チーム事情から見るドラフト戦略2021~ヤクルト編 今年の夏、イースタンリーグのヤクルトの試合を見に行ったのだが、その時にあることに気づいた。奥村展征、元山飛優、太田賢吾、長岡秀樹、武岡龍世、松本友、吉田大成......出てくる選手、出てく…

チーム事情から見るドラフト戦略2021~ヤクルト編

 今年の夏、イースタンリーグのヤクルトの試合を見に行ったのだが、その時にあることに気づいた。奥村展征、元山飛優、太田賢吾、長岡秀樹、武岡龍世、松本友、吉田大成......出てくる選手、出てくる選手、みんな左打ちの内野手だったのだ。

 それがまたよく打つものだから、「こりゃ、サバイバルも熾烈だなぁ」と思ったものだった。

 あらためて選手名鑑を見ると、たしかに右打ちの内野手は山田哲人と西浦直亨ぐらいで、貴重な右の長距離砲だった廣岡大志が巨人に移籍したこともあり、余計にアンバランスな戦力構成が目についた。

 そこで、まずは右打ちの内野手、なかでも遊撃手を獲得したいところだ。



俊足・強打の遊撃手、敦賀気比の前川誠太

 高校生なら、抜群のフィールディングと快足が自慢の敦賀気比の前川誠太(右投右打)、走攻守に高いレベルを誇る高梁日新の川口真宙(まひろ/右投右打)が候補に挙がる。

 大学生なら、昨年のドラフトでロッテから3位指名を受けた小川龍成と互角の守備力を誇る東洋大の木村翔大(右投右打)。社会人なら、ナンバーワンの強肩を誇るセガサミーの中川智裕(右投右打)を推したい。

 守備力が問われるポジションだけに、高いディフェンス能力があれば試合で起用することができる。そうすることで打撃面の向上が見込めることは、偉大なOBである宮本慎也が立証してくれた。即戦力というよりは、ファームでしっかり鍛えて5年目までに戦力になってくれればというぐらいの気持ちで育てたいものだ。

 ところで、昨年ダントツのセ・リーグ最下位から優勝争いを繰り広げているヤクルトだが、その最大の理由はチーム防御率(3.36/リーグ2位)が飛躍的に改善されたことだろう。
※成績は10月8日現在(以下同)

 しかし来年以降のことを考えると、やはり不安が残る。2年目の奥川恭伸が9勝を挙げるなど台頭しているが、昨年のドラフト1位・木澤尚文、2位の山野太一の両投手に一軍での戦力の兆しが見えない以上、昨年のような"投壊"を招く恐れは十分にある。そう考えると、確実に投手を補強しておきたい。

 現在41歳のレジェンド・石川雅規がいまも元気だからといって、いつまでも頼ってばかりはいられない。まずはイキのいい左腕がほしいところだ。

 大学生なら法政大の山下輝(左投左打)か、関西学院大の黒原拓未(左投左打)がオススメ。山下は188センチの長身から投げ下ろす豪快なピッチングが魅力で、ボディバランスも抜群。制球を乱してからの破綻が考えにくいタイプだけにポイントは高い。

 黒原は、伝えられる肩の不調がどの程度のものなのか不安はあるが、ボールの威力、キレはリリーフで力を発揮しそうだ。

 右腕なら、京都産業大の北山亘基(右投右打)のポテンシャルに期待したい。常時145キロ前後のストレートに、多彩な変化球をカウント球にも勝負球にも使うなど、完成度が高い。来季すぐ戦力になれる可能性は十分にある。

 最後にもうひとり紹介したいのが、亜細亜大・岡留英貴(右投右打)だ。サイドハンドから140キロ後半の激しく動くストレートを軸にスライダー、シンカーも駆使して強気のピッチングを展開。亜細亜大のサイドハンドといえば、高津臣吾監督を思い出す。

 守護神としてヤクルトの黄金期を支えた高津監督。そのポジションを後輩である岡留が担うことができれば......。そんな巡り合わせもドラフトの醍醐味である。