9日に今季限りの引退を発表したルートインBCリーグ、福島ホープスの岩村明憲選手兼監督兼球団代表。10日に開かれた記者会見は約1時間にわたり、21年目を迎えるプロ生活を振り返ると共に、野球にかける熱い思いを語った。■今季限りでの現役引退を表明…

9日に今季限りの引退を発表したルートインBCリーグ、福島ホープスの岩村明憲選手兼監督兼球団代表。10日に開かれた記者会見は約1時間にわたり、21年目を迎えるプロ生活を振り返ると共に、野球にかける熱い思いを語った。

■今季限りでの現役引退を表明、「野球の基本中の基本はやり通せた」

 9日に今季限りの引退を発表したルートインBCリーグ、福島ホープスの岩村明憲選手兼監督兼球団代表。10日に開かれた記者会見は約1時間にわたり、21年目を迎えるプロ生活を振り返ると共に、野球にかける熱い思いを語った。

 1996年のドラフトでヤクルトに2位指名され、スタートしたプロ生活。ヤクルト時代には2004年からは3年連続で3割30本塁打を達成、三塁手としてゴールデン・グラブ賞を6度受賞するなど、強打の内野手として名を馳せた。戦いの場をメジャーに移してもプレースタイルを変えず、レイズでは2008年にワールドシリーズに出場。2011年に日本球界に復帰した後も、楽天、ヤクルト、そして福島ホープスで「何苦礎魂」を見せつけてきた。

 闘志溢れる男気プレーで沸かせた岩村だが、プロ生活の中で守り続けてきた教えがあるという。宇和島東高校時代の恩師、故・上甲正典監督に教わった「一塁までの全力疾走」だ。

「高校時代の上甲正典監督から教えていただいた『打ったら走る』という、野球の基本中の基本をやり通せたというのはあります。今シーズンもまだまだ、打席に立って凡打しても、一塁への全力疾走っていうのは欠かさないようにしたいと思います」

■「上甲監督がいなければプロ野球選手にもなれていない」

 愛媛の強豪高校、宇和島東と済美の監督を歴任した上甲監督は、通算17回甲子園に出場し、春の選抜では両校を1回ずつ優勝に導いている。高校時代に師事した上甲監督について、岩村は「自分の人生を大きく成長させていただいた方」と話す。

 上甲監督との思い出は尽きない。今回の引退も真っ先に相談、報告する存在だが、残念ながら2014年9月に胆道がんのため、67歳という若さで他界。「亡くなられた時も非常にショックだった」と振り返る。

「亡くなる4日前に愛媛に帰らせてもらって、お見舞いすることができた。監督とも話をさせてもらいました。僕の現状があるのは上甲監督のおかげですし、上甲監督がいなければプロ野球選手にもなれていないと思います。どういう言葉を手向ければ上甲監督への感謝になるのかっていうのは非常に難しいんですけど、必ず帰ればお墓に手を合わせに行きます。(今回も)すべてを、(愛媛に)帰った時にシーズン終了と共に報告しにいきたいと思っています」

 今季は「1打席でも可能性がある限り立てればな、と思っています」という岩村。シーズン終了後にスパイクを脱ぐその時まで恩師の教えを守り、脱いだ後も後進に受け継いでいく。

佐藤直子●文 text by Naoko Sato