2年ぶり4度目の開催となる「Next Gen ATPファイナルズ」が11月9日に開幕。2017年に始まったこの大会は期待…

2年ぶり4度目の開催となる「Next Gen ATPファイナルズ」が11月9日に開幕。2017年に始まったこの大会は期待の若手の登竜門であり、これまでにダニール・メドベージェフ(ロシア)やステファノス・チチパス(ギリシャ)、アンドレイ・ルブレフ(ロシア)、キャスパー・ルード(ノルウェー)など、現在世界トップ10にいる20代の選手たちも参戦してきた。そんな次代のトップ選手候補たちが集結する大会の注目プレーヤーを紹介していこう。【ハイライト動画】ノバク・ジョコビッチ vs ロレンツォ・ムゼッティ/全仏オープンテニス2021 4回戦

今回ご紹介するのは、世界ランキング58位の19歳、ロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)。マッテオ・ベレッティーニ(イタリア)やヤニク・シナー(イタリア)が台頭してきたイタリアで期待されている若手の一人だ。ベレッティーニがビッグサーバー、シナーが正確無比な強烈ショットを持ち味とするのに対し、ムゼッティは華麗なプレーが特徴。流れるようなプレースタイルで、片手バックハンドの使い手でもあることから、ロジャー・フェデラー(スイス)と重ねる声もある。端正な顔立ちをしており、ファッション雑誌の表紙を飾ったこともある彼は、もしテニス選手になっていなければ俳優になっていただろうと語る。

2002年生まれのムゼッティは、4歳でテニスを始めた。ジュニア時代は2019年「全豪オープン」で優勝し、世界1位になったこともある。プロに転向した2019年からツアーに参加するようになると、2020年の「ATP1000 ローマ」でスタン・ワウリンカ(スイス)、錦織圭(日本/日清食品)と元トップ5の選手たちを立て続けに撃破。

今シーズン初め129位だったランキングは、9月中旬にキャリアハイの57位に到達。「ATP500 アカプルコ」で世界9位だったディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)らを下してベスト4、「ATP250 リヨン」では今大会に出場するセバスチャン・コルダ(アメリカ)も破って準決勝に進出した。そして「全仏オープン」では、のちに優勝するノバク・ジョコビッチ(セルビア)を相手にパワフルかつ正確なグランドストロークで試合をコントロールして2セットを先取。経験不足がたたってセットカウント2-2に追いつかれ、最後は腹筋を痛めて棄権することになったが、その戦いぶりは多くの称賛を呼んだ。しかし、大きな注目を集めたことが逆効果に。

その後、メディア対応が増えただけでなく、恋人との別れも経験することになったムゼッティは、「メディアやコート外のことに時間を割きすぎて、自分のテニスに十分に集中できていなかったのかもしれない。僕にとってはつらい時期だったよ」とのちに回想する。「全仏オープン」以降は5大会連続で初戦敗退。しかし、「全米オープン」でテニスを楽しむ感覚を取り戻すことができたという。そんなムゼッティのテニスに対する愛情の深さは、彼の左腕のタトゥーにも表れているだろう。今年初め、テニスラケットと自分の心電図を重ね合わせたものを入れている。

1つ年上のシナーと比べられることが多い中、「僕とヤニクはイタリアテニスの未来だと思う。テニス界そのものの未来とも言えるね。僕は昨年の彼が経験したようなことをちょうど今経験しているわけだから、僕たちは一緒に成長しているようなもの」と話していたムゼッティ。シナーは2019年の「Next Gen ATPファイナルズ」で優勝し、今年は「Nitto ATPファイナルズ」出場まであと一歩に迫った。ムゼッティは自国イタリアにて開催される「Next Gen ATPファイナルズ」でどんな結果を残すのだろうか。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「ATP1000 ローマ」でのムゼッティ

Photo by Angelo Carconi - Pool/Getty Images