激戦から一夜明け、本人はプロテスト会場で練習ラウンド 女子ゴルフの国内ツアー・スタンレーレディスは10日、静岡・東名CC(6592ヤード、パー72)で最終日が行われ、渋野日向子(サントリー)が約1年11か月ぶりの優勝を遂げた。プレーオフの末…

激戦から一夜明け、本人はプロテスト会場で練習ラウンド

 女子ゴルフの国内ツアー・スタンレーレディスは10日、静岡・東名CC(6592ヤード、パー72)で最終日が行われ、渋野日向子(サントリー)が約1年11か月ぶりの優勝を遂げた。プレーオフの末に2位となったアマチュアの佐藤心結(さとう・みゆ=明秀学園日立高3年)は一夜明けた11日、プロテスト2次予選の会場、茨城・ザ・ロイヤルGCで練習ラウンドを行った。前日までキャディーとして共に戦った三觜喜一(みつはし・よしかず)コーチは、佐藤を「日本の宝になる選手」と表現。無事に合格することを願った。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 スタンレーレディスではアマチュアとして史上2人目のプレーオフ進出者となった佐藤。激戦から一夜明け、三觜コーチが取材に応じた。佐藤の母親からは、本人が12日から始まる2次予選の会場で練習ラウンドをしていると報告されたという。日本女子オープンから3週連続の競技となる強行日程。だが、佐藤は元気いっぱいのようだ。

「お母さんから聞いた話ですが、昨日の試合後、自宅に帰って自分の映像を見ながら、ピョンピョン跳ねていたみたいです。あの子は本当にタフで疲れを知らないんですよ」

 惜しくも逃したアマチュアとしてのツアー優勝。勝っていれば、「プロテスト免除」の特典もあった。だが、プレーオフ2ホール目の第3打がピンに直撃。ボールは約7メートル戻ってしまった。

「心結も会見で言っていたと思いますが、完璧なショットでした。ピンに当たっていなければ、バックスピンでピンそば、もしくは入っていたかもしれません。ただ、試合後に樋口久子さん(日本女子プロゴルフ協会相談役)から『これはプロテストをちゃんと受けて、プロになりなさいということよ』と声をかけていただきました。その言葉を聞いて、私も『心結がプロの試合で通用することは証明できた。プロテストも大丈夫だ』と伝えました」

 161センチの体で放つ佐藤のドライバーショットは、時に300ヤードを超えた。アイアンショットは高弾道、高スピン。硬いグリーンでも止まり、ピンに絡んだ。優勝争いで見せた勝負強いパッティングも含め、強烈なインパクトを残した。そんな佐藤を8歳から指導してきた三觜コーチは「今まで見てきた選手の中で最も才能があって、日本の宝になる選手」と断言する。

コーチが明かす本音「54ホールを首位で終えたのだから…」

 佐藤は幼少期からサッカー、野球、陸上と他競技も経験し、運動能力と身体能力を高めてきた。圧倒的な飛距離の理由について、三觜コーチは「体のバネだけでなく、最大効率でクラブを振る技術を身につけているからです」と語る。

 大会中のパッティングについては「カップの淵を狙って1周させる練習の効果が出ました。つまり、カップ幅10センチを狙うのではなく、1つの線を狙うストロークです。大会中はカップの淵を狙えば入るラインにつく状況も多くありました。ライン読みは主に僕がやっていましたが、17番で4メートル残ったパーパットを決めるなど、本人も気持ちの強さを発揮しました」と説明した。

 その実力を知るだけに、三觜コーチはスタンレーレディスの開幕前から「これがアマチュア最後の大会。優勝してプロテスト免除だ」と言い聞かせていた。

「『パー5は全てパー4のつもりで』と伝え、目標は3日間で15アンダーに設定。『それで負けたら仕方ない』と話していました。ラウンド中はミスをしても、『大丈夫。切り替えて』とポジティブな言葉で励まし、組の雰囲気も良くなるように、他の選手にも意識して『ナイス。素晴らしい』と声を掛け続けました」

 戦いを終えて、三觜コーチも悔しさを感じていたが、同大会に出場していた教え子の辻梨恵、高木優奈が涙を流しながら、「ナイスゲーム。よくやった」と佐藤を励ましていたことが何よりうれしかったという。

「心結を含めてこの3人は、僕がゼロからゴルフを教えてきました。スクールでは、『あいさつをする』『迷惑をかけない』『親とコーチの言うことは聞く』『安全の確認、コースの保護』をずっと言い聞かせてきましたが、それらをちゃんと守って、ゴルファーとしてだけでなく、人としても成長したと感じました」

 もっとも、佐藤については少しの心配がある。「大会3日間の54ホールを首位で終えたのだから、『プロテスト免除を認めてほしい』が本音です。いくら力があっても、テストでは何が起きるか分からないし、2次の通過は上位20人程度で、最終も20位タイまでが合格ラインの狭き門ですから、心配は心配です」。

 ただ、佐藤は渋野にも「肝が据わっている」と言わしめており、三觜コーチは「本人は樋口さんの言葉を含めて全てを前向きに捉えていますから、まあ、大丈夫でしょう」とも言った。いずれにせよ、2次予選、11月の最終プロテストも含めて、佐藤は注目の存在になりそうだ。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)