先週水曜日に激しい嵐で「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月30…

先週水曜日に激しい嵐で「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月30日~9月12日/ハードコート)の試合が中断されるほんの何時間か前、全米テニス協会(USTA)のある取り組みを支持して、会場の至るところに虹色の旗やリストバンドが現れた。「全米オープン」の歴史上初めて、大会はLGBTQ+コミュニティのためにオープン・プライド・デーを開催したのだ。伊ニュースサイトUBI Tennisが報じている。【マッチハイライト動画】ノバク・ジョコビッチ vs ジェンソン・ブルックスビー/全米オープンテニス2021 4回戦

テニスレジェンドのビリー・ジーン・キング(アメリカ)やマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)らが支援者として名を連ねたこのイベントは、テニスをよりインクルーシブにすることを目指すUSTAの「ダイバーシティとインクルージョン戦略プラットフォーム」の一部だ。マッシモ・ゴンサレス(アルゼンチン)やギド・ペラ(アルゼンチン)は、この取り組みへの支持を示すために試合中に虹色のリストバンドを身に着けた。しかしながら、このイベントは避けられない疑問を呼び起こした。つまり、男子テニス界にはなぜLGBTQ+を公表している選手がいないのか?という疑問だ。現在ATPランキングを保有する選手は1,000人以上いるが、LGBTQ+であることを公言している選手は一人もいない。

「僕からすれば、ATPツアーの誰かがカミングアウトすればみんなすんなり受け入れると思うよ。」ダニール・メドベージェフ(ロシア)は、2回戦の勝利の後にこう語った。「ATPツアーに同性愛者はいるのかな?誰かがカミングアウトするまでは、その選手の親友でその選手がどんな経験をしているか知らない限り、知り得ないよね。“全米オープン”のこの取り組みは素晴らしいと思う。正直、ATPもいい仕事をしていると思うよ。特に内部では情報提供をしようとしているし、誰かがカミングアウトしたければ、その選手が安全や安心を感じられるように取り計らおうとしている。もし誰かがカミングアウトすれば、全ての選手が良いことだと思うだろう」

女子テニスと違い、ATPツアーには歴史的にLGBTQ+であることを公言している選手はほとんどいない。その一握りの選手には、引退後にカミングアウトした元トップ100選手のブライアン・バハリ(アメリカ)がいる。今年行われたインタビューの中で、バハリは選手時代にツアーで色々な同性愛差別的な冗談を耳にしたと振り返った。バハリはオープン・プライドのために、夫と2人の子どもと共に「全米オープン」会場を訪れた。

カミングアウトすることを選ぶ選手が出てきたら、ツアーの支援を受けられるだろうとステファノス・チチパス(ギリシャ)は言う。チチパスは記者会見中に、選手仲間の誰かがカミングアウトした場合に「安全な空間」はあるだろうかと質問され、次のように答えた。

「あると思うよ。彼らは支持されるだろう、間違いなくね。他のスポーツではどうかわからないけど、ATPのようなツアーがこういうことを受け入れない理由はないと思う」

影響力の強いATP選手協議会の一員であるフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)は、なぜツアーにカミングアウトしている選手が1人もいないのか、少し困惑していると認める。あまりに困惑したので、なぜなのか知るためにこのことについて詳しく調べることにしたという。

「最近、ATP内でLGBTQ+コミュニティについての調査を始めたんだ。最近はそれについて認識していることや偏見をもたないことは大事だし、ATPはそうする必要がある。今の時代にはそれが必要なんだ。ATPツアーに同性愛を公言している選手がいない理由はわからないけれど、僕個人は選手としてとてもオープンだしすごく歓迎すると思う。統計的には何人かはいるはずだけど、今のところはいないね」

近年では、テニスをもっとLGBTQ+コミュニティに対して包摂的なものにするための、より大きな動きが出てきている。色々な大会で開催されている、ジャーナリストのニック・マッカーベル氏による「LGBTennis nights」だ。

「テニス界には保守的な考え方も存在する。それは構わない。けれど、コート上や更衣室、会見室、世界中のグランドスラムのアリーナの通路で、より真の自分に近い姿でいられるようになることは、全部が本当にとても重要だ」マッカーベル氏は語る。「テニスは素晴らしく陽気だ。同性愛コミュニティもテニスが大好きだ!そのことを強調しよう。それを受け入れて、僕たちにできるほんのささいなことをやろう」

2020年11月、学術雑誌「International Review for the Sociology of Sport(スポーツ社会学の国際レビュー)」に、アスリートたちがカミングアウト後に、各々のスポーツにおいてより大きな幸福感と自信を持つことができたとする研究成果が掲載された。この研究成果は、outsports.comで公表された60人の男子スポーツ選手の体験談に基づいている。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年「全米オープン」の会場

(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)