村田諒太がスパー公開 ボクシングのWBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(帝拳)が28日、4月9日に控えるIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との王座統一戦(さいたまスーパーアリーナ)に向け、都内の帝拳ジムで練習を公開…

村田諒太がスパー公開

 ボクシングのWBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(帝拳)が28日、4月9日に控えるIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との王座統一戦(さいたまスーパーアリーナ)に向け、都内の帝拳ジムで練習を公開した。3分×2ラウンドのスパーリングなどで約1時間半調整。待望のビッグマッチへ、「試合前の満足感」に警戒感を示した。

 類まれな思考をフル回転させて備える。決戦まで12日。今、何を思うのか。村田は率直な胸の内を明かした。

「なかなか経験しない心境ですよね。もちろん恐怖心もちょっとあるんですけど、2年も延期、延期と繰り返されると、延期が一番怖いんですよね。頼むから延期にならないように、自分自身が凄く気をつけている。試合できないことを考えたら、試合ができる恐怖が少し和らぐ。そういった経験は今までない」

 最後の試合は2019年12月の初防衛戦。コロナ禍により、試合が決まりかけては流れるのを繰り返した。ゴロフキン戦も昨年末からオミクロン株の余波で3か月半の延期。過去の試合は「『試合が終わったら解放される』という救いが常にあった」と決して動くことのないリングを目標に苦しみを乗り越えたが、今回は別の不安を抱える難しさがある。

 元3団体統一王者のゴロフキンは、ミドル級最多通算21度の防衛成功を誇る歴史的選手。村田がかねてから対戦を望み続けてきた最強ボクサーだ。日本ボクシング史上最大級のビッグマッチ。試合が実現するだけでも称えられる興行だ。しかし、村田はそこに落とし穴があることを知っている。

「ボクサーでよくあるのは『この試合が最後』『もうここまで来た』と思った時、リングに上がる前に満足感を得て燃え尽きてしまうこと。それが結構あるらしいですね。それによってリングで実力を発揮できないとか、集中が切れてしまうこととかがある。それが結構怖い。僕の中で一番嫌なパターン。そうならないように、メンタルを持っていかなきゃいけない」

豊富な経験が生かされるのか、村田が「わからない」と答えた理由

 アマチュア時代に世界選手権銀メダル、ロンドン五輪金メダルを獲得。プロになり、ミドル級で世界王座を2度奪取した。36歳。積み重ねてきた経験が生かされるのではないか。この問いにも「わからない」と答えた。このスタンスこそ、聡明なボクサーだからできるスタンスだった。

「当日の予想はできないし、4月9日の自分自身はその時の僕にしかわからない。その日にそういうふうになってしまうという恐れを持っておいて、試合に向かおうと思います。要はそういう心づもりで、ということです。

『やったぁ。ゴロフキン戦までたどり着いたぁ。2年間ずっと我慢してた。ここまで延期を乗り越えた。よしリングだぁ……はぁ……』って、そこで感傷に浸ってしまうみたいな。そうならないよう、感傷に浸る自分がいるんじゃないかという予測のもと、その日を迎える。それぐらいしか対策できることはない。予測だけして4月9日を迎えたいなと思います」

 スパーは4月1日に打ち上げ予定。新型コロナウイルス感染対策のため、1か月半ほど家族と離れたホテル生活が続いている。陣営の本田明彦会長も「村田に一番期待するのは、頭と気持ちの強さ」と地頭の強さに信頼を寄せた。今、必要以上に考えることはない。「勝つ」ために全てを尽くすだけだ。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)