先日テニスの世界王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、祖国セルビアで発生している抗議活動や祖国の人々の生活の質について…

先日テニスの世界王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、祖国セルビアで発生している抗議活動や祖国の人々の生活の質について、自身の考えをInstagramで公表した。スポーツウェブメディアSportskeedaが伝えている。【関連記事】ジョコビッチ、ATPカップ出場は全豪への参加表明!?

現在セルビアでは、英豪系鉱業・資源大手リオ・ティント社によるリチウム採掘を政府が許可し、来年よりリチウム事業関連施設の建設が計画されているが、環境に悪影響を及ぼすとして市民の抗議活動が活発になっている。この事態を深く懸念したジョコビッチは、セルビア市民を支援する気持ちを表明せずにはいられないと考えたようだ。

「セルビア全国で行われている市民の抗議活動は、重要な環境問題に対して真摯で明確なアプローチを取る必要があることを示していると考え、僕は声を上げることを決めた。このような問題は、僕たち全員にとって非常に重要だと確信している」とジョコビッチは自身のInstagramのストーリーに綴った。

普段、ジョコビッチは政治問題に対する自身の考えを公にしないよう努めているそうだが、自由に意見を言えない状況に頭を悩ますこともあるという。

「抗議活動では、政治的意味合いを持つ[環境問題以外の]要求がされていることも承知している」と残念そうに綴った。「僕は、“立場”や“対立的立場”、あらゆる政治的潮流とは距離を置きたいと思っている。常に政治とは無関係であるよう努めてきた。左翼や右翼、反対者、民主主義者、進歩主義者、社会主義者といったレッテルを貼られずに、自分の個人的立場や、空気、水、食料といった生活の基本的要素に関する意見を言えない現状を苦しく思っている」

ジョコビッチはこれまでも、重要と思えることに関しては自身の意見を述べている。特に、同僚のテニス選手やアスリートが助けを必要としている場合は支援の姿勢を示すことが多くあった。過去には不当に批判されることもあったジョコビッチだが、真実と正義のために戦うのを止めないと明言した。

「それでも、僕が重要だと考える問題については、公に出て自分の意見を言うという決断を、自分の意志でしてきた。これまで、テニス界でより“声の大きい”(立場の強い)選手の意見や支援が必要な選手やアスリートのために、自分の態度を明確にして戦うことを躊躇したことはない」

「メディアの文脈や、僕がこれまで不当に受けてきた非難や批判で頭を一杯にされてしまうことはたやすいけれど、正義と真実のために諦めずに戦い続ける」

アスリートがスポーツ以外の問題について発言すると、立場をわきまえない、部外者の干渉だなどと批判されることがある。しかし、ジョコビッチはアスリートである前に人間だ、と訴えた。

「このことに気付けたことに感謝している。僕は、人生の真の価値と本質はすべての人の人生の基本であり、健全な社会の基本だと考えていて、それに忠実であるよう努力している。アスリートが“余計な口出しをしている”というコメントを聞くことがある。でも、僕はアスリートである前に一人の人間だ。他の皆と同じようにね」

そして、テニスでは食物、空気、水などのアスリートの生活のすべてが最終的な結果に影響を与える、と指摘した。

「プロテニスでは、トップレベルの結果を達成し、そのレベルを何年も保ち続けるには、あらゆる面で健康に気を使わなければならない。アスリートの人生で起こることのすべて、食品、休養、トレーニング、空気、水、回復、考え方、心の状態、性格、それらが直接競技の最終結果に影響する」

これまで長年に亘りトップ選手として活躍し、素晴らしい功績を残してきたジョコビッチは、自身の体験と健康に対する考え方を表明した。

「経験を通して、健康に対しての意識と総合的なアプローチが僕の長いキャリアと記録に結びついたと理解している。何よりも、その意識が僕の生き方、そして自分の体の感じ方にポジティブな変化をもたらしてくれた。これまでの個人的な経験とキャリアや生活を通じて得られた健康分野の知識から、このトピックに関して自分の意見をシェアする権利があると考えている」

続けて、ジョコビッチは祖国セルビアの大気や食料、水の質の悪さが何十年も改善されないことについて触れた。ジョコビッチは、生活に最低限必要な要素を集中して改善できれば、人々の生活は良くなる、さらに、すべての労力を他のことよりも健康状態を改善することに注力してはどうかと問いかけた。

「ベオグラード(そしてセルビア全体)の大気の質は心配なくらい悪い。何十年もだ」とジョコビッチは指摘した。「それに水や食料の品質も疑問の余地がある。これらは、人間の健康と生態系の基本的要素だ。もし、僕たちが最適な衛生状態の保証や健全な環境づくりに取り組めば、僕たちの生活は改善する。僕たちがスポーツや政治や社会、音楽、その他のことに使っているエネルギーをすべて健康や衛生につぎ込めば、僕たちはどうなるだろうか?」

最初に抗議活動に賛同する姿勢を見せた際、ジョコビッチを批判する声が多く集まった。今回ジョコビッチがここまで踏み込んで自身の意見を述べたのは、それらの批判に返答する狙いもあったのかもしれない。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「全豪オープン」でのジョコビッチ

(Photo by Matt King/Getty Images)