J1リーグの2022年シーズンがスタートした。初戦から興味深い戦いが繰り広げられたが、3連覇を狙う川崎フロンターレをか…

 J1リーグの2022年シーズンがスタートした。初戦から興味深い戦いが繰り広げられたが、3連覇を狙う川崎フロンターレをかなり苦しめたFC東京の戦いぶりも見ものだった。今季のJ1の行方に大きな影響を及ぼし得るFC東京を、サッカージャーナリスト・後藤健生が分析する。

■初陣から本領を発揮した高卒新人

 松木玖生は、1月の全国高校サッカー選手権大会で優勝した青森山田高校の中心選手として活躍。高校出のルーキーとして期待されていた選手だったが、J1リーグ開幕戦で先発として抜擢され、川崎に押し込まれた序盤戦では川崎のプレッシャーによってボールを失う場面もあったが、試合のリズムに慣れてくると本領を発揮したのだ。

 最初のオフサイドになった場面のように自分が飛び出してパスを引き出すこともできるし、永井謙佑とのパス交換の場面のように周囲の状況を見て味方を使うのもうまい。そして、ミドルシュートで相手ゴールを脅かす場面もあり、合格点どころかこの日の東京の善戦を引っ張った感もある大活躍だった。

 同時に、その松木の才能をうまく引き出したアルベル・プッチ監督の手腕も注目されるべきだろう。

■東京が狙った川崎の弱点

 川崎のボランチの大島僚太はボール扱いはすこぶる上手い選手だし、守備意識も年々高まっているがそれほど運動量があるタイプではない。その大島の周囲のスペースを松木に利用させ、また、サイドに開くことで川崎の左サイドバックの登里享平の攻撃参加もチェック。レアンドロとの絡みでサイドに出たり、中のレーンを使って前線に飛び出したりと、川崎の守備陣から逃れるような動きで松木を使ったのだ。

 もちろん、その監督の意図をしっかりと理解してプレーした松木の戦術眼も高く評価すべきだろう。

 こうした戦術的な狙いは、もちろん川崎を徹底して分析して狙っていた形だった。そして、あの「勝手に飲水タイム」の間に指示を送ってその狙いをさらに徹底させたのである。

 前半の最後の10分間ほどは松木はサイドハーフ的な位置でプレーすることが多く、ディエゴ・オリヴェイラとレアンドロがツートップ、松木と永井が両サイドハーフ、青木と安部がボランチ。つまり、4-4-2に近い形となって戦っていた。

■流れを変えた松木の交代

 後半に入ってもFC東京は攻撃の形を作り続けて一進一退。そして、両GKの好守もあって緊迫した試合が続いた。

 51分に味方のクリアがつながった偶然の形ではあったが、レアンドロがフリーになる場面があり(鄭成龍がまたも好セーブ)、58分にはレアンドロが倒されてFK。レアンドロが蹴ったボールを永井が頭で決めたが、永井が間一髪のオフサイド……。後半も、東京の攻撃の正面は右サイドだった。

 ゲームの流れが変わったのが、松木の交代だった。72分に接触プレーで松木が倒れ、そこで松木は退き、代わって三田啓貴と交代となった。たしかに、松木には疲労の色もあったので交代の時期だったかもしれないが、負傷が交代のきっかけとなった。

 その直後に川崎の鬼木達監督も選手交代を行った。

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