西村優菜インタビュー(後編)前編はこちら>>――昨年末に戦いを終えた段階で、体重が開幕前に比べてかなり減ってしまったとうかがいました。「夏場に軽い夏バテみたいな感じで食べられなくなった時期があって、そこから食べても(体重が)増えない時期が続…

西村優菜インタビュー(後編)



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――昨年末に戦いを終えた段階で、体重が開幕前に比べてかなり減ってしまったとうかがいました。

「夏場に軽い夏バテみたいな感じで食べられなくなった時期があって、そこから食べても(体重が)増えない時期が続いて、終わってみたら5kgぐらい減っちゃっていました。

 一年中ゴルフをやっていて、丸一日屋外にいると、昼ご飯がなかなか摂れないんですよね。ラウンド中に補食を摂ったりして対応できたらよかったんでしょうけど、スルーでプレーしているとなかなか食べられないことのほうが多く、ゼリーを口にすることぐらいしかできないこともありました。そのあたりは今後の課題だと思います」

――まもなく2022年シーズンが始まりますが、ベスト体重に戻せましたか。

「2月に入って沖縄で合宿を行なっていたんですけど、食事量を増やして、ベストまであと1kgぐらいのところまで戻ってきました。開幕戦にはベストの体重で臨めると思います」

――このオフのトレーニングで意識したこと、課題にしていたことを教えていただけますか。

「1月いっぱいは一年間戦える体作りをメインにしていて、主に有酸素系の運動を多めにしていました。専属のトレーナーさんがいるわけではないので、練習メニューはすべて自分で考えて、これまでに経験したことのあるトレーニングを組み合わせてやっていましたね。外を走って、動的ストレッチをしてみたり、ジャンプしたり......動きながら身体の状態を確認していました。

 あと、飛距離アップを目標に、MAXに振った時の値を高める練習にとり組んでいました。素振り棒をバンバン振って、曲がってもいいからとにかくドライバーを振りきる練習もとり入れて。昨年より5ヤード、できれば10ヤードはドライバーの飛距離を伸ばしたいです。

 そして、2月に入ってからは毎日、コースに出ていました。最初はあらゆるシチュエーションへの対応の仕方を意識しながらラウンドし、そのあとはスコア作りを意識して、試合の感覚に近づけるようにラウンドしていました」

――昨年末には弾道計測器を購入したとうかがいました。そのメリットは感じていますか。

「自分のゴルフについて、より研究することになりますよね。そういうの、私は好きなんです。ドライバーのMAXの値を高めるうえでも、ボールスピードを弾道計測器で確認しながら、どれだけ(ボールが)上がったかを確認できます。10ヤード刻みで距離感をつかむ練習でも有効活用できています」

――練習で最も時間を割いているのは、やはりショートゲームですか。

「そうですね。ドライバーの飛距離が心許ない分、私の場合はショートゲーム勝負になる場面が多いですから」

――デビューシーズンに4勝を挙げ、賞金ランキングも5位とすばらしい成績を残しましたが、今季の目標を教えてください。

「複数回優勝と、海外メジャーへの挑戦です。最終的な目標が『海外メジャーで優勝すること』なので、そこに向けた第一歩目として、どんどん海外メジャーに挑戦できるようにロレックスランキングを上げていきたいなと思っています」

――今季は賞金女王も見据えた戦いとなるのではないでしょうか。

「複数回優勝という目標を達成できれば、賞金女王も狙える位置にあるとは思うんですけど、今年は海外メジャーにも挑戦したいので、出場試合数が少なくなってしまうかもしれません。まずは複数回優勝を。その結果、賞金女王も狙える位置につけられたらいいかなという感じです」

――海外メジャーには2020年の全米女子オープンに出場。その経験によって、海外メジャーの出場意欲は一段と増した感がありますか。

「一度経験したことで、向こうの雰囲気を味わうことができましたから。トッププレーヤーが集まる試合を経験することは大事だし、私には『海外メジャー制覇』という最終目標があるので、なおさらです。それを達成するためにも、今季はいろいろと吸収する一年にしたいと思っています」

――海外メジャーについては、出場の権利を勝ち獲ることができれば、すべて参戦する予定でしょうか。

「もちろん、コロナの状況を見ながらとなりますし、隔離期間もあるでしょうから、慎重に検討してからになると思います。それでも、気持ちとしてはすべての権利を得て、すべての海外メジャーに挑戦したいと思っています」

――渋野日向子プロが2019年に全英女子オープンを、笹生優花プロが昨年の全米女子オープンを制しました。近年、日本の女子プロが海外メジャーを制していることで、「私にもできる」という気持ちが芽生えるのではないですか。

「海外メジャーで優勝したいというのは、ずっと以前から持っていた目標ですけど、それを実現している選手を見て『私にもできる』と思うことはありません。ただただ『すごいなあ~』と。

 海外には飛距離が出る選手はたくさんいます。私との飛距離の差は、日本女子ツアーよりも大きいし、そもそもコース自体が長い。飛距離をカバーする部分の技術をもっともっと強化しなければいけないと思っています」

――昨年、国内のメジャータイトルであるワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップを制したことで、3年シードの権利を獲得しました。海外メジャーだけでなく、海外ツアーにも挑戦しやすくなったのではないですか。

「もちろん、それはありますね。どんどん挑戦していこうという気持ちになりましたし、サロンパスカップの優勝は自分にとってすごく大きかったです」

――同じ「ミレニアム世代」の古江彩佳プロがひと足先にアメリカを主戦場にするようになりました。

「すごく刺激になりますね。ただ、自分は自分の目標に向かって頑張るだけ。自分のペースでゴルフをやれればと思います」

――英語の勉強もされているのでしょうか。

「え~っと......ちょっとずつ、ですかね(苦笑)。日本にいると、なかなか難しくて......。USGAのホームページをチェックすることもあるのですが、全部英語なのでちょっと頭が痛くなったりします(笑)」

――昨シーズンは1億7000万円あまりの賞金を稼ぎました。いきなり大金を手にして、人生観が変わったりしませんでしたか。

「ハハハッ(笑)。自分では何が起こっているのかわからないです。正直、庶民的な部分が抜けないんですよね。金銭欲とかないですし、みんなと美味しいご飯を食べられるとか、そういう小さな贅沢がモチベーションになります。お金持ちになった気分はぜんぜんないです(笑)」

――西村プロにとって、プロとしてプレーすることは仕事なのでしょうか。

「私は仕事だと割りきったことはないですね。小さな頃からゴルフをやってきて、夢を叶えたいという気持ちのほうが強い。仕事と思ってしまうと、(ゴルフが)イヤになっちゃう時期もあるかなと。今は楽しいことが毎日できて、幸せだなあと思います」

――とはいえ、レジャーとは違いますよね。

「そうですね......でも(感覚的には)それに近いかもしれません。ゴルフで結果を残すのが楽しいですから。

 そのために、合宿も、日々の練習も頑張ります。やっぱり、目標をクリアした時はうれしいし、勝った時は最高ですから。けど、ゴルフはメンタルのスポーツで毎日うまくいくわけではありません。それも含めて、ゴルフは楽しいです」

――すでに4勝を挙げて、人気の高まりも実感しているのではないですか。

「応援してくださる方が増えたのは感じます。でも、普通に街を歩いていて声をかけられるようなことはないですよ。ゴルフ練習場にいると、さすがにバレてしまいますけど(笑)。それ以外では気づかれることはないです」

――最後に改めてうかがいたいのですが、今季の目標のひとつが「複数回優勝」。昨年3勝していることを思えば、それ以上が目標になっているのではないですか。

「去年以上の成績を目指すのはもちろんなんですけど、自分にプレッシャーをかけすぎないように、とりあえず複数回優勝ということで(笑)。目の前のことに集中して、結果的に去年よりいいシーズンになればいいと思っています」

(おわり)

西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。2019年にプロテストに合格。2020-2021シーズンからツアー本格参戦を果たし、いきなりツアー4勝をマーク。賞金ランキング5位という結果を残す。逸材がそろう「ミレニアム世代」の代表格のひとり。身長150cm。血液型O。