スーパーエース・西田有志 がむしゃらバレーボールLIFE  Vol.2(2) 連載1から読む>> 今季から、バレーボール男子の世界最高峰リーグであるセリエAでプレーする西田有志。高校卒業後にVリーグのジェイテクトSTIBNGSで3シーズンプ…

スーパーエース・西田有志 
がむしゃらバレーボールLIFE  Vol.2(2) 連載1から読む>>

 今季から、バレーボール男子の世界最高峰リーグであるセリエAでプレーする西田有志。高校卒業後にVリーグのジェイテクトSTIBNGSで3シーズンプレーし、エースとしてリーグ優勝と天皇杯のタイトルも手にしたが、いつ頃から海外でのプレーを意識していたのか。

「2018年に日本代表に初召集されて、海外のチームと戦った時ですね。世界のトップレベルの選手たちのプレーを見て、『海外のリーグでプレーしてみたい』と思うようになりました。単純に、違った環境でプレーすることで『選手としての視野を広げたい』という思いもありましたね。海外に行くことが正解と考えていたわけではないですが、チャンスがあるなら行くべきだろうと思っていました」



イタリアに到着して笑顔の西田(写真提供:株式会社FIELD OF DREAMS)

 加入したビーボ・ヴァレンティアの昨シーズンの順位は5位(12チーム中)。身長186cmの西田は、リーグの全チームのなかで、もっとも背が低いオポジットになる。

 オファーがあったのはヴァレンティアだけでなく、複数のチームから声がかかっていたようだが、評価されていた点は共通していたようだ。

「日本代表や日本のVリーグでの活躍を見てくれた上で、高く評価してくれていたのはスピードや、ジャンプ力でしたね。そこからは、チームコンセプトなども聞きながら交渉を進めていって、ヴァレンティアはサーブも評価してくれましたし、何より『オポジットの1番手として迎えたい』と言ってくれたので移籍を決めました。

 セリエAのチームに移籍できてもずっと控えだったら意味がないですから、スタメンで起用してくれるかどうかはすごく重視していました。期待して獲得してくれたので、今後は僕がスタメンにふさわしい選手であることを証明していかないといけないですね」

 当然、リーグには各国の主力選手が名を連ねている。東京五輪で優勝したフランス代表のイアルバン・ヌガペト、準々決勝で日本が敗れたブラジル代表のルカレッリ、イタリア代表のエースであるイバン・ザイツェフなど、挙げだしたらキリがない。

 西田は移籍前から、サーブが世界トップクラスの速度を誇るザイツェフとSNS上で交流があった。イタリア代表とは東京五輪の予選ラウンドでも戦ったが、選手村で顔を合わせる機会があったようで、「バレーの話はしませんでしたが、『会えてよかった』というやりとりをしました。短い時間でしたけど、イメージどおり優しい人でしたね」と振り返った。

 そして日本代表のエース・石川祐希も、今やリーグを代表する選手のひとりになっている。イタリアでのプレーは今季で7シーズン目。昨シーズンから所属するパワーバレー・ミラノでは、レギュラーシーズンでチームトップの得点を記録してチームを牽引した。

「イタリアでのプレーについては、かねてから祐希さんに相談していました。いろいろ話を聞かせてもらって、バレーだけじゃなくて食事など普段の生活などについても、なんとなく想像することができましたね。練習時間、リーグの期間は変わるけど、そこまで日本にいる時と大きな変化はないような気がします。

 アドバイスもたくさんもらいましたが、『とりあえずイタリア語は覚えておいたほうがいい』とのことだったので勉強しましたよ。幸い、ジェイテクトの通訳がイタリア語も話せるので、彼に習いました。日常会話はまだ無理ですが、バレー用語に関してはだいたい大丈夫だと思います」

 ミラノとヴァレンティアの今季初対戦は、現地時間11月3日。石川との日本人対決を楽しみにしているファンも多いだろうが、西田は「話題にはなるかもしれないですけど、祐希さんと戦いたくてセリエAに行くわけじゃないですからね(笑)。僕個人が選手としてのレベルを上げるためなので、そこはブレないようにしたい」と話した。

 できるだけ長くイタリアでプレーし、成長していく――。それが海外挑戦の目標かと思いきや、西田は首を振った。

「最初のほうでも言いましたが、僕は海外でプレーすることだけが正解だとは思っていません。イタリアでずっとプレーしていくと想定した時、身長が低い僕がフルに戦い続けるとなると、日本でシーズンを戦うよりも疲労の蓄積が大きいはずです。そんな環境でこそ成長できるという考えもあるでしょうが、選手生命を短くするリスクも高まる。僕は長く現役を続けたいので、体が限界に近くなった時に『無理をしてでも海外で』といった選択はしたくありません。

 Vリーグにも海外のトップレベルの選手がどんどん入ってきていますし、日本代表での活動も考えて日本でプレーすることもあるかもしれませんね。体の状態や、その時に学びたいことによって、日本に戻ってくる、そこからまた海外に挑戦するということがあってもいいと思っています。さまざまな挑戦がしたいので、21歳という年齢でイタリアに行けるのはうれしいです」

 キャリアについて独自の考えを述べた西田は、ケガの影響でアジア選手権の出場を回避。ヴァレンティアに合流し、コンディションに整えながら練習を始めている。間もなく開幕を迎えるセリエAで、新たな一歩を踏み出す西田の活躍を祈りたい。