監督就任1年目の昨シーズン、上位進出を期待された三浦大輔監督だったが、チームは最下位に沈んでしまった。オフには大田泰示…
監督就任1年目の昨シーズン、上位進出を期待された三浦大輔監督だったが、チームは最下位に沈んでしまった。オフには大田泰示や藤田一也というベテランを補強し、コーチ陣も1998年の日本一を知る石井琢朗氏、斎藤隆氏が入閣するなど体制を整えた。はたして、最下位から巻き返しを図りたい今シーズン、三浦監督はどのような戦いをイメージしているのか。指揮官を直撃した。

監督就任2年目を迎えるDeNAの三浦大輔監督
【1勝することの難しさを知った】
── 監督就任初年度の昨シーズンは、6年ぶりの最下位と非常に厳しいものになりました。
「悔しい思いばかりですね。自分自身いろいろ勉強をして『さあ行くぞ!』ってスタートしたのに、考えていたことが思いのほかできませんでした......。本当にコテンパンにやられてしまった。自分の未熟さを思い知らされましたし、選手たちには申し訳ないことをしてしまいました」
── とくにシーズン序盤は連敗が続き、かなり苦しい思いをしました。
「監督になってあらためて1勝することの難しさを知りましたし、『勝ちたい』という気持ちばかりで、その思いがつのるほど視野が狭くなっていった気がします。振り返ってみればシーズン当初、私は選手と一緒になって戦ってしまった。選手を信頼していると口では言っても、どこか信じきれていなかったのかもしれません。本当、反省すべき点です。本来であれば選手を送り出したら、監督であればドンっと構えていなければいけませんでした」
── 課題としていた"走塁"ですが、序盤は盗塁も含めエンドランなど積極的に仕掛けていましたが、なかなか功を奏せず、徐々に尻すぼみになっていった印象がありました。
「躊躇していたわけではないのですが、どうしても仕掛けることで流れが悪くなることが多くなってしまったので、結果的に数は減っていったかもしれません。このあたりは変わらず今シーズンの課題になりますね」
── また、ほかの打順にくらべ2番打者を固められない印象があったのですが、あらためて三浦監督の"2番打者"についての考えを教えてください。
「2番打者の役割はゲームの状況によって変わると思うんです。たとえば、伊藤光や柴田竜拓が入る時はつなぎ役で、粘ったり、進塁打を狙う。また佐野恵太など長打力のある選手が入る場合は、バントせずどんどん打ってもらう。その時の対戦相手の相性など加味したうえの判断ですし、基本的には固定する打順ではないと思っています」
── 交流戦あたりから采配に柔軟さが出てきて、以降、イーブンの戦いができるようになりました。
「もちろん、選手たちの力があってこそですが、私自身も視野を広く持って、臨機応変に状況を見ようとバランスを心がけました。たとえば、佐野を4番から3番にしましたが、それまでは『4番は変えてはいけない』という思いが強くありました。結果的に佐野自身も苦しかったと思います」
── 実際、出塁力のある佐野選手は3番になってからのほうが、自分らしいバッティングができるようになった印象があります。
「本人にしっかり説明をして納得してもらいました。佐野にしても、終盤に苦しんだクローザー陣もそうですが、固執してしまったゆえに選手たちに負担をかけてしまいました。選手たちの力を引き出すのが監督の役目なのに、それがうまくできなかった。昨季は本当、反省材料ばかりです。ただ途中からこだわりすぎることなく臨機応変に戦うことで武器が見つかりましたし、このオフを経ることで今シーズンに向け戦う準備は着実にできたと思います」
【期待の新戦力の役割とは】
── 今季へ向けた武器とは?
「まず私自身のことを言えば、打順を動かすことで適材適所、選手がラクになるというか自分の力を発揮しやすい状況をつくれることがわかりました。あとは今永昇太や東克樹らケガ人が戻ってきたことですね。彼らには開幕からローテーションに入ってもらわなければなりません。そして新戦力ですね」
── 日本ハムから移籍した大田泰示選手は、三浦監督を胴上げしたいと気合が入っています。
「昨シーズンは不調でしたが、大田の力はこんなもんじゃないと思っています。彼自身3球団目で、経験もあるし、長打力もある。昨季は佐野、桑原将志、タイラー・オースティンが主に外野を守りましたが、そこに割って入る力を持っていると思うので、外野の3人も安泰ではないと危機感を持って競争してもらいたいです」
── そして藤田一也選手が10年ぶりにDeNAに復帰します。経験豊富なベテラン選手に期待したいところはどういったところでしょうか。
「楽天時代に日本一やゴールデングラブ賞などいろいろ獲得した経験はもちろん、ファームのゲームで顔を合わせても藤田からは"横浜愛"を感じていましたし、チームの力に必ずなってくれると思います。守備は言うまでもなく、勝負強いバッティングも魅力ですね。もうひと花咲かせてもらいたいですし、なによりも魅力なのは、その"人間力"。若手選手たちの参考やお手本になるでしょうし、藤田のマインドがチームに浸透してくれたらいいなと思っています」
── 投手ではブルックス・クリスキー投手がブルペン陣に加入します。
「クリスキーに関してはまだ動画しか見ていないのですが、非常にきれいなフォーシームを投げる印象です。そして膝元にボールを集めることができ、さらにそこからスプリットで空振りがとれる。やはり空振りをとれる投手というのは重要ですから、終盤の厳しい場面で投げてくれることを期待しています。あとは日本のボールにどれだけアジャストできるのか。変化量も変わってくるでしょうから、いかに春季キャンプで対応できるのか状況を見ていきたい」
── 昨季、クローザーが安定しませんでしたが、まだ白紙なのは当然としてクリスキー投手も候補に入ってくると。
「そうですね。昨季は三嶋一輝、山﨑康晃、あと伊勢大夢も数試合投げましたが、ここにクリスキーも加わって競争になると思います」
── あと気になるのは、昨年のドラフトで三浦監督がクジを引き当て、背番号18を授けたドラフト1位の小園健太投手です。
「非常にポテンシャルの高い投手で、ストレートも変化球もいいとても楽しみな存在です。1年目から出てきてくれればとは思いますが、高卒ルーキーですし、ここは慎重に見極めていきたいですね。チームとしても小園が将来ベイスターズを背負う存在に育てていかなければいけませんから」
【経験豊富なコーチ陣に期待すること】
── そんな選手たちを見極め育てるのが首脳陣のひとつの役目になりますが、今季は新コーチたちが多く加入したことも大きな話題になりました。まず14年ぶりにチームに戻ってきた野手総合コーチの石井琢朗コーチに期待するところは。
「経験豊富なコーチですし、まず打撃においてはチームバッティングの重要さを選手たちに指導してもらいたいですね。アウトになるにしても、意味のある、得点につながるバッティングとは何なのかと」
── 石井コーチは極端なことを言えば、ヒットが出なくても得点を狙いにいくタイプですから、DeNAの野球がどう変わるか楽しみです。
「そのためには走塁の技術も大事になります。足の速さというよりも、ひとつ先の塁を狙う積極性というか、足が速い遅い関係なくチーム全員に浸透させなければいけません、石井コーチにはしっかりそのあたりを落とし込んでもらえればと思っています」
── メジャーなど海外での経験が豊富な斎藤隆コーチは、チーフという立場でチームに加わります。
「ピッチャーたちが迷うことなくゲームに集中できるよう、チーフという立場で投手陣全体をまとめてもらいます。斎藤コーチの日本や海外での経験はチームの武器になると思っていますし、私が18歳の時からのおつき合いですが、非常に熱いハートを持った方です。選手目線に立って考えてくれるので、投手陣としっかりとコミュニケーションを取ってくれると思います」
── バッテリーコーチには、現役時代、数多くのゲームで組んできた相川亮二コーチが就任しました。
「このオフも相川コーチとはマメに連絡を取り合っているのですが、配球面を軸にどう戦っていくのか話しています。たとえば、ワンカードでどうつながりのある配球をしていくのか。目の前の試合は言うまでもなく大事ですが、1週間後、1カ月後を見すえた戦いをしていかなければいけないので、私もアイディアを出し、ワンカードでの配球、アウトカウントの区切りなど具体的な部分を詰めていきたいと思っています」
── そして三浦監督の師匠である小谷正勝氏がコーチングアドバイザーに就任しました。
「本当に心強い存在です。一度ユニフォームを脱いだにも関わらず、力を貸していただけて感謝しかありません。もちろん健康第一で、その知識と経験を駆使して投手たちの引き出しを増やしてもらいたい。本当、職人中の職人で、ポイントの見極めが独特で鋭いんです。私の経験を言うと、腕の振りなど上半身が気になっていると相談すると、つま先とか足首の角度に言及し、結果的に上半身の問題が直っている。まあ極端な話ですが、私自身、小谷さんに指導され不思議な感覚になったことが何度もあります。ですから確実に変わる選手、気づく選手は出てくると思います」
── ケガ人の復帰に新戦力、さらに新しいコーチたち。巻き返しはもちろん、三浦監督にとって大事な2年目になりそうですね。
「もう、やり返すしかないですよ。昨年は、選手もコーチもスタッフも私自身、そして"横浜一心"のスローガンのもと一緒に戦ってくれたファンの方々全員が悔しい思いをしました。やられた分、みんなでやり返したい。昨年の経験を決して無駄にすることなく、コーチたちの知恵を借り、新たな2022年のベイスターズをつくっていきたいですね。そして最後はファンの方々に喜んでいただけるようなシーズンにしたいと思います」