プロ野球2022開幕特集 オープン戦で5本塁打を放つなど、覚醒の予感漂う日本ハム・万波中正。昨シーズン24本塁打を放ちな…

プロ野球2022開幕特集

 オープン戦で5本塁打を放つなど、覚醒の予感漂う日本ハム・万波中正。昨シーズン24本塁打を放ちながら、リーグワーストの173三振を喫した阪神・佐藤輝明。9キロの減量に成功して5年目のシーズンを迎える日本ハム・清宮幸太郎。今季より外野手登録となりレギュラー獲りを目指す中日・根尾昂。ロッテの中軸として期待がかかる安田尚憲......。気になる5人のバッティングについて、かつて鈴木誠也や岡本和真を育てた名コーチの内田順三氏に語ってもらった。



オープン戦で5本塁打と活躍中の日本ハム・万波中正

万波の覚醒はホンモノか?

---- BIG BOSS・新庄剛志監督の就任で話題の日本ハムですが、高卒4年目の万波中正がオープン戦で5本塁打と爆発しています。

「横浜高校からパワーヒッターとして入ってきて、身体能力はあるし楽しみな選手です。ただ、まだ自分のスイングをものにしていない印象です」

---- と、言いますと?

「自分から勢いをつけて振りにいっている分、なんでもかんでも打ちにいって、外角の変化球を振らされる場面が増える。バランスよくスイングできていないので再現性がまだ低く、一軍で安定して結果を残すには少し時間がかかるかもしれません」

---- オープン戦で結果が出ている要因はどこにあるのでしょうか?

「新庄監督が前向きな言葉で選手を乗せていると感じます。それと万波はスイングのバランスが粗いとはいえ、『強く振ろう』という意思があるのはいいことです」

---- 技術的に気になるポイントはありますか?

「スイング軌道はまだ少し外から出ているし、打ったあとに下半身がぐらつくのは上体に余計な力が入っている証拠です。力を入れなくても打球を飛ばせる、自分のなかでの最適なバランスをつかめたら化けるでしょう。強くインパクトを迎えにいきながら、打つべき球をセレクトできるようになる。村上宗隆(ヤクルト)だって、そうでしょう?」

2年目・サトテルのデキは?

---- 村上はレギュラーに定着したプロ2年目(2019年)は36本塁打を放った一方で、184三振を喫していました。

「そう。それが次の年にはかなり減って(115三振)、打率も3割に乗ったでしょう(打率.231から.307へ向上)。今年でいえば佐藤輝明(阪神)なんか、どう変わるのか楽しみです」

---- 佐藤も昨年は衝撃的な本塁打を多く放った一方で、173三振を喫しました。

「今年はどれくらい三振が削れるか。三振は何も残らないけど、バットに当たりさえすればヒットになる可能性だってあるじゃないですか。当てにいかずに、どうアプローチしていくか。変化しないと成長はありません。だから佐藤の成長がすごく楽しみです」

---- 成長途上と考えると、万波もまだ三振数が多くなりそうですね。

「若いので、今は三振を怖がらずに『バットを振れ振れ』でいいと思うんです。今は体内の10の力どころか、12の力を使って打とうとしている。それが経験を通して6〜7くらいの力で打てるようになってくれば、自然とボールをつかまえるタイミングがわかってくるでしょう」

---- 同じく日本ハムの清宮幸太郎は5年目を迎えます。

「高校生の頃から素材はすばらしいし、日本ハムとしてはなんとしても新たなスターになってもらいたい選手でしょう。昨年はファームでホームラン王(19本塁打)になりながら、打率は2割に満たず一軍昇格すらなかったのは残念です。プロ2年目に右手有鉤骨を骨折して、打撃の感覚が若干狂ったのも響いているのかもしれませんね」

---- 今年は新庄監督の提案もあり、体重を絞ったことも話題になりました。

「うーん。体のキレを出したい意図はわかるのですが、私はその選手の持っているものを大事にしたほうがいいという考えです。新庄監督のようにスタイルがよく動きにキレのある選手もいれば、中田翔(巨人)のように少しポチャッとしているほうが力を出せる選手もいる。今の清宮を見ると確かにやせましたが、打席で線が細く頼りない印象を受けてしまいます。その点は心配ですね」

---- 技術面はいかがですか?

「テイクバックをとる際に上体をねじって、左ヒジが体の内側へ深く入るのが気になります。この使い方だと、バットがスムーズに出てこないんです。低めの球は打てても、高めは打ちづらいんじゃないでしょうか。私は正確性、再現性が打撃の基本要素だと考えていますが、彼にはまだ十分に備わってないように見えます」

---- 期待が高いからこそ、要求も高くなってしまいます。

「絶対に能力はあるのだから、小さくまとまってほしくありません。上体をねじってトップを作るのではなく、グリップを捕手側に引いてトップを作る。そのほうがボールとの距離感が取れて、正確にとらえられるようになるはず。有望な選手だからコーチ陣も口を挟みにくいのかもしれませんが、私は打撃の基本原則を教えることは大事だと思います」

4年目・根尾昂の課題とは?

---- 今季4年目を迎える根尾昂(中日)もレギュラー獲得が期待されています。

「外野一本に絞ったとなると、よほどバッティングで特徴を出さないといけませんね。今年から立浪和義が監督になりましたが、彼は立浪の現役時代とタイプが似てきました。パワーヒッターではないので、より正確にとらえなければいけません」

---- 高校時代から強くスイングしたい意図を感じる打者でしたが、長距離砲ではないということですね。

「鈴木誠也(カブス)のように中距離打者から体を鍛えて長距離砲になる例もありますが、根尾は体格的に恵まれているわけではないですから。過去3年の成績を見ると、打率が.165で長打率は.211、出塁率は.238。これでは一軍のレギュラーとしては使えませんよね」

---- 今季の根尾はどう見ますか?

「素直にバットが出ているように感じます。変に肩を入れて反動をとらず、シンプルに打ちにいっている。ボールをつかまえにいく時のバットの入り方がいいです」

---- 課題があるとすれば、どんなところでしょうか。

「続けることじゃないですか。結果が出ないとすぐにフォームを変えてしまうと聞きますが、フォームをつくるには我慢強くならないと。思考力のある選手だと聞きますが、自分自身を生かすための知恵を『続ける』という方向に生かしてほしいですね」

---- これだけ情報があふれる時代ですと、新しい情報に目移りして軸が定まらないことも多そうですね。

「ロッテの安田尚憲などすばらしいパワーを持っていて楽しみなのですが、見るたびにフォームが変わっている印象です。詰まることが怖いのか、ボールとの距離が取れていないように見えます。個人的には背中がスッと立ってグリップが低い位置にある時のほうが、力みが抜けていい構えだと感じます」

---- 安田も井口資仁監督から我慢強く起用されていて、正念場ですね。

「私はずっと我慢して使い続けても、一流になる選手は少ないと考えています。何試合かチャンスを与えられて、答えを出したヤツが生き残る。次から次へと新しい選手が入ってくるなかで、成長のない選手が淘汰される。それがプロの世界です。今回紹介した選手たちも、チャンスを生かして飛躍のシーズンにしてもらいたいですね」