卓球Tリーグが開幕 卓球のTリーグ男子が9日、東京・大田区総合体育館で4季目が開幕した。2季ぶりの優勝を目指す木下マイスター東京は、昨季王者・琉球アスティーダに3-2で白星発進。東京五輪混合ダブルス金、男子団体銅メダルの水谷隼は、ベンチから…

卓球Tリーグが開幕

 卓球のTリーグ男子が9日、東京・大田区総合体育館で4季目が開幕した。2季ぶりの優勝を目指す木下マイスター東京は、昨季王者・琉球アスティーダに3-2で白星発進。東京五輪混合ダブルス金、男子団体銅メダルの水谷隼は、ベンチから後輩たちに指示を送り、存在感を発揮して勝利に貢献した。

 コートに立たなくても、できることはあった。出場予定のなかった水谷は、ベンチ最前列からチームを鼓舞。タイムごとに選手たちへ積極的にアドバイスを送り、時折笑顔を見せながら身振り手振りを交えて指示を出した。2勝2敗で迎えた1ゲーム(G)勝負の最終第5試合。託された大島祐哉は20年全日本王者の宇田幸矢を迎え撃った。

 7-9と劣勢の場面。水谷が立ち上がり、助言を送った。「少し下回転に頼りすぎているから上回転を出してもいい」。大島はサーブで相手のミスを誘い、ポイントを獲得。「あのサーブが本当に良かったですね。最後まで勝負を分ける1本だった。水谷さんがいてくれて本当に心強い」。4度のデュースの末、15-13で勝ち切った。

 チームでは、32歳の水谷に次いで年長となる27歳の大島。第4試合のシングルスと合わせて2勝した白星の立役者は、ヒーローインタビューで涙目になりながらこう語った。

「本当に苦しかったです。メンバーもなかなか揃わない中で迎えた開幕戦だったけど、1勝2敗で回ってきて、なんとか2試合獲って勝ち切れてよかったです。(水谷を除いて)最年長で難しい気持ちでやってきた。今日は水谷さんがチームを引っ張ってくれました。

『1球たりとも同じ球を繰り返さないように』と言われていたので、それを最後まで貫いて、最後は気合で入れて勝てました。自分が考えないようなアドバイスもくれるし、本当に今日は水谷さんがいてくださったおかげで勝てたと思います」

 水谷は数年前から抱えていた目の不調により、代表活動など第一線を退く意向だったが、チームと契約。Tリーグに選手登録した。この日は第1試合のダブルスを落とし、第2試合に臨んだシングルスの及川瑞基にも言葉をかけた。

監督代行より選手と気心知れた存在「卓球界を知り尽くしている」

 第1、2Gを奪って迎えた第3G。10-7から1点を返され、タイムアウトを取った。及川はミドルに強打してからフォアサイドに攻めるのがここまでの得点パターン。「そこをもう一度攻める」と先輩から助言をもらった23歳は、最後の1点をもぎ取り、勝利を決めた。レジェンドの存在の大きさに舌を巻く。

「少し流れが悪くて攻め切れていない部分があった。最後の1本が欲しいところ。迷っていた時にタイムアウトをとってくれた。気持ちの整理ができたので、いいタイムアウトだったと思います。五輪で金メダルを獲られた水谷さんは皆さんもご存知の通りレジェンドなので、そういう人がベンチにいるのが心強い。プレッシャーもなく思い切り戦えたと思います」

 チームは監督不在のまま開幕を迎えた。この日はナショナルチームでコーチ経験がある渡辺隆司氏が監督代行としてベンチ入りしたが、3週間前に合流したばかり。長く在籍している水谷は選手たちと気心が知れた仲。「やっぱり水谷選手は卓球界の財産。自分の隣に座ってどんどんアドバイスをくれた。卓球界、特に男子を知り尽くしている水谷君に協力してもらって、今回はそれが凄くよかった」と感謝した。

 この日は試合前の練習に参加し、出場選手のパートナーを務めた水谷。限定的な出場が見込まれている中、選手紹介では「ゴールドメダリスト」とアナウンスされて一番最初に入場。889人が集まった観客席から大きな拍手が送られた。五輪の活躍からTリーグに特別表彰を受けたセレモニーでは、後輩たちの活躍を願い、会場を盛り上げていた。

「僕は五輪が終わって1か月が経って、今はなかなか卓球の練習ができてないんですけど、木下マイスター東京と琉球アスティーダの選手が本当に素晴らしい試合を見せてくれると思うので、両チームの応援をよろしくお願いします」

 試合に出なくても役目を果たした32歳。外から絶妙に声をかけ、現役No.1の経験値が光る試合となった。次戦は18日に岡山リベッツと対戦(大分県杵築市文化体育館)。先駆者から吸収し、成長していく選手たちに注目だ。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)