4月25日現在、セ・パ両リーグの最多盗塁はパがソフトバンクの柳田悠岐の6個、セが広島の安部友裕の6個となっている。■現代…
4月25日現在、セ・パ両リーグの最多盗塁はパがソフトバンクの柳田悠岐の6個、セが広島の安部友裕の6個となっている。
■現代の走塁技術の高さを証明する2選手
4月25日現在、セ・パ両リーグの最多盗塁はパがソフトバンクの柳田悠岐の6個、セが広島の安部友裕の6個となっている。
柳田には山田哲人(ヤクルト)に続く2回目のトリプルスリーの期待がかかるが、今年の盗塁王は両リーグともに40個台にとどまりそうだ。ちなみに昨年は、パが糸井嘉男(オリックス、現阪神)、金子侑司(西武)の53個。セが山田哲人の30個だった。
これらの記録はシーズン盗塁記録の50傑にも入らない。NPBでは阪急で活躍した福本豊が1972年に記録した106盗塁を筆頭に、70盗塁以上が14回、60盗塁以上は32回も記録されている。
近年のNPBでは盗塁数は減っている。毎試合走るような韋駄天は少なくなった。
これは選手の資質というより、野球の戦術や技術が変化したことが大きいようだ。セイバーメトリクスでは、盗塁は重要視されない。塁を奪うのは勝利にはプラスだが、アウトになればアウトカウントが増えて走者もいなくなる。その損失の大きさを考えれば、成功率の低い盗塁はすべきでないという考えだ。
■200盗塁以上の選手で盗塁成功率10傑は…
また、バッテリーでの盗塁阻止の技術も向上した。大部分の投手はクイック投法で投げるようになり、捕手の送球技術も向上している。簡単に盗塁できなくなったのだ。
しかしその中をかいくぐって盗塁をする選手は、スピードもあり、技術的にも優秀だ。現代の盗塁技術の高さを証明する選手が2人いる。昨年限りで引退した元巨人の鈴木尚広と、現楽天の松井稼頭央だ。
以下はNPBで200盗塁以上を記録した選手の盗塁成功率10傑。※は現役。
選手 盗塁 盗塁死 成功率
1鈴木尚広 228 47 82.91%
2広瀬叔功 596 123 82.89%
3松井稼頭央※ 362 80 81.9%
4赤星憲広 381 88 81.2%
5木塚忠助 479 114 80.8%
6河西俊雄 233 61 79.3%
7福地寿樹 251 70 78.2%
8福本豊 1065 299 78.1%
9山崎隆造 228 65 77.8%
10石毛宏典 243 71 77.4%
(公式記録で盗塁死を記録していなかった時期の選手を除く)
■メジャーでも高い成功率誇った松井稼、「隠れ1位」はイチロー
盗塁成功率史上1位の鈴木は1130試合に出場しているが、規定打席に達したことは1度もない。しかし、キャリア後半は走りのスペシャリストとして活躍。2005年から引退した2016年まで、12年連続で2けた盗塁を記録している。試合終盤、競った展開で鈴木が代走で登場すると、相手バッテリーには緊張が走ったものだ。
松井稼頭央は、西武ライオンズ時代、走攻守三拍子そろった名選手だった。7年連続3割、20本塁打以上4回に加え、3年連続盗塁王。特に走塁では速さに加えベースランニングの巧みさでも抜群の存在だった。
松井は2004年にMLBに移籍。ケガや故障に泣かされ、打者としては成功したとは言えない部分があるが、こと走塁に関してはずば抜けた記録を作っている。MLB時代、102盗塁して18盗塁死で、盗塁成功率85%。MLBの記録専門サイト「Baseball Reference」では、松井の記録を歴代9位と認定している。松井はNPBでもMLBでも超一流のランナーだったのだ。日本に復帰後は年齢もあって、盗塁数は減っているが、56盗塁10盗塁死、盗塁成功率84.8%の高率を誇っている。
ちなみに、NPBの盗塁成功率では「隠れ1位」がいる。イチローだ。NPB時代のイチローは200盗塁に1足りない199で、盗塁死は33、盗塁成功率は85.8%にもなる。
鈴木や松井、そしてイチローも含めて、現代の「韋駄天」は、盗塁数は昔ほどでないにしても、極めて精度が高い。走塁の技術も進化しているのだ。
広尾晃●文 text by Koh Hiroo