優勝を争う早慶戦で、またしてもこの男がキーマンになるのかもしれない。30日に神宮球場で行われた東京六大学秋季リーグ戦。…
優勝を争う早慶戦で、またしてもこの男がキーマンになるのかもしれない。30日に神宮球場で行われた東京六大学秋季リーグ戦。4位・早大は、首位・慶大との1回戦を5-3で逆転勝ち。2季ぶりの優勝に望みをつないだ。4回に左翼線に逆転の2点適時二塁打を放ったのは、“1年前の主役”でもある蛭間拓哉外野手(3年)。殊勲の主軸は「支えてくれた人たちのおかげです」と感謝の言葉を口にする。
観客制限が緩和され、今季初めてアルプス席まで埋まったスタンドが沸き立った。2回に2点を先取された直後の3回。1点差と迫り、なおも2死二、三塁の好機で蛭間が打席に入った。初球、見逃せばボールになるような低めのカーブをとらえると、打球は左翼線へふわりと上がり、左翼手の前で弾んだ。2人を生還させて逆転。二塁ベース上で白い歯を見せた。「監督さんをはじめ、様々な方が自分にアドバイスをくれたおかげで、いいところに落ちてくれたと思う」と振り返った。

浦和学院(埼玉)では、3年夏の甲子園で本塁打を放つなど8強進出に貢献。U-18(18歳以下)侍ジャパンの一員として、アジア選手権では銅メダルを獲得した。進学した早大では2年時から主軸を任され、3季連続で3割、3本塁打を放ち、2022年のドラフト候補にも名前が挙がる。
3年生ながら早大打線の顔となっているが、今季は打率2割前半と低迷。「打席に入るのにも不安な気持ちがあって、4年生に申し訳ないという気持ちがありました」と振り返る。
チームの勝利に貢献したい。「朝起きてから寝るまで、バッティングの事だけを考えていました」。小宮山悟監督からは「バットの軌道が遠回りしている。最短で、左手でボールを掴め」との助言も。明大戦を終えてからの2週間、自らと向き合い、絞り出した一打だった。
「死に物狂いでバットを振ってきた。いいところに落ちてくれたというのは、取り組みが間違っていなかったのだと思います」

雌雄を決する31日の2回戦は、逆転Vを果たした2020年秋と同じ状況。当時2年生だった蛭間は、2点ビハインドの9回2死から、バックスクリーンへ決勝の逆転2ランを放ち、泣きながらダイヤモンドを1周。指揮官には「今世紀最大のゲームと言ってもいいくらい」と言わしめた。
1年ぶりに、舞台は整った。「先輩、後輩、同級生が打ってくれたおかげで、優勝争いの早慶戦という舞台に立てている。いろんな人に恩返しができるように全力で戦いたいと思います」。運命の日に向け、意気込みを語るその視線は、前を向いていた。
(Full-Count 上野明洸)