今、卓球界でも“副業”という働き方が注目されている。安定した本業を持ちながら、副業で卓球コーチを始めて人気を博しているのが朝田茉依さんだ。希望が丘高校、同志社大学と強豪校でプレーし、大学時代には全日本卓球選手権女子ダブルスで5位に入った自身…

今、卓球界でも“副業”という働き方が注目されている。

安定した本業を持ちながら、副業で卓球コーチを始めて人気を博しているのが朝田茉依さんだ。

希望が丘高校、同志社大学と強豪校でプレーし、大学時代には全日本卓球選手権女子ダブルスで5位に入った自身の経験を活かし、休日に行うレッスンはリピート率80%超、予約もすぐに埋まるほどの人気ぶりとなっている。

卓球界に新しい働き方を提示している朝田さんに、副業コーチという働き方に至るまでの経緯や、今の働き方について聞いた。




【朝田茉依(あさだまい)】希望が丘高校から同志社大学と卓球強豪校でプレーし、全日本卓球選手権では女子ダブルス5位の実績を残した。戦型は右シェーク裏表カットマン。現在、平日はエンタメ系企業で働きながら、休日は副業で卓球レッスンを行っている社会人2年目。2022年の全日本選手権も神奈川県予選を通過し女子シングルスで出場する

自身を変えた強豪校での生活




写真:朝田茉依さん/撮影:ラリーズ編集部

――副業でしている卓球コーチ業が人気で、レッスンの予約もすぐに埋まってしまうと伺いました。

今回はその辺の進路選択から今の働き方までを聞かせていただければと思います。

元々は希望が丘高校と超強豪校でプレーされてましたよね?

朝田茉依さん:希望が丘は、結構苦しい思い出がたくさんあります(笑)。

周りの選手が強かったので、練習についていくのに必死でした。ついていこうと頑張ることで卓球が上達できて良かったです。

希望が丘での経験が私の卓球人生を割と変えた感じもありました。

――具体的にはどう変えたんでしょうか?朝田茉依さん:前田美優さんや徳永美子さんら、周りは強い方達ばかりでした。その人達の卓球している様子、体の使い方などを見ながら、どうしたら自分もできるかなと研究してみたり、あとはボールに何本も何本も食らいついていくことで、徐々に強くなれたりしたなと思います。




写真:希望が丘高校2年生のときの朝田さん(写真左)/提供:本人

――大学が同志社だったのは、地元の京都に、ということですか?朝田茉依さん:もともと卓球をずっと続けていたのも大学進学を目標にしてた面もありました。

実家の近くに同志社があるので、同志社進学を目標にしていて、勉強よりも卓球の方が頑張れそうだなと。




写真:同志社大学3年生の時にリーグ優勝したときの写真(朝田さんは写真右上)/提供:本人

――大学で生活は変わりましたか?朝田茉依さん:はい。実家から電車で2分くらいのところに大学があるので下宿できずで、寮生活とはがらりと変わりました。

あとは卓球場を3つか4つくらい掛け持ちして卓球コーチのバイトをやったり、卓球やってない子と友達になったりして、いろんな世界があるんだなと知りました。




写真:大学3年生のときにはスペインリーグにも参加した/提供:本人

卓球を続けるか辞めるかの2択から新たな選択肢へ




写真:朝田茉依さん/撮影:ラリーズ編集部

――卓球外の人と触れ合うこともあって今の本業+副業で卓球という働き方にも繋がっているんですかね?朝田茉依さん:めちゃめちゃ繋がっています。

元々は進路を決める時、卓球をするか卓球を辞めるかの2択で考えていました。卓球のプロチームや実業団からお声掛けいただきましたが、社会人として普通に仕事を経験してみたいなとも思って、本当に悩んでいました。

ただある時、仕事も卓球もどっちもやればいいんじゃないかと思い立って、副業OKな会社を狙って就職活動をしました。

――卓球一本で行くという道は最初に捨てたんですね。朝田茉依さん:最初はすごい魅力的に思っていました。

ただ、怪我をしたり、選手を続けられなくなった時に生きていく術がないと不安だなと思って、卓球一本の道を諦めました。

副業があるから本業が頑張れる




写真:朝田茉依さん/撮影:ラリーズ編集部

――今は想像していた通りの働き方ができていますか?朝田茉依さん:そうですね。周りの方たちの支えで想像していた以上に上手くやれています。――本業はどういうことを?朝田茉依さん:平日の本業では、エンタメ系のメーカーで人事で新卒採用を担当しています。――本業で副業に活きていることは何かありますか?朝田茉依さん:本業の新卒採用での広報部分は、レッスンの広報活動に活きていますし、採用の申し込みしてもらってからのフローもレッスンの仕組みを作る上で活かせています。――本業、副業がそれぞれ活きてるのは理想的ですね。他にはどういうメリットがありますか?朝田茉依さん:先ほどの相乗効果もありますし、本業があることで心にゆとりが持てます。

副業でもしも駄目になっても本業があると思えるので、副業ではまだ誰もやったことがないことにチャレンジできたり、ちょっと失敗してもいいかなくらいの気持ちで思い切って行動できるのは大きいかなと思います。




写真:朝田茉依さん/撮影:ラリーズ編集部

朝田茉依さん:逆に卓球の本業だけになってしまうと、守りに入っちゃいそうな感じがしてて、副業の今だからこそあまり考えることなくできていると思います。――逆にデメリットはありますか?朝田茉依さん:副業なので時間がなかなか取れない点です。

本業をやっているとどうしても枠が決まってしまって、レッスンも溢れている状態です。そこは本当に申し訳ないなと思って、ずっと改良しようと思っています。でも、そこぐらいですかね。

――嬉しい悩み事ですね…!

逆に忙しすぎるみたいなことはないですか?

朝田茉依さん:副業のレッスンはめちゃくちゃ楽しくて、全然忙しいという意識はないです。

本業ではできなくて凹むこともたくさんあるんですけど、副業をやることでストレス発散できます。自分が役に立っているということが肌で感じられて、逆にそれがあるから本業を頑張れるので、良い感じです。

――いつまでこういう働き方でいこうと考えてますか?朝田茉依さん:迷っていますね。とりあえず今は副業で自分がやりたかったことをやっている感じです。

ただ、やりたいことはいっぱいあります。コロナが収まってきたら飲み会イベントの開催や、試合も開催したいし、東京に引っ越してきたので自分のクラブチームも作ってみたいです。

副業という範囲なので全然手が回らないので。副業のウエイトを大きくすると不安も残るしなみたいな感じで、ちょっと今迷っています。




自身のアパレルブランド『MYTEM』を展開している

――では、今年一年に絞るとどういう展望ですか?朝田茉依さん:今年はレッスンとアパレルを中心にして、アパレルの品数をもっと増やしていきたいなというのはあります。

あともう一個くらい新しいことやりたいなと思っていて、コロナ次第ですけど試合は開催してみたいですね。



朝田さんは、社会人2年目ながらコーチ業、アパレル業と複数の卓球事業を副業で展開している。卓球では全日本選手権で5位まで登りつめた朝田さんは、ビジネスというフィールドに活躍の場を移しても着々と結果を残している。

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)