3日目は2年連続「花の2区」を走った松山和希(総2=学法石川)。12位でタスキを受け取ると集団走をうまく活用し、ラスト3…

3日目は2年連続「花の2区」を走った松山和希(総2=学法石川)。12位でタスキを受け取ると集団走をうまく活用し、ラスト3kmも粘りの走りで8位に順位を押し上げた。東京箱根間往復大学駅伝競走(以下、箱根)では日本人2位の快走を見せたものの、苦渋も味わった今年度を振り返る。そしてここから東洋大の「真の」エースへ。2区への思いや今後の展望を語った。

 

写真:東洋大学/月刊陸上競技


・松山和希(総2=学法石川)(取材日・1月15日、聞き手=宮谷美涼)


――箱根を振り返ってみていかがですか

今回の箱根は自分の中では、全日本の借りを返すということを目標としていて、その中で走った上では満点の走りではなかったんですけど、チームの走りとして、自分は貢献できたかなという感じです。


――レースプランを教えてください

昨年は集団についていたので、前半からかなり早いレース展開であり、後半ペースダウンしてしまったので、今年は落ち着いて入って、後半の登りに入ってから勝負をしようと思っていました。


――走り出した時の目標順位は

最低でも1桁前半でいきたかったんですけど、外国人選手がいたこともあって思ったほど前に行くことは出来ませんでした。


――児玉(済3=東北)選手が1分27秒でタスキを運んできました

1区が思ったよりハイペースだったこともあって、けっこう離されてきてしまうかなと思っていたんですけど、さすが児玉選手、すごいいい位置で来てくれて、自分としても走りやすい位置でした。


――昨年も児玉選手からの松山選手のタスキ渡しでした

児玉さんは本当にほとんどの大会を1区で走っていて、「絶対この位置で来てくれる」という信頼感がありますね。他の選手が1区を走るよりは任せられると思います(笑)。


――昨年と比べてみていかがですか

一回走ったこともあってか、思ったより少し勝手が分かったという感じか、「ここがきついんだな」というようなところが分かっていたので、1回経験を経て対応が出来たのかなと思います。


――成長を感じた部分はありましたか

昨年は18km前後でペースダウンがあったのですが、今年は逆にペースアップをすることが出来たので、1年経て、大学1年の時よりは精神面が成長したのかなと思います。


―2年連続2区を走りました

1回走ったからにはまた走りたいという思いがあり、監督も「お前じゃないと2区はいけない」とおっしゃってくれて、また絶対走ろうという気持ちが芽生えました。


写真:東洋大学/月刊陸上競技


――レースプランは実行できましたか

後ろから外国人選手が来てくれたこともあって、思ったよりも1人で走るよりかはいいペースで走ることが出来て、後半、権太坂あたりで他の選手がスパートしたところで、落ち着いて走ることに専念しました。そしてラスト3kmで勝負を仕掛けました。自分の思い通りにペース通りに走ることができたと思います。


――外国人選手と集団走は

推進力が違います。見ていても、フォームが綺麗な選手が多いというイメージを受けます。身体もかなり絞れてますし、1回の蹴りで出る推進力が大きくて、どうやったらこんな走りが出るんだろうとかいつも思っています。


――外国人選手から学ぶこともありますか

やはり身体の作りが違います。他の選手と比べてみても足が細くて、ふくらはぎがスマートです。


――集団走についていたときの心情を教えてください

自分ではそこまで意識していないんですけど、コーチの方から「集団走の走り方が上手い」というふうに言ってもらっていました。そこを自信にして出来るだけ力を使わないように、後についたりして、他の選手がどのくらい疲弊しているかなとか、他の選手を見ながら自分の走りに集中することを意識しています。


――給水でのエピソードはありますか

今年度はあまり練習が積めていなかったこともあって、序盤から結構辛いレース展開ではあったんですけど、10kmで集団から離れてしまった時があって、給水地点にいてくれた及川(済3=一関学院)さんが「エースだから自信持っていけ」と言ってくれました。「このチームのエースなんだ」とレース中に再確認して、「こんなところで離れている場合じゃない」と切り替えて、前を追えました。


――酒井監督からはどのようなお声掛けがありましたか

前半は単独でいたことも何回もあったので、「落ち着いていけ」とか「いいペースで入っているから」という声掛けを頂いたのですが、中盤以降どうしても集団だったので、あまり監督車から声が掛からなくて。ラスト50mぐらいで「6分台が出るぞ」と声掛けをいただきました。


――ラスト3kmでは底力が発揮されました

自分のストロングポイントがラスト3kmだと思っているので、たとえ相手が外国人選手でもラスト3kmでは勝つという強い気持ちを意識して走っていました。


写真:東洋大学/月刊陸上競技


――今回の走りで見つかった良かった点、課題点を教えてください

レース後半で自分のプラン通りに仕掛けられたのは良かったと思うんですけど、その点に加えて逆に、前半は昨年よりも20秒くらい10kmの通過が遅いので、序盤から積極的に攻めていけるようになりたいというのと、自分の強みであるラスト3kmでもっと追い込めるようになりたいと思います。


――チームの結果を振り返って

往路ではチームの想定していたタイムより遅れてしまって、復路の選手に申し訳ないという気持ちが大きかったです。しかし復路の選手がすごく頑張ってくれて、復路2位という結果で、青学大にはかなり差をつけられてしまいましたが、チームとしては他に得るものがあったのかなと思います。


――他大のエースについて

東洋大学のエースとして2区を任せられている点で、本来勝負しなければならなかったのですが、正直自分は練習を積めていなかったこともあって、田澤(駒澤大)選手などの上位選手に食らいつくことができるかどうかという不安がありました。しかしそこを除けば、他の選手に勝てる自信がありましたが、そこまで意識は出来なかったと思います。


――昨年の走りを振り返って

昨年の2区は自分が想定していたよりも速いタイムを出せて、自分の実力というよりかは他の選手に助けられて好タイムが出たと思います。


――実際、1年生で2区を任された時の心情は

箱根駅伝は走りたいという気持ちはあったんですけど、明確に走りたい区間はありませんでした。最初は「1年生だから4区ぐらいかな」と思っていたんですけど、途中から2区を走るということになり、戸惑いながらも「任された区間だから頑張ろう」となりました。


――4年間2区走りたいという思いはありますか

やはりここ2年間同じ区間を走らせてもらっているので、ここまできたら2区を走ってチームに貢献したいという思いはあります。


――2区の最終的な目標タイムは

東洋大学の歴代最高タイムが相澤(R1年度済卒=旭化成)さんなので、自分もしっかり5分台の領域に入れればなと思っています。


――過去の2区を走った服部(H27年度済卒=トヨタ自動車)選手や、相澤選手のタイムは意識しますか

7分前半を単独で走るという、安定して2区を走られていた方々だったので、過去のレースだったり、映像を見て「自分がだったらこう走るだろうな」と想定するにはすごいありがたい存在です。


――2年生の時点で服部選手のタイムを超えている点について

今の時代、昔と比べてハイペースになっているという点を含めて、厚底シューズの影響もあって、まだそこのレベルにたどり着いていないかなと思っています。タイム的には勝ってはいるんですけど、まだまだ実力とか精神面では及んでいないかなと思っています。


――憧れの選手を教えてください

自分では、1番身近で、1番強いと思っているのは相澤選手なので、憧れています。


――やはり6分台は出したいという思いはありましたか

昨年が1時間7分15秒で、ラスト100mで6分台が出るということを意識していたので、昨年を超えるという意味でも6分を出したいという気持ちがあったんですけど、ラスト2秒足りなかったということは今年の課題です。


――出雲全日本大学選抜駅伝競争(以下、出雲)は出場機会を得ることができませんでした。どのような気持ちで観戦していましたか

本来は自分が走らなけらばならない立場でした。他の選手に走らせてしまったということが自分にとっては悔しくて、テレビで観戦していて応援したいという気持ちよりも、なんで自分がそこにいれないかという悔しさが大きかったです。チームメイトが暑い中でも全力でいい走りをしていて、3位に滑り込み、東洋らしさが出て、最後の力強さを感じました。改めて、このチームでよかったなと思いました。


――復帰戦となった全日本大学駅伝対校選手権大会(以下、全日本)を振り返って

私としても今年度で一番悔いが残る大会です。元々そこまで練習を積めていたというわけではありませんでした。7区を走るための最低限自分が行わなければいけないレベルがありながら、責任感が足りませんでした。前半からハイペースで進めてしまい、チームがシード権がかかった位置だったので焦りが出てしまいました。


――実際シード落ちとなりましたが、チームとして変えたことはありますか

チームとして全員が「このままじゃだめだ」という気持ちが芽生えて、「このままでは箱根駅伝でシード権を落としてしまう」という危機感を持ちました。全員が最後の1カ月で本気で練習に取り組みました。このことが箱根駅伝の結果につながったのかなと思います。


――今シーズンを振り返って

前回の箱根駅伝が終わって練習ができず、自分の生活に甘さがありました。練習を積めなかったのが、前半のトラックシーズンの結果や合宿で走りこめなかったことが今年度の一番の失敗でした。レースでは自分の弱さがあったことや、自信のなさが響いて、レースに対する気持ちが欠如してしまったことが全日本の走りにつながったと思います。

 

――ここから向上していきたい部分は

トラックで夏場にタイムを出すということがここ数年できていません。暑さ対策や、スピードが足りなかったりと課題点が残るので、トラックシーズンの活躍が今の自分の目標です。


――来年度はどのようなチームにしたいですか

自分たちのチームに足りないのは、層が薄くて地力が低いという点です。東洋らしい、誰でも1秒をけずりだせるような選手をつくり出せることを目標にしていきたいと思います。


――新チームがやらなければならないことは

箱根を走ったメンバーと比べても、他のメンバーがどうしてもコロナでコース現場に行けていないこともあって、他の大学との差を感じ取れていない部分があると思います。(これからは)多くの大会に出場して、他の選手との差を痛感して、さらにそこから練習につなげて努力していくということが必要かなと思います。


――今年度のチームを振り返ってみて

チームを作っていくということがこの1年で大変だったと思っています。チーム一丸になることを学べた1年かなと思います。


――4年生に向けて一言お願いします

この1年間、少ない人数でこの大きなチームを引っ張ってくれたことに対して本当に感謝の気持ちしかありません。


――東洋大学に入った理由を教えてください

高校1年生の時から合宿に参加させていただいていました。その時に練習の雰囲気だったり、チームの雰囲気を見て「この大学なら自分が走れるんじゃないかな、合っているんじゃないかな」という感じました。高校2年生の冬くらいに監督さんからも声をかけていただいて決めたという感じです。

 

――ライバルはどなたですか

自分より自己記録が速い石田洸介(総1=東農大二)選手です。


――他大学で意識する選手はいますか

同学年の三浦(順大)選手だったり、吉居(中大)選手が頭一つ抜けているという印象を持っています。他の学年で言うと、同じ区間を走っている田澤選手には来年しっかり勝負をしないといけないと思っています。


――来年の意気込みを教えてください

1万mでは27分台を目指す走りをしていくこととハーフでも1時間1分20秒切りを目標としています。そのスピードを生かしてロードで三大駅伝全てで区間賞を取るくらいの勢いでやっていきたいと思います。


――最終目標は

まだまだ精神的に甘える部分が多いです。全ての部分でエースにふさわしい、責任感のある選手になっていきたいなと思います。


写真:陸上競技部長距離部門


◆松山和希(まつやま・かずき)

生年月日/2001・12・4

血液型/O型

自身の強み/ロードが得意で、その中でも長い距離の後半部分が強い