Mリーグ女流雀士インタビュー(5)瑞原明奈@前編 昨年10月から始まったMリーグ2021のレギュラーシーズンは3月11日…
Mリーグ女流雀士インタビュー(5)
瑞原明奈@前編
昨年10月から始まったMリーグ2021のレギュラーシーズンは3月11日に閉幕。上位6チームによる3月21日からのセミファイナル進出に向けて、最終日まで熾烈な戦いが繰り広げられた。
レギュラーシーズンの個人スコアトップに贈られるMVPを獲得したのは、年末から破竹の勢いでポイントを稼いだU-NEXT Piratesの紅一点・瑞原明奈(最高位戦日本プロ麻雀協会)。2児の母である彼女がMリーグを戦う理由とは......。
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瑞原明奈(みずはら・あきな)1986年11月19日生まれの35歳
---- 麻雀を始めた経緯を教えてください。
「20歳ぐらいの時に、CSチャンネルで麻雀番組に出会って。ルールも役も何も知らなかったんですけど、見ているうちにちょっとずつ覚えて、そのままハマり込んでいきました」
---- 実際に打つようになったのも、その頃なんですか?
「しばらくは今で言う『見る雀』。見ることがメインのファン層だったんです。頻繁に打つようになったのは23歳くらいからでしたね」
---- その頃は会社員ですか?
「大学を出て一般企業に就職していた頃ですね。25歳の時に結婚をして、引っ越すことをきっかけに会社はやめたんですけど、会社で私の麻雀好きは知られていたので、『麻雀プロになるらしいよ』という根も葉もない噂を立てられました(笑)」
---- 麻雀プロになることは意識していたんですか?
「いえいえ。まさか本当になるとはまったく思っていなかったですね」
---- それがどう転んでプロ雀士に?
「結婚した頃からセットメンツが集まるようになって、頻繁に麻雀を打てるようになったんです。その頃にオンラインの麻雀番組で『一般の麻雀好きな女性で、麻雀を強くなりたい人を募集』というのに応募して。それで番組に出ながらトッププロの方に麻雀を教えていただいたり、アマチュアも参加できる大会に出場したりという経験をしているうちに、競技麻雀をもっとじっくりやってみたいと思って、プロになりました」
---- プロには何歳でなったんですか?
「たしか27、28歳くらいだったと思います」
---- なぜプロになろうと?
「一般の麻雀大会に出て、最終戦この着順だったら優勝みたいな条件がかかった一戦があって。別に優勝しても何もない普通のワンデー大会なんですけど。そこで自分の条件を考えながら打つ麻雀がすごく楽しくて、もっともっとこういう麻雀を打ちたいと思うようになったのが一番大きい理由かなと思います」
---- 最初は日本プロ麻雀協会に入られたんですよね。
「そうですね。2014年にプロになって、1年目はいろんな対局に積極的に出ていたんですけど、その年の冬に第一子の妊娠がわかって。2年目からは産休・育休を繰り返す感じになっていました」
---- それで現在所属する最高位戦日本プロ麻雀協会に移籍されるんですね。
「そうですね。夫のお休みとの兼ね合いもあって、いつになったらリーグ戦に戻れるかの目処も立たない状況のなかで、最高位戦ならリーグ戦への出場を調整できそうだと知って、移籍をすることにしました」
---- 競技麻雀をやめる選択肢はなかったんですね。
「それは全然なかったですね」
---- 子育てをしながらプロ雀士を続けるのは相当大変だと思うのですが、旦那さんは子育てにすごく協力的なんでしょうね。
「そうですね、協力的だと思います。ひとり目の子は2015年に生まれたんですが、その時は私のワンオペが多くて。でも、ストレスはなかったですね。私はいろんなことに手を抜くのが得意なんですよ(笑)。
家事でも子育てでも、私は完璧主義ではないので、『このラインまでやっておけばいい』っていう自分に甘いラインを設定して(笑)。そのラインを守りながら、子どもが寝たあとの時間などにネット麻雀をしたりして。だから、子どもが寝る時間までに家事はすべて終わらせるように決めていましたね」
---- 育児をしたことがある人ならわかると思うのですが、実際にそれをするのは大変ですよね。乳児は動き回らない一方、睡眠時間が断続的で夜でも2〜3時間おきに目覚めます。そのたびにお母さんも起きなければならないので、慢性的な寝不足から体力はだいぶ吸われてしまう。夜の空いた時間は少しでも寝たいっていう欲求によく負けなかったですね。
「第一子の時は『マザーズ・ハイ』じゃないですけど、アドレナリンみたいなのが出ていた気はします。本当に無敵モード。ひとり目の子は夜も全然寝ないし、夜泣きもひどくて手がかかったんですけど、大丈夫でしたね。ずっと子どもがほしいと思っていたこともあって、この子のためなら何でもできるみたいな気持ちがあったせいか、なんとかなっていました」
---- 赤ん坊が寝たのでネット麻雀を始めたけど、途中で起きたなんてこともあったんでしょうね。
「ありましたね。『寝たと思ったら30分で起きた、ネット麻雀、まだラス前』みたいな。ネット麻雀でさえろくに打てない時期もあったんですけど、仕方ないなと割りきっていました。できないことを焦っても何もメリットはないので。その時にできることを、できる量でやろうというのをベースにしてやっていました」
---- 第一子だけでも大変なのに、Mリーグに参戦された2019年には第二子を出産されているんですよね。
「そうですね」
---- 4歳の幼児と新生児を抱えてのMリーグ1年目は、想像を超える大変さがあったと思うのですが。
「それ以前までと同じやり方はさすがに厳しいということで、夫や夫の家族を含めた家族全体でバックアップしてもらって乗りきりました」
---- 瑞原選手の競技麻雀への熱量を知っているとはいえ、家族がそこまでしてMリーグのために協力的になってくれる。その最大の理由はなんだったのですか?
「個人的に大きかったと思うのは、Mリーグは年俸制でしっかりと報酬がもらえるということです。家族に対して、それがひとつの説得力になっていて。報酬が出るわけでもない、むしろお金を払わなきゃいけないプロ雀士活動に『行きたいので、子どもをお願いします』と言っても難しかったと思うんです。
でも、Mリーグは企業にスポンサードしてもらって、報酬をもらう形になっている。夫にも夫の家族にも納得して協力してもらえた感じがあったので。お金は説得力になるなと思いました」
---- Mリーガーは最低年俸が400万円に設定されていますからね。そこから3年が経ちましたが、現在は基本ワンオペに戻っているんですか?
「そうですね。今は子どもがふたりとも幼稚園に通っているので、日中に自由時間も増えましたし、割とバランスが取りやすくなっています。もちろん、夫の協力もあります。Mリーグ1年目を乗り越えたことで、夫もできることが増えて育児レベルがグンと上がったんです。それもあって、いろいろお願いしやすくなっていますね」
---- 夫に育児や家事を手伝わせたいお母さんは麻雀をやったほうがいいですね(笑)。
「麻雀じゃなくてもいいですけどね(笑)。ただ、必要に迫られたらやるんだな、と思いました。夫は、ひとり目の頃はお米の炊き方もわからないタイプだったので、私が何でもしなきゃという感じだったんですけど、Mリーグに参加するようになって、いざ夫がやらなきゃいけない状況になったら、できるようになるものなんだなと思いました」
(後編につづく)
【profile】
瑞原明奈(みずはら・あきな)
1986年11月19日生まれ、長崎県佐世保市出身。早稲田大学を卒業後に一般企業に就職するも、結婚をきっかけに退職。2014年に日本プロ麻雀協会でプロ雀士となる。翌年、妊娠・出産を経て、2017年に最高位戦日本プロ麻雀協会に移籍。2019年、Mリーグのドラフト会議にてU-NEXT Piratesから指名を受けてMリーガーとなる。