2021シーズン助っ人MVP候補【パ・リーグ編】 勢いの収まらないコロナ禍のなかで始まった今シーズンのプロ野球は、外国人…

2021シーズン助っ人MVP候補【パ・リーグ編】

 勢いの収まらないコロナ禍のなかで始まった今シーズンのプロ野球は、外国人選手たちにとってこれまで以上に難しいものになった。

 今年3月以降、選手の入国は『特段の事情』として認められた一方、その家族についての入国は認められない状態が続いた。緊急事態宣言が21都道府県に発出され、まん延防止等重点措置がとられていた8月になって家族の入国を認める措置が取られたものの、家族愛の強い外国人選手たちが心細さを覚えたのは想像に難くない。

 2013年からオリックス投手陣を支えたブランドン・ディクソンは来日することなく退団。楽天のアダム・コンリー、巨人のジャスティン・スモーク、西武のエルネスト・メヒア、オリックスのステフェン・ロメロ、ソフトバンクのコリン・レイなども、来日の叶わない家族の存在を理由に退団を決断している。

 そうした難しい状況にあった外国人選手のなかで、今シーズンの「助っ人MVP」を決めるなら誰になるのか。パ・リーグ編、セ・リーグ編の助っ人MVP候補を取り上げたい。今回はパ・リーグ編をお送りする。



キューバ代表として東京五輪予選も戦ったリバン・モイネロ

 MVPというものは優勝チーム、もしくは優勝争いをしたチームから選ばれるのが常だ。もちろん、2013年に60本塁打を放ったウラディミール・バレンティンのようにNPB新記録を樹立するような場合は別だが、今季のパ・リーグにはそこまでの活躍を見せた外国人選手はいない。

 その点で言えば、今季のパ・リーグではシーズンの最佳境を迎えても優勝争いに加わっているオリックス、ロッテ、楽天、ソフトバンクに在籍した外国人選手のなかから選ぶのが筋だろう。

 リーグ優勝すれば25年ぶりのオリックスは、宮城大弥など若くてイキのいい投手が頭角を現している。だが、外国人選手はNPBで実績のあるディクソンやロメロが途中退団するなど苦戦。そのなかで助っ人を挙げるならば、来日2年目の中継ぎ右腕タイラー・ヒギンスがいぶし銀の働きを見せている。

 ディクソン不在の開幕当初にクローザーを任された漆原大晟に代わって守護神となったものの、序盤はセーブ機会での失敗が目立った。だが、腰痛から復帰した6月からは本来の安定したピッチングを取り戻し、『8回=ヒギンス』を確立。現在42試合に登板して1勝2敗22ホールド防御率2.97をあげている(今季成績は10月1日時点、以下同)

 一方、47年ぶりのリーグ1位でのリーグ優勝(前後期制を除くと51年ぶり)を狙うロッテには、助っ人MVPにふさわしい働きの外国人選手が多い。

 レオネス・マーティンは9月19日の日本ハム戦で自打球による骨折で無念のリタイアとなったものの、戦線離脱するまでの成績は打率こそ.249ながら、25本塁打、70打点。打棒に加えて強肩と守備力でも貢献するなど、開幕からチームを牽引したのは紛れもなく背番号「79」だった

 投手陣ではフランク・ハーマンの活躍も目を引く。防御率5.13ながらもリーグ3位タイの24ホールドと、中継ぎとして欠かせない存在感を放っている。

 だが、助っ人MVPとなると、やはりブランドン・レアードだろう。日本球界7年目、ロッテに加わって3年目のレアードは開幕から主に5番を務めて打率.272、25本塁打、83打点。リーグ3位タイの本塁打、リーグ2位の打点をマークしているレアードがマーティンを欠く終盤戦のチームの命運を握っていると言っても過言ではない。

 そのロッテと対照的に、外国人選手のアテが外れたのが現在3位の楽天だ。今季加入した左腕のコンリーが新型コロナの影響で来日することなく契約解除。新外国人野手のブランドン・ディクソンとルスネイ・カスティーヨはコロナ禍による来日の遅れで日本野球への適応に苦しんでいる。

 昨季は46試合で防御率2.86をマークし、シーズン途中からクローザーを任された来日3年目のアラン・ブセニッツは、今季はここまで26試合で1勝4ホールド防御率5.11。開幕直後はコンディション不良で苦しんだが、終盤戦に来て調子を上向きにしている。

 そのブセニッツに代わって存在感を高めたのが宋家豪だ。2015年10月に台湾の国立体育大から楽天に育成契約で入団し、2017年に支配下登録された右腕は、1軍5年目は1勝3敗24ホールド4セーブ防御率2.56と、勝利の方程式の一角として存在感を増している。

 日本シリーズ5連覇、8年連続クライマックスシリーズ進出を目指すソフトバンクから助っ人MVP候補を選出するのならば、ニック・マルティネスだろう。今季4試合目の登板だった5月22日のオリックス戦から15試合連続でクオリティスタート(6回以上自責点3以下)をマーク。規定投球回には達していないものの、9勝3敗、防御率1.66と抜群の安定感を誇る。

 また、昨季は38ホールドと大活躍して最優秀中継ぎタイトルを獲得した絶対的セットアッパーのリバン・モイネロも取り上げたい。今季はここまでキューバ代表として東京五輪予選を戦ったり、左手首の故障などもあって戦線離脱する時期があったものの、32試合に登板して14ホールド、防御率0.57をマークしている。

 シーズンを通して活躍、という点において"助っ人MVP"は難しいところではあるが、9月15日に一軍再登録されると、あいかわらずの無双ぶり。首位と5ゲーム差をつけられた4位からの逆転Vの原動力となれば、助っ人MVPという称号を得ても不思議はない。

 パ・リーグのペナントレースは、各球団の残り試合も20試合前後と大詰め。首位のオリックスから4位のソフトバンクまでのゲーム差はわずか6しかない。直接対決も残されているなか、ここからチームを優勝に導く活躍を見せた外国人選手こそが、パ・リーグの"助っ人MVP"と言えるだろう。