、伊東純也(ゲンク)は叩きのめせる単純な速さがある。また、パワーの面でも日本は怯むことはない。バックラインの吉田麻也(サンプドリア)、冨安健洋(アーセナル)、酒井宏樹(浦和レッズ)の3人は、攻撃を跳ね返すだけの膂力の持ち主だ。
バルサ戦での鎌田は攻撃力も光った。左ウィングバックのコスティッチへいくつもスルーパスを成功。まさにホットラインで、後半に左で相手を引きつけた後、ヒールで出したパスは芸術の域だった。そして67分、スローインからの落としをバックラインの前で受けると、コスティッチに絶妙のダイレクトパスを入れ、これが3点目につながっている。
鎌田が日本代表のトップ下に入った場合、左サイドの相棒には三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ)、久保建英(マジョルカ)などが考えられる。その攻撃は色彩豊かなものになるだろう。ワンタッチを入れた連係は、スペイン、ドイツも脅かすだけのクオリティがある。
試合は終盤、有力な交代カードを次々に投入するバルサに対し、フランクフルトは劣勢に立った。しかし、外側を破られても中央の守備は堅く、どうにか跳ね返した。アディショナルタイムに入って、ブスケッツのスーパーミドルやPK献上で2点を返されたのは戦力差が出たと言えるが、見事に勝ちきった。
日本がカタールでスペイン、ドイツから勝ち点を奪うには、フランクフルトの戦いがひとつの模範となるだろう。フォーメーションにかかわらず、守りを固めながら下がりすぎず、攻撃では閃きと機動力で勝負する。
4月28日、フランクフルトはプレミアリーグの伏兵、ウェストハムと対戦する。バルサほどではないにしても、やや格上にあたるか。そこでの戦い方にも注目だ。